英語と書評 de 海馬之玄関

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figureとdollはどう違う?

2005年10月30日 13時10分07秒 | 街は英語教育の素材の宝庫


先日、ランチの帰りに同僚とオフィス近辺のショッピングモールを歩いていた時のこと、同僚の日本人の一人が"This figure is very cute. But I am afraid it is too sexually attractive for kids. "と言いました。同僚のアメリカ人がそれを聞いて一言。"This is not a figure, but a doll. Anyway, this doll is very cute. But, it may not be for kids, because it's a little bit too sexy."

カーン♪ みんなの心の中でファイト開始の鐘が鳴り、
議論開始。喧々諤々、喧々諤々、喧々諤々。

その問題の人の形をしたオモチャは"a figure"なの? それとも"a doll"なの? そもそも、"figure"って何? "doll"って何なのかな? 

おいおいブリキのロボットは"a doll"なのかい? そうじゃないだろう! それじゃフランス人形は"a figure" なの "a doll"なの? 

ちょっと待って、じゃ精巧に作られたステゴザウルスやティラノサウルスの模型は英語では"a figure" になるの "a toy"でいいの? 一体、"a puppet" や "a marionette" と "a toy" や"a figure" の違いは?



ちなみに、私がよく使うネット上の辞典(Merriam-Webster Online Dictionary)と手もとの英英辞典(Oxford Advanced Learner's Dictionary)にはこう書いてありました。尚、"figure" はTOEICの試験でも重要な多義語です(数字・人物・金額・体形、等々)。ここでは "doll" との異同が問題になる場合の "figure" の語義に限定しますが、TOEIC受験準備中の方にとっては、"Her figure is sexy."(彼女はスタイル抜群だね)とか"She is a prominent figure in this industry."(彼女はこの業界の大立者です)。それと、"Eventually he got a 6-figure salary. "(彼はとうとう六桁の給与(=10万ドル≒1000万円)の給与を取るポジションについた)等の"figure"の意味は重要です。


◆Merriam-Webster Online Dictionary:
 http://www.m-w.com/

doll:
a child's toy that looks like a small person /a small-scale figure of a human being used especially as a child's plaything / a pretty but often empty-headed young woman
(↑この最後3番目の意味を収録した辞書編集者は「凄い度胸」のある人だと思います!)

figure:
the graphic representation of a form especially of a person or geometric entity


◆Oxford Advanced Learner's Dictionary:

doll:
a model of a human figure, esp a baby or a child, for a child to play with / a pretty or attractive female

figure:
a representation of a person or an animal in drawing, painting

ちなみに、
toy:
a thing to play with, esp for a child

puppet:
a small figure of a person or an animal that can be made, eg by pulling strings attached to its limbs, or putting one's hand inside it.

marionette:
a doll moved by strings attached different parts of its body.



さて、同僚との<figure-doll談義>の結果は意外と簡単に終りました。"a doll" は子供が遊ぶための(どちらか言えば)柔らかい人形のことであるのに対して、"a figure" は人間の形をした何かのイメージを立体化したものだ。もちろんイメージされるその「人間の形」は、ウルトラマンでもスパイダーマンでも八神ひろきさんのセクシーなメイド嬢でもよいし(つまり空想上の「人物」でもかまわないし)、擬人化される限りポケモンのイメージを立体化したものも"a figure" と呼びうるし、同じく擬人化された立体化されたイメージが「子供の遊び相手」ならそれは"a toy"であり"a doll"になる。この限界事例が "action figure" (足とか手の関節が動くように作られた、遊ぶための人形)である、と。大体、アメリカ人の同僚達はこの定義に同意しました。

そして、もちろんそう確たる根拠はないけれど、"a figure" と"cute" は相性が悪いように感じる;だから"This figure is very cute." はしっくりこなかった。この場合、どうしても"a figure"を主語に使いたいのなら、"This figure is great." とか"This figure is cool." というべきじゃないかな、という点でもアメリカ人同僚の意見は大体一致しました。

最後に各論への彼等のコメント。ブリキのロボットは"a doll" でも "a figure" でもなく"a toy" である。フランス人形は "a doll" であり、精巧に作られたステゴザウルスやティラノサウルスの模型は、それが子供が遊ぶためのものなら"a doll" というか "a specially made doll";見るためや飾るためのものなら"a model/miniature" と言うべきだろうが、"a figure"とは言えないように思う(自信はないけれど)。"a puppet" と "a marionette" は特殊な"a toy" 正に "a specially made toy" だろう。

私はこれらの説明に取りあえず納得しました。けれど、"doll" や "figure"の言葉をどれくらい調べても、逆に、お人形さんやフィギャーをそれこそ穴が空くほど見つめても、どんな人形や玩具が "doll" でどんな人の立体イメージが "figure"なのかは一義的には答えられないのかもしれない、そういうこともまたこの<figure-doll談義>から学びました。人間の形にせよ遊び相手にせよ"figure"と"doll"を分かつポイントはそれを話す話者やコミュニティーによって異なってくるのでしょうから。

それが話される場面や話している人がその人形をどうとらえているか(あるいは、「人形」ととらえているか)という諸々の話者と個物の関係によって、言葉の意味も変わってくるのでしょう。もちろん、全くいいかげんに変わるわけではないけれど、「言葉は場面によって装う意味が変わる」ということに改めて気付かされました。だからこそ言葉は面白いのでしょうけどね。





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