来年は世界陸上競技選手権大会(通称世界陸上)が大阪で開催される。'91年の東京大会以来16年ぶりに日本での開催となるが、この16年で日本の陸上競技界は大きく様変わりしたと言える。
なんといっても、マラソンが「唯一のメダル獲得種目」ではなくなり、トラック競技で決勝に進出できるのが10000mだけではなくなった。ハンマー投げの室伏広治、男子400mハードルの為末大、男子200mで末續慎吾がメダルを獲得。男子のリレー種目は4×100もマイルもA標準記録突破者だけでチームを作れるようになった。
先日も、棒高跳びの澤野大地に400mの金丸祐三、そして為末大が千葉真子とともにスポーツ選手のトーク・バラエティ番組(フジテレビの人気番組のパクリっぽいが)に出演していた。
長い間、日本人は世界では通用しないと言われてきた短距離や投擲種目で、堂々と世界のトップと競える選手たちの台頭は喜ばしいことだ。その反面、もはや男子のマラソンや長距離は「お家芸」ではなくなっているという現実を思い知らされ、寂しさを覚える。男子のマラソン・ランナーが、このような場に招かれる機会が少なくなってしまった。マラソンや駅伝の前後以外に、男子のマラソン・ランナーがマスコミに取上げられることがなくなってしまった。
今、日本の男子マラソン界で、「大阪の顔」と呼べるのは誰だろう?高岡寿成?藤田敦史?油谷繁?瀬古利彦さんや中山竹通さんらに比べると、彼らの知名度はマラソン・ファン以外には低いのではあるまいか?彼らは皆、自己ベスト記録は瀬古さんや中山さんを凌いでいるし、世界陸上で入賞も経験しているのだが。
そう思えば、日本の男子マラソンは、それほど落ちこんではいない。10年前よりはマシだ。来年、大阪で入賞する可能性も、ジーコ・ジャパンの1次リーグ突破よりは高い!と僕は思う。(君はそう、思わないか?)
今のニッポン男子マラソンランナーたち(アテネ五輪の時に命名した“マラソン・ボーイズ”)に欠けているもの。それは、「連続優勝」である。
国内外のメジャー大会や国際大会において、2回続けて優勝したランナーは、'91別大、'92東京と2連勝した森下広一さんが最後である。以後の国内メジャー大会の優勝者を見てみると、たとえば'91福岡で優勝しながら、バルセロナ五輪の代表選考には漏れた森田修一さん、真価を問われる翌年の北京では完走できなかった。
'94年の別大優勝の中富肇さんは、翌年のロンドンは2時間29分台の惨敗。'95年びわ湖優勝の中村祐二さんは、世界陸上ではフィスやセロンらのトップ争いにつくことはできなかった。
優勝した次のレースでもそこそこの結果を出せたランナーと言えば、
'98びわ湖優勝 小島宗幸 '98福岡5位
'02びわ湖優勝 武井隆次 '02釜山アジア大会銅メダル
'04福岡優勝 尾方 剛 '05世界陸上銅メダル
'05東京優勝 高岡寿成 '05世界陸上4位
この4人くらいである。言わば今の男子ランナーたちは皆、魁皇や栃東ら、なかなか横綱になれない大関力士たちに近いように思う。せっかくの「綱取り」のチャンスをみすみす逃してしまっている。今のマラソン・ファンの日本男子に対する不満は、日本人横綱がなかなか生まれないことに苛立っている相撲ファンのストレスに通じるかもしれない。高岡は、現在日本最高のランナーだが、去年の世界選手権に今年の東京は、「勝てる試合を落としている」と見るのは厳しいだろうか?
やはり優勝は大事だ。女子がマラソンで金メダルを2個持ちかえり、金メダリストが2人とも日本新記録を塗り替えているのに比べたら、2位や3位ではアピールできない。中山さんが言っていたように
「2位以下はビリと同じ。」
なのである。
ところで、前回書いたように、中山さんの発言は暴言と批判され、陸連幹部も「人間教育の徹底」という事を口にしていたが、実際にいかなる教育がなされたのであろうか?もし、何らかの「教育」が実施されたのであれば、それは一定の成果を得ているとは言えないだろうか?
今の若い五輪代表選手たちは、たとえメダルを取り逃しても、予選で敗退しても、
「楽しめました。」
と笑顔で答えているではないか。メダルの色や順位に拘るなんて野暮というもの、五輪は参加することに意義があるものだということをきちんと理解しているのだな。けっこうじゃないかと思ったら、今のJOCの幹部はご立腹のようで、
「税金で五輪に行かせてもらえて、楽しめた、とは何だ!」
「メダルの獲得が期待できない種目は派遣しない。」
だとさ。なんだか、「ゆとり教育」のせいで学力が低下したとか言っている教育現場のゴタゴタみたいだな。
16年前の世界選手権は、最終種目の男子マラソンで谷口浩美さんが金メダルを獲得して、大会を見事にしめくくった。来年の大阪大会では、男子マラソンは女子より先に行われる。
テレビ局の意向で、世界選手権は女子マラソンがメイン扱いである。男子マラソンは良く言えば「斬り込み隊長」、悪く言えば「前座」だ。
今年は五輪中間年であると同時に、地元開催の世界選手権の前年なのに、男子マラソンはまだ、注目すべき動きが見られなかったのが残念だった。やっぱり、秋以降に期待するしかない。今年で60回目を迎えるフクオカまで、あと193日である。
(了)
なんといっても、マラソンが「唯一のメダル獲得種目」ではなくなり、トラック競技で決勝に進出できるのが10000mだけではなくなった。ハンマー投げの室伏広治、男子400mハードルの為末大、男子200mで末續慎吾がメダルを獲得。男子のリレー種目は4×100もマイルもA標準記録突破者だけでチームを作れるようになった。
先日も、棒高跳びの澤野大地に400mの金丸祐三、そして為末大が千葉真子とともにスポーツ選手のトーク・バラエティ番組(フジテレビの人気番組のパクリっぽいが)に出演していた。
長い間、日本人は世界では通用しないと言われてきた短距離や投擲種目で、堂々と世界のトップと競える選手たちの台頭は喜ばしいことだ。その反面、もはや男子のマラソンや長距離は「お家芸」ではなくなっているという現実を思い知らされ、寂しさを覚える。男子のマラソン・ランナーが、このような場に招かれる機会が少なくなってしまった。マラソンや駅伝の前後以外に、男子のマラソン・ランナーがマスコミに取上げられることがなくなってしまった。
今、日本の男子マラソン界で、「大阪の顔」と呼べるのは誰だろう?高岡寿成?藤田敦史?油谷繁?瀬古利彦さんや中山竹通さんらに比べると、彼らの知名度はマラソン・ファン以外には低いのではあるまいか?彼らは皆、自己ベスト記録は瀬古さんや中山さんを凌いでいるし、世界陸上で入賞も経験しているのだが。
そう思えば、日本の男子マラソンは、それほど落ちこんではいない。10年前よりはマシだ。来年、大阪で入賞する可能性も、ジーコ・ジャパンの1次リーグ突破よりは高い!と僕は思う。(君はそう、思わないか?)
今のニッポン男子マラソンランナーたち(アテネ五輪の時に命名した“マラソン・ボーイズ”)に欠けているもの。それは、「連続優勝」である。
国内外のメジャー大会や国際大会において、2回続けて優勝したランナーは、'91別大、'92東京と2連勝した森下広一さんが最後である。以後の国内メジャー大会の優勝者を見てみると、たとえば'91福岡で優勝しながら、バルセロナ五輪の代表選考には漏れた森田修一さん、真価を問われる翌年の北京では完走できなかった。
'94年の別大優勝の中富肇さんは、翌年のロンドンは2時間29分台の惨敗。'95年びわ湖優勝の中村祐二さんは、世界陸上ではフィスやセロンらのトップ争いにつくことはできなかった。
優勝した次のレースでもそこそこの結果を出せたランナーと言えば、
'98びわ湖優勝 小島宗幸 '98福岡5位
'02びわ湖優勝 武井隆次 '02釜山アジア大会銅メダル
'04福岡優勝 尾方 剛 '05世界陸上銅メダル
'05東京優勝 高岡寿成 '05世界陸上4位
この4人くらいである。言わば今の男子ランナーたちは皆、魁皇や栃東ら、なかなか横綱になれない大関力士たちに近いように思う。せっかくの「綱取り」のチャンスをみすみす逃してしまっている。今のマラソン・ファンの日本男子に対する不満は、日本人横綱がなかなか生まれないことに苛立っている相撲ファンのストレスに通じるかもしれない。高岡は、現在日本最高のランナーだが、去年の世界選手権に今年の東京は、「勝てる試合を落としている」と見るのは厳しいだろうか?
やはり優勝は大事だ。女子がマラソンで金メダルを2個持ちかえり、金メダリストが2人とも日本新記録を塗り替えているのに比べたら、2位や3位ではアピールできない。中山さんが言っていたように
「2位以下はビリと同じ。」
なのである。
ところで、前回書いたように、中山さんの発言は暴言と批判され、陸連幹部も「人間教育の徹底」という事を口にしていたが、実際にいかなる教育がなされたのであろうか?もし、何らかの「教育」が実施されたのであれば、それは一定の成果を得ているとは言えないだろうか?
今の若い五輪代表選手たちは、たとえメダルを取り逃しても、予選で敗退しても、
「楽しめました。」
と笑顔で答えているではないか。メダルの色や順位に拘るなんて野暮というもの、五輪は参加することに意義があるものだということをきちんと理解しているのだな。けっこうじゃないかと思ったら、今のJOCの幹部はご立腹のようで、
「税金で五輪に行かせてもらえて、楽しめた、とは何だ!」
「メダルの獲得が期待できない種目は派遣しない。」
だとさ。なんだか、「ゆとり教育」のせいで学力が低下したとか言っている教育現場のゴタゴタみたいだな。
16年前の世界選手権は、最終種目の男子マラソンで谷口浩美さんが金メダルを獲得して、大会を見事にしめくくった。来年の大阪大会では、男子マラソンは女子より先に行われる。
テレビ局の意向で、世界選手権は女子マラソンがメイン扱いである。男子マラソンは良く言えば「斬り込み隊長」、悪く言えば「前座」だ。
今年は五輪中間年であると同時に、地元開催の世界選手権の前年なのに、男子マラソンはまだ、注目すべき動きが見られなかったのが残念だった。やっぱり、秋以降に期待するしかない。今年で60回目を迎えるフクオカまで、あと193日である。
(了)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます