麻生政権が推進している定額給付金の評判が芳しくないようです。確かに、今次の定額給付金の源流は公明党が主張した定額減税構想。この(納税額の少ない低所得層に恩恵の薄い「定率減税」ではなく低所得層ほど相対的に減税比率が大きくなる)「定額減税→定額給付金」が自党の支持者層受けを狙った公明党の意向を強く受けたものであることは周知の事実。ならば、他のイシューに関しては麻生政権を支持している保守改革派にもこの給付金の施策の評判が芳しくないことは当然かもしれません。
他方、ケインズ経済学を引き合いに出すまでもなく景気刺激策としては減税よりも所謂「公共投資」の方が(投資の乗数効果も明確であり)一般的には優れている。ならば、定額給付金は純粋にマクロ経済学的に見た場合にもそれは2兆円の無駄遣いではないか。而して、ここで紹介したTimesの記事を読めば一層その感を深くせざるをえませんでした。出典は” Taro Aso gives Japanese £100 each to spend way out of recession,”Jan 24, 2009「麻生太郎首相、不況脱出のために消費を促すべく日本国民に各100ポンド給付」です。
けれど、私は、麻生総理が推進する定額給付金を支持します。もちろん、筋金入りの麻生閣下支持者としては「麻生総理のやることは何でも支持する」というのが潜在意識としては(否、顕在意識?)一番の理由かもしれませんが(笑)、(1)所謂「複合不況」が喧伝された「失われた90年代」を通して公共投資政策がほとんど効果がなかった事実、また、(2)人類史の中でも(絶後ではないかもしれないが空前の)低金利状態が続いていながら企業の投資意欲が極めて低い現況を鑑みるならば、景気浮揚(=有効需要の喚起と国内総生産の拡大、すなわち、消費と投資の拡大)のために残された手は「政策誘導による消費促進」の他には手はあまり見当たらないと考えるからです。
もちろん、現下の日本では、公共投資の効果が(=乗数効果が)乏しいだけでなく、以下で紹介したTimesの記事も述べているように、(将来に対する不安のためか)流動性選好と貯蓄選好が際立っています。ならば、消費を促す定額給付金の機能もそう高くはないかもしれない。けれども、他に打つべき適当な手が見当たらないだけでなく、政府が(ある意味)「半ば無駄を承知」で景気対策に本腰を入れる覚悟を示すことは、実際に給付金が支給された際には国民の安心感を下支えするかもしれない。そう私は思っています。そう思って、「給付金」が手に入ったら我が街新百合ヶ丘でパーッと使う予定。尚、現下の景気を巡る私の基本的な考えについては取りあえず下記拙稿をご参照ください。
・FTが報じる日本の景気急降下
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ac1ef25aa61a853b796c144dc79f0a44
With Japanese exports plunging and companies retrenching, the fate of the world’s second-biggest economy may now lie in a ripe musk melon or a bag of dumplings shaped like the Prime Minister’s face.
Government efforts to stimulate the economy and insulate it from the ravages of recession have failed. The pace and scale of decline, say economists, has proved too big for the country’s creaking, deadlocked political system to cope with and deep recession is now a certainty.
But Taro Aso, the increasingly reviled Prime Minister, believes that he has hit upon a scheme that will solve the crisis in an orgy of consumer spending.
The move, which he has described as “the best economic measure of all”, involves a handout of at least 12,000 yen (£100) to every citizen over the age of 18. The prospect of the windfall has unleashed a national wave of speculation about how the money might best be spent, and the eccentric world of Japanese retail is pushing hard to attract the cash.
日本の輸出の急激な縮小と企業が経費削減に向かう中、世界第二の規模のこの経済大国の運命は、今や、完熟マスクメロン、あるいは、麻生総理の顔に似せて作られたダンプリング用バッグにかかっている。
経済を活性化させ、経済を破綻から救い出そうとする政府の試みは失敗の連続。エコノミストによれば、経済縮小の速度と規模は、軋みを立て始めながら暗礁に乗り上げようとしているこの国の政治システムが対処するには余りにも急速であり大きすぎることが徐々に明らかになってきた。而して、深刻な不況の到来は確実だ。
しかし、徐々に悪評が嵩じてきている麻生首相は、消費支出合戦の中で危機が解決するに至る計画を自分が思いついたと信じている。
「あらゆる経済政策手段の中でも最高のもの」と麻生首相が表現するこの施策には、18歳以上のすべての市民に最低12000円(100ポンド)を配布することが含まれている。この「棚ぼた給付金」が行なわれた場合を想定して、それが最善の予算の使い道であるのかどうかに関して国民レベルの疑義が巻き起こっている。而して、日本の一風変わった小売業の世界ではこの現金を巡る争奪戦が展開しつつある。
Among the more extreme recommendations on how to spend the money is to applaud Mr Aso’s plan by buying a gift box of Aso-themed goods: \12,000 would buy a magnificent spread including a coffee mug, dumplings, shopping bag, tummy-warmer and dog-sized T-shirt bearing his image.
The notoriously pricey Japanese fruit industry is also vying to be among the winners of an overnight sense of opulence. The price of a much prized Shi-zuoka Crown – the self-declared king of musk melons – has suddenly been brought down from \30,000 to a convenient \12,000.
The service sector, too, has a number of seasonal opportunities: taking advantage of a discount travel coupon, a couple could enjoy the romantic and antiageing effects of a day at the chocolate and wine baths of Yunessan, buy a souvenir and expect little change from \24,000. ・・・
The scheme, however, has plenty of doubters. Richard Jerram, the chief Japan economist at Macquarie Securities, believes that it is doomed to failure and is a sure sign that the Japanese Government “just does not understand how staggeringly the world has changed”.
The problem, says Naomi Fink, a strategist at Tokyo Mitsubishi, is not that the Japanese do not have cash, but that they are too scared to spend it. Japanese households are already sitting on cash savings estimated at \778 trillion (£6.5 trillion).
このお金の最も極端な使い道として推奨されている中では、麻生グッズの入った箱を購入することで麻生首相の計画を誉め讃えること。その12000円の大仰なグッズの一揃えには、コーヒーマグカップ、買い物カバン、腹巻き、麻生首相の画像をプリントした犬用サイズのTシャツなどが含まれている。
いい値段をつけることでは悪名高い日本の果実業界も、このにわかに浮上した大盤振る舞いで気が大きくなった消費需要の分け前にあずかるべく参戦しようとしている。かなり高価な静岡クラウン、その生産者がマスクメロンの王様と自称しているこの静岡クラウンは突然その価格が30000円からお手頃な12000円の価格に引き下げられた。
サービス業界もまた多くの特別企画を打ち上げている。例えば、ディスカウント旅行クーポンを利用することによって、【箱根小涌園の】ユネッサン温泉では浮世離れしていて老化防止に約立つとされるチョコレートとワインの温泉をカップルで一日満喫することもできる。これはお土産も買って24000円でお釣りがくる値段設定なのだ。(中略)
この給付金計画に対しては、しかし、数多の疑問が呈されている。 マッコーリー証券の日本担当主任エコノミスト Richard Jerram氏は、この施策の失敗は必定であり、而して、このような施策を計画していることは日本政府が「世界がいかに変わってしまったかを全く理解していない」ことの明確な証拠だと述べている。
また、東京三菱銀行のストラテジストNaomi Fink氏はこう語る、問題は日本人が現金を持っていないことなどではなく日本人があまり現金を使わないことなのだ、と。日本の世帯はすでに778兆円(6.5兆ポンド)と見積もられる貯蓄に手を付けることなく放置してきているのだから。
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