英語と書評 de 海馬之玄関

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再出発の英文法:仮定法(1)

2008年05月28日 18時19分54秒 | 英文法の話題


[1]仮定法の種類
暑いですね。東京は梅雨入りを目前にして 空気を雑巾で絞ると水が滴り落ちてくるんじゃないかと思える蒸し暑さです。さて、このカテゴリーのコーナーでは「再出発の英文法」と銘を打って「日本人が苦手な英語表現」を特集しています。今回のテーマは「仮定法」です。そう、日本では、This is a pen.の次に有名な英語。

If I were a bird, I could fly to you.
(もし私が鳥なら、あなたの所に飛んで行けるのに)

に使われている仮定法。而して、「空気を雑巾で絞ると水が滴り落ちてくるんじゃないかと思った」は、さしずめ、

If we had wrung air with dustcloth out, some water would have dribbled from the cloth.

とでも言うのでしょうか。蓋し、仮定法のポイントは、内容的には「現実と反対の気持ちや認識を述べる」こと。構文の形式的には「現在や過去の話しをしているのに述語動詞の形が were, could fly, had wrung, and would have dribbled ・・・と過去形や過去完了形になっている」ことです。

この記事ではまず、理屈抜きに「マル覚え」すべき構文の説明。次回は、(急がば回れで)仮定法の「そもそも論」の順序でお話をしたいと思います。


●TOEFL/TOEICにでるでる仮定法の4種類
(1)仮定法過去(現在の事実と違うことを述べる言い方)
(if+動詞過去形,→助動詞の過去形+動詞の原形 )

(2)仮定法過去完了(過去の事実と違うことを述べる言い方)
(if+動詞過去完了形,→助動詞の過去形+動詞の現在完了形)

(3)仮定法未来(「もし万が一~の事態になったら」という未来のことを述べる言い方)
(if+should+動詞の原形,→will, 助動詞+動詞の原形)

(4)仮定法現在(要求・命令・推奨・提案を表す動詞の導く節の中で使われる言い方)
(要求・命令・推奨・提案を表す動詞→「目的語になる名詞節」の中は動詞の原形)



(1)If I were not busy in setting up an e-learning system, I could make a response to the stupid article on null effect of Japanese present constitution earlier. (もし、eラーニングのシステム構築が忙しくなければ、もっと早くその馬鹿げた「現行の日本国憲法無効論」について応答できるのに:本当は忙しいから残念ながら素早い回答ができない!)


(2)If the bank in Self Defense Force Physical Training School had not introduced a special service, this year, the freshmen of the school would have paid normal service fees.
(もし、自衛隊体育学校内の銀行が特別のサービスを導入していなかったら、今年の学生も通常の手数料を払わなければならなかっただろう:現実には、(例えば)自衛隊体育学校内の銀行では小切手の発行や振込手数料が体育学校生に限り無料になった・・・)

(3)If the Wal-mart should decide to move its head office to somewhere other than Arkansas, the number of passengers who use Fayetteville airport should decrease drastically.
(万が一[将来]ウオールマート社がその本社をアーカンソー州以外の場所に移転したとしたら、 Fayetteville 空港を利用する乗客数は激減するだろう:アーカンソー州知事夫人であったヒラリー・クリントン上院議員の同州内の支持者向けニュースレターによると、5月末にウオールマート社の株主総会があったとかで、最寄りの Fayetteville空港は「お祭り騒ぎ」(just like a carnival)だったそうです。要は、クリントン夫妻が州経済の活性化に貢献してきたということをアピールしたかったのでしょうかね)

(4)The chief of coaching team suggested to us that each National Defense Academy student study English grammar with “Kisokara-Yokuwakaru-Eibunpou” published by Obunsha by the end of August.(コーチングチームの責任者は、個々の防衛大学の学生に8月の末までに『基礎からよくわかる英文法』(旺文社)を使って英文法を勉強してはどうですかと助言してくれた)


動詞の語形の変化(原形→現在形→過去形等々の変化)によって、「疑い」「非現実な想定」「自分の願望」などを表す仮定法は、英語の仲間のゲルマン諸言語では(ドイツ語に代表されるように)大いに使われています。けれど、英語では12世紀初頭までの古期英語以降、仮定法は衰退の一途。mayやcan, mightやcould等の助動詞による代替表現に取って代わられ現在に至っています。

けれど、だからこそでしょうか。滅多に使われないが、現在でも「ここぞ」と言う時にビシット締めるには欠かせない。それが仮定法です。教養ある英語を使うには仮定法は必須のアイテム。


[2]英文法と仮定法の本質
仮定法とはどんな英文法のルールなのでしょうか。この項では、急がば回れで、仮定法と言いますか英文法の「そもそも論」を一緒に考えてみましょう。畢竟、「仮定法」なるものを考えてみることを通して「英文法の正体」といいますか「述語動詞の変化システム」を鳥瞰してみよう(get a bird view)という趣向。

正直、自慢でもないですがこの項の記事を読んでもTOEFLやTOEICのスコアが上がることは絶対にありません。きっぱり。しかし、それは日頃TOEFLやTOEICの問題集でバラバラ覚えた知識を整理することにはなる。そして、即効性はないけれどそれは文法力のレベルアップにつながると思います。

さて、「そもそも論」。そもそも「英文法」って何でしょうか? 何?   

「5文型から始まって倒置まで」ですって。それは『基礎からよくわかる英文法』(旺文社)の目次じゃないですか(笑)。英文法の内容は究極的には二つだけです。それは、

●英文法の内容
意味の通る(他人が理解できる)英文を作成するための
・単語の配列のルール
・単語の変化のルール


すべての英語の文を「S→V→・・・」の「・・・」に着目して5種類に分類する「5文型論」は「倒置」と並んで「単語の配列のルール」そのものですよね。また、be動詞と一般動詞による疑問文の違い(Is she a National Defense Academy student? Does she coach us for TOEFL test?)なども「単語の配列のルール」の一つでしょう。

他方、形容詞の原級・比較級・最上級の語尾変化(long →longer →longest)、動詞の時制、名詞の単数形から複数形への変化(a potato→ three potatoes)は「単語の変化のルール」の内容を構成しています。そして、「仮定法」も「単語の変化のルール」の主要なメンバーなのです。

英文法の雑多な知識を「単語の配列のルール」「単語の変化のルール」のどちらか(あるいは両方)に仕分けして考えると「英文法の参考書の目次」が単なる項目の羅列ではなく、個々の項目が緊密に関係している<システム>として理解できるようになること請け合いです。


●述語動詞の変化のルール
・人称変化(「3人称単数現在」と”I am, you are, she is・・”のbe動詞の人称変化)
・時制変化
・態変化(受動態と能動態)
・法変化(直接法・仮定法・命令法)
・準動詞への変化(不定詞・分詞・動名詞への変化)
・助動詞+動詞への変化(He answers the question.→He can answer the question.)


「単語の変化のルール」の中で主要な部分を占めるのが「述語動詞の変化のルール」です。それは上の六つの変化しかないのですが、極めて重要。実際、どの文法書を見てもこの「述語動詞の変化のルール」だけで半分から三分の一のページ数が費やされているのではないでしょうか。そして、仮定法もその重要なルールの一部なのです。


「そもそも論」も最後になりました。では、仮定法とは何なんでしょうか? 

はい。仮定法を含む「法変化」というのは、その英文の話者や作者が「自分が発した英文の内容についてどう思っているのか」の違いによって述語動詞の形が変わるということなのです。

・直接法:自分の発言内容が事実だと思っている
(少なくとも、自分の発言が事実だと受手に思われてもいいと思っている)

I am a bird, and I can fly to you. You’re Kidding, or you should go to the hospital.(私は鳥だからあなたの所に飛んで行ける。なに言ってんの、馬鹿じゃない)


・命令法:自分の発言内容が事実になるべきだと思っている
Be a bird, and fly to me. Forgive me, but it is impossible for me to do so, sir.
(鳥になれ、そうして私の所に飛んでこい。旦那様、お言葉ですが、不可能でございます)

・仮定法:自分の発言内容が事実だとは思っていない
If I were a bird, I could fly to you. I miss you, too.
(もし鳥なら、あなたの所に飛んでいけるのに。私もあなたにあえなくて寂しいです)






<確認演習>
一部予習を兼ねてこの記事で説明したことを確認しておきましょう。


▼例題1:
If I were you, I < > for the challenging position.
(A) will apply
(B) would apply
(C) will have applied
(D) applied


訳:私があなたなら、そのやりがいのありそうな仕事に応募しますよ。
正解:(B)
解説:現在の事実と異なる仮定を表すには仮定法過去を使います。
仮定法過去:[従属節:Ifの導く条件節], [主節:帰結節]
[条件節:If→S→V(動詞の過去形)→・・・], [帰結節:S→V(助動詞の過去形+V-原形)・・・]
[条件節:If→S→V(were)→・・・],[ 帰結節:S→V(would apply)・・・]


▼例題2:
If the Liberal Democratic Party had followed your advice, they < > the Upper House election on July 29.
(A) won
(B) would win
(C) would have won
(D) had won


訳:あなたの忠告に従っていたら、自民党も7月29日の参議院選挙で勝てていたでしょうに。
正解:(C)
説明:過去の事実と異なる仮定を表すには仮定法過去完了を使います。
仮定法過去完了:[従属節:Ifの導く条件節], [主節:帰結節]
[条件節:If→S→V(動詞の過去完了形)→・・・], [帰結節:S→V(助動詞の過去形+動詞の現在完了形)・・・]
[条件節:If→S→V(had followed)→・・・],[ 帰結節:S→V(would have won)・・・]



▼例題3:
We insisted that a special meeting < > to discuss the abduction of Japanese citizens by North Korea.
(A) was set up
(B) were set up
(C) has been set up
(D) be set up


訳:北朝鮮による日本人拉致の問題を討議すべく特別ミーティングを開くべきだと私達は主張した。
正解:(D)
説明:要求・提案・依頼・命令を表す動詞が導くthat節の述語動詞には仮定法現在が用いられます。insist, suggest, request, demand, require, command, order (および, 「It is necessary that ~」の構文)が仮定法現在をともなう動詞。ちなみに、仮定法現在は、英国英語では「should+V-原形」、米国英語ではshouldが省略された「V-原形」になり、(なんといっても米語がスタンダードの)TOEIC・TOEFLでは、原則、「V-原形」の形で出題されています。

仮定法現在:[主節:S→「要求・提案・依頼・命令を表す動詞][that節:S→V(仮定法現在形)→・・・]
仮定法現在:[条件節:If→S→V(insisted)][ that節:that S→V(be set up)・・・]


▼例題4:
< > the monthly rent and utilities be over $1,500 per employee-occupant, the ABC Company will pay the excess amount.
(A) If
(B) Unless
(C) Should
(D) Should if


訳:従業員たる入居者の月額の家賃と(水光熱費等の)公共料金の合算がもし万が一、$1,500を超過する場合、その超過分はABC社が支払うことになります。
正解:(C)
説明:「もし万が一~したら」という未来に対する仮定を表すのが仮定法未来の用法です。
仮定法未来:[If →S→V(should+V-原形)→・・・] 
仮定法未来:[If →S→V(should be over )→・・・] 

重要なことは仮定法では、そして、特に仮定法未来ではしばしば文頭のIfが省略されることです。尚、Ifが省略される際には、述語動詞「should+V-原形」のshouldだけが文頭に移動する一種の倒置が必ず起こることに注意してください。本例文の元の形と倒置が起こった後の姿は以下の通り。

If the monthly rent and utilities should be over $1,500 ・・・・
↓ [Ifの省略]
(If)the monthly rent and utilities should be over $1,500 ・・・・
↓ [倒置による述語動詞「助動詞+動詞」の中の助動詞shouldが文頭に移動]
Should the monthly rent and utilities be over $1,500 ・・・・


▼例題5:
< > in your place, I would not forgive him for betraying me.
(A) If were I
(B) If I was
(C) Were I
(D) Was I


訳:私があなたの立場だったら、私を裏切った彼を許さないだろう。
正解:(C)
説明:仮定法過去で倒置が起きている例文。仮定法過去の場合には、条件節の述語動詞がbe動詞(=were)のときに限り倒置によりIfを省略することができます。つまり、述語動詞が一般動詞の場合にはIfの省略は不可です。


▼例題6:
< >, I would have been able to see Momoko Ueda at Narita Airport.
(A) Leaving home earlier
(B) Had I left home earlier
(C) If I left home earlier
(D) If I were leaving home earlier


訳:もう少し早く家を出ていれば、成田空港で上田桃子姫を見ることができたのに!
正解:(B)
説明:帰結節の述語動詞が「would have + V-pp」なので例題は仮定法過去完了のセンテンスだということがわかります。そして、条件節の述語動詞になれるのは仮定法過去完了形の(B)のみ。本問でも倒置によりIfが省略されています。ただ、(仮定法過去とは違い)仮定法過去完了では、条件節の述語動詞がbe動詞(=were)だけでなく一般動詞の場合にも倒置によるIfの省略が可能です。


▼例題7:
Had I had enough time, I < > on him on the way home.
(A) have had called
(B) had called
(C) would called
(D) would have called


訳: もし十分な時間があったのなら帰宅途中にでも彼を訪問したのだが。
正解:(D)
説明:条件節の述語動詞が「had + V-pp」(=had had)なので例題は仮定法過去完了のセンテンス。帰結節の述語動詞が「助動詞の過去形+have+V-pp」という仮定法過去完了形になのはwould have calledのみ。本問でも倒置によりIfが省略されています。くどいですが、仮定法過去完了では、仮定法過去とは違い条件節の述語動詞がbe動詞(=were)の時だけでなく一般動詞の場合にも倒置によるIfの省略ができる。実際、ビジネス文書ではガンガンIfは省略されます。尚、call on が「人を訪ねる」のに対してcall atは「場所を訪れる」意味。この機会に覚えておきましょう。


▼例題8:
If an instructor should not obtain an Alien Registration Card, the contract between the instructor and XYZ Foreign Language Institution Co., Ltd. < > null and void, and all rights, duties, and obligations between both parties will no longer be recognized; relation between both parties reverts to the period before the signing of the contract.
.
(A) will retroactively become
(B) will have retroactively become
(C) would retroactively become
(D) would have retroactively become


訳:万が一、講師が外国人登録カードを取得しない場合には、講師とXYZ外語学院間の契約は遡って無効になり、講師と同外語学院の両当事者間の権利・義務・責務は今後一切考慮されることはない。而して、その両当事者の関係はこの契約が締結される以前の時点に戻ることになります。
正解:(A)
説明:ビジネス英語、特に、英文契約書に馴染みのない方には辛い例文だったでしょうか。ただ、全文55語の空所補充問題はTOEICパート6の「長文の穴埋め問題」に比べればむしろ短いとさえ言える。課題は、しかし、英文和訳ではない。センテンスの構造を理詰めで突き止めれること。TOEIC・TOEFL対策に限らず、再出発の英文法の目標はそこにあります。而して、カンマとセミコロンと接続詞に注目して例文の構造を鳥瞰すると、それは以下の4つの単語列の塊ということが分かると思います。

(a)[If an instructor should not obtain an Alien Registration Card],(b) [the contract between the instructor and XWZ Foreign Language Institution Co., Ltd. < > null and void],(c)[ and all rights, duties, and obligations between both parties will no longer be recognized];(d)[ relation between both parties reverts to the period before the signing of the contract.]

ポイントは、(a)が仮定法未来の条件節であり、(b)(c)はその帰結節ということ。(c)の冒頭、等位接続詞のandが(b)(c)を対等な並列の関係で結び付けている。そして、セミコロン以降の(d)は(b)(c)のパラフレージング(言い換え)にすぎません。参考図を見てください。

(a)→(b)
↓   ↓
(c)→(d)

つまり、カンマとセミコロンと接続詞に着目して例文の大枠の構造が把握でき、かつ、Ifで始まる(a)の述語動詞「should not obtain」が仮定法未来の形であることが察知できた方なら、空所には仮定法未来の帰結節にふさわしい述語動詞を選べばよいことがわかるでしょう。畢竟、例文の意味が正確には理解できなかったとしても本問は10秒以内で正解可能な楽勝問題なのです。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-06-02 06:30:58
最初に例文(1)には笑わされました。
オーストラリアに駐在していた時、現地人は仮定法の過去や未来を使いこなせていない、助動詞その他の使い方がオカシイ事に気づき、「文法上はこれが正解ですよーー」と本当に聞きづらい日本語英語のへたくそな発音で私が英文法を倉庫番のにいちゃん・ねぇちゃんに教えていましたが、実際の会話になると誰もそれを使わないので諦めました。
日本人の文法力は世界一かもしれません。拝
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Unknown (@東南)
2008-06-02 07:56:52
すみません。一つ前の投稿にHN入れるの忘れました。Ahoo!だと勝手に名前アイコンが入るのでまったく意識の外でした。申し訳ないです。拝
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