英語と書評 de 海馬之玄関

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安倍自民党の参院選圧勝を伝える海外報道紹介(2)

2013年08月03日 18時06分10秒 | 英字新聞 de 政治経済


★註:民族主義者

確かに、クライン孝子さんがしばしば語られているように、例えば、ドイツでは「健全な」「穏健な」「健康な」という形容句のつかない単なる「Nationalismus」や「Nationalist」にあまり良い意味はないと聞きます。しかし、多くの辞書には「sometimes derogator/sometimes inapproving」(時には軽蔑の意を込めて/時には賛成できかねるという気持ちを込めて用いられる)という注意書き付で掲載されているとはいえ、英語の「nationalism」や「nationalist」は必ずしもネガティブな語感ばかりが憑依する語彙ではありません。嘘だと思うならgoogleしてみられよ。米英で広く尊敬されている政治指導者、例えば、レーガン大統領にもサッチャー首相にも、あるいは、国父ジョージ・ワシントンにも護国卿クロムウェルにもしばしば「nationalist」がタグ付けられていることは誰しも容易に確認できることでしょうから。

而して、ゲルナーに従い、nationalismを「民族的な領域と政治的な領域を一致させようとする考え方や行動」と理解するとき(要は、国連憲章(1条2項および55条)もその政治哲学的の価値を称揚している「諸民族の自決:self-determination of peoples」すなわち「民族自決:national self-determination」の理念でもある「民族主義」を「社会学的-社会思想的」な視座から理解し直すとき)、nationalismよってnationalistが毫も否定的な価値判断の対象でしかないはずはないのです。実際、OED(Oxford English Dictionary)にはnationalistの定義はこう記してありますから(つまり、第1の語義と第2の語義の前半は、寧ろ、ポジティブな語感とさえ言えるのです)。尚、民族主義を巡る私の基本的理解については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。

nationalist:民族主義者/国家主義者/愛国主義者
・a person who advocates political independence for a country
・a person with strong patriotic feelings,
especially one who believes in the superiority of their country over others
・自国が政治的に独立・自立していることの重要さをつとに主張する人々
・強い愛国的の感情を抱いている人々、就中、他国に対する自国の優位性や優越性を
毫も疑わない人々




・「偏狭なるナショナリズム」なるものの唯一可能な批判根拠(1)~(6)
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11146780998.html

・愛国心の脱構築-国旗・国歌を<物象化>しているのは誰か?(上)~(下) 

 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/cc6c2b23f6fb68edfdabfd46ccd8a1db

・戦後責任論の崩壊とナショナリズム批判の失速
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11137340302.html







In this election, only half of the 242 seats in the upper house were up for grabs. According to final results announced early Monday, the LDP and coalition partner New Komeito together claimed 76 seats — giving them total of 135 in the chamber, a comfortable majority. The LDP won 65 of those seats, just shy of the 72 it would have needed to form a majority on its own.・・・

Japan isn’t required by law to hold another parliamentary election for three years, and pundits say Abe could go as long as that without a challenge to his power, provided he maintains support from his own party. Such stability would mark a fundamental shift for a nation that has cycled through seven leaders since 2006, none lasting longer than 481 days in office. Abe was one of those short-term leaders, holding power for a scandal-filled year before resigning in September 2007 because of an intestinal ailment, his approval rating below 30 percent.

今回の選挙は上院の全議席242の半分が改選されたにすぎない。月曜日の早朝に報じられた最終結果によれば、しかし、自民党とその連立パートナーの公明党は併せて76の議席を得たとのことだ。この結果によって与党は非改選議席と併せて135議席という上院での安定多数を手にしたことになる(★)。ちなみに、自民党自体は65議席を得たけれども、それは自民党単独で上院の過半数を占めるために必要だった72議席まであと僅かという議席数だった。(中略)

法律上、日本ではあと3年間は国の立法議会の選挙が要求されることはない。日本政治に詳しい識者によれば、安倍首相は、自身が率いている自民党からの支持を失わない限り、誰からも邪魔されることなくその3年の間政権を維持するだろうとのことだ。このような政治の安定は、2006年以降7人もの政治指導者が入れ替わり立ち替わり政権を担ってきた、そんな政治が不安定だった国にとっては根本的な変革が生じたと言えるだろう。実際、その間、7人の中で最も長く政権を維持した首相でも在任期間は481日にすぎなかった。そして、安倍首相もそのような短命政権の主の一人だった。彼は、スキャンダル塗れの1年間を経た2007年の9月、腸の慢性疾患を理由に退陣した。首相退陣時の【第一次】安倍内閣の支持率は30%を割り込んでいたものだ。

★註:過半数-安定多数-絶対安定多数

衆参両院ともに、欠員を度外視すれば、①過半数(単純多数)とは「総議員数の半分+1」の総議席数のこと。②安定多数とは、衆参共に17ある常任委員会の議長を与党/連立与党で占めた上で、すべての常任委員会の委員の半数を占めることが可能な総議席数を保持していること(委員会での議案が可否同数の場合には議長たる委員長の1票で与党/連立与党の主張が通る仕組み)。
そして、③絶対安定多数とは、安定多数の場合と同様に「衆参共に17ある常任委員会の議長を与党/連立与党で占めた上で」、かつ、すべての常任委員会の委員の過半数を占めることが可能な総議席数を保持していること(委員長の最後の1票を期待せず、よって、委員会の運営も「仲裁役の委員長」に一人二役というかジキル氏とハイド氏の如きあまり美しくない立ち回りをさせることなく、時間的にも省エネでもって与党/連立与党ペースで粛々と進めることができるということ)を言います。

①過半数:simple majority
②安定多数:comfortable majority/stable majority
③絶対安定多数:overwhelming majority/absolute majority

ちなみに、常任委員会の委員定数は委員会毎に大きく異なっており、また、それら委員定数の合計は衆参両院とも各議院の議員総定数を大幅に超えていること。更には、各委員会の委員ポジションの具体的な国会議員への割り振りは彼や彼女が所属する会派の議席数の大きい順に(要は、大政党から順に)割り当てられることもあり、実は、②③の実際の値の算出は些か複雑。

よって、2013年8月段階の結果だけ記しておけば(衆議院と参議院の総定数を各々、480議席と242議席とすれば)それは以下の通り。つまり、現在、自民党は衆議院では単独でoverwhelming majority/absolute majorityを、他方、参議院では連立与党でcomfortable majority/stable majorityを保持しているということです。

①衆議院:241-①参議院:122
②衆議院:252-②参議院:129
③衆議院:269-③参議院:140

ウマウマ(^◇^)






Abe says he has learned from that stint, and in his second chance at the job — beginning seven months ago — he has spent less time on nationalist pet projects, devoting himself instead to the issue that Japanese voters care most about: the economy.

With full-throttle monetary easing and fiscal stimulus, Abe has lowered the value of the yen and driven up the stock market, all as companies rake in profits and business confidence soars. Average consumers haven’t seen the benefits — they will, Abe promises — but they say they like the ambition of Abe’s policy­making.

安倍首相は前回の首相在任中の経験から学ぶものがあったと述べている。而して、第二次安倍内閣において--それは7カ月前に発足したのだけれども--安倍首相は、民族主義的な十八番かつお気に入りの施策ではなく、日本の有権者が最も関心を寄せている政策課題に没頭してきた。すなわち、経済政策への注力である。

大車輪の金融緩和と財政出動への全力投入。これらの施策によって安倍首相は、円安と株価の上昇を具現し続けている。これらはすべて、日本の企業にその収益を改善させ、かつ、企業経営の先行きに明るい希望を懐かせるものだ。平均的な消費者はまだ家計好転の実感を持つには至っていないけれど--もっとも、安倍首相は、平均的な消費者も経済的に潤うようになると約束してはいる--いずれにせよ、平均的な消費者も安倍首相の果敢な政策の立案を自分は好意的に見ていると述べている。





<続く>





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