KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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東京国際女子マラソン雑感vol.3

2004年12月05日 | マラソン観戦記
千葉真子にとって、今回の東京の「テーマ」は何だったのだろうか?アテネ五輪マラソンの補欠代表だった彼女、自分の実力が他の3人の代表と遜色ないことを証明するためなら、アテネの翌週の北海道マラソンで優勝したことで十分ではなかったかと思えるのだが。

東京国際女子への招待に応じたのは、「それ以上」を望んだからだったのだろうか?

同門の高橋尚子が失速した東京のコースにて、彼女を破って優勝したアレムに勝つことで、「高橋を越えた」ことをアピールしたかったのだろうか?さらに言えば、アテネで4位でもあるアレムに勝つことで、
「土佐礼子や坂本直子よりも自分が上」
であることをアピールしたかったのだろうか?

中継も「千葉対アレム」の首位争いに気を取られて、彼女達のペースがどんどん落ちていき、後方のジェノベーゼとの差が迫っていることに気がつかなかったみたいだ。沿道の小出監督に一言で初めて気がついたかのごとく、あわててカメラを後方に向けると、思いもよらぬ、「ドラマ」が待ち受けていた。

身長こそ、千葉と変わりないが、体型はかなり筋肉質なジェノベーゼ。千葉をかわしたかと思うと、アレムにもあっさり追いつき先頭へ。

千葉もアレムには食らいつくが、後方から嶋原清子が追い上げて来た。

国立競技場のトラックを先頭で走るジェノベーゼ。美しかった!

そして、アレムと千葉を一気に引き離した嶋原。ここまで、42kmも走ってきたとは感じさせない走りだ。

「日本人トップ争いも熾烈だ!」
おいおい、もう100m以上も引き離されているだろう?

ケチをつけるつもりではないが、決して「驚異的な追い上げ」だったわけではない。30kmの時点でアレム&千葉とジェノベーゼ&嶋原との差は1分12秒。彼女たちがそこからペースを上げたわけではない。30kmから35kmのスプリットタイムよりも、35kmからの5kmはジェノベーゼでも28秒、嶋原も17秒落としている。そんな彼女たちに、残10kmでひっくり返されるほど、先頭の二人の失速が甚だしかったわけである。

嶋原もジェノベーゼも、去年のこの大会で入賞している。ジェノベーゼは3年前にこのコースで自己ベストを出している。彼女たちの勝因は、自分自身の実力と体調を熟知して、それに合わせたペースで走ったこと。それに尽きると思う。

一方、アレムの敗因は、今年これが3度目のマラソンであること、ボストンで2位、アテネで4位と悪コンディションでの激しいレースを続けた疲労のせいだとの指摘がある。とはいえ、この「安定感」は大したものだ。

千葉の敗戦について、小出監督のコメントには疑問が残った。
「10月以降走りこみ不足で、体重が増えたせい。」
ということだが、僕のごときものが「名伯楽」に口を出すのもどうかと思いつつ、言わせてもらえれば、

8月に北海道を走って優勝したばかりで、さらに9月には合宿地であるボルダーのローカルマラソンで2時間40分台で優勝している千葉に、10月以降も走りこませる必要があったのだろうか?さらに、千葉は11月3日には豊田自動織機の一員てして、東日本実業団女子駅伝を走っている。「常識」で言えば、10月というのは前月の疲労を取り、駅伝に向けてのスピードを取り戻すための調整期ではないかと思うのだが。「常識外れ」のトレーニングで、メダリストを養成してきた監督に常識云々を問うのは「釈迦に説法」というものだろう。

改めて、ビデオで見て気になったのは解説の増田明美さんのコメントの中にで、レース直前に監督から太った、と言われた千葉がレース前日もうどんを一本一本「ちゅるちゅる」と食べていたということだ。

軽量級のボクサーだって、試合前の計量が終われば好きなものを食べるというのに。それに、これは僕程度のレベルのランナーの「常識」であるが、
「レースの直前は、ベスト体重よりも1kg体重が増えているくらいが望ましい。」
という説もあるのだ。

2年連続して、日本を代表するトップ・ランナーに「ガス欠」という「恥かしい失敗」をさせた人をいつまでも「名伯楽」なんて、持ち上げなくてもいいんじゃないか?

敗戦にもかかわらず、笑顔でインタビューにこたえ、自分の著書も宣伝していた千葉真子は、かつて僕のフェイバリット・ランナーだった頃の彼女とは別人に思えてきた。

東京国際女子の後、うれしいニュースが飛びこんできた。

男子のマラソン補欠代表、高岡寿成が来年の東京国際に出場するというのである。テレビ局言うところの「最難関コース」で、
「日本新記録を狙う!」
と言いきった!人気女子ランナーが2年連続して失速したコースで、男子の日本新記録が出せたとしたら、もう誰も、
「日本のマラソン、女子は層が厚いけど、男子はダメですね。」
とは言わなくなるだろう。なってほしい。



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