KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2008マラソン・ニッポン戦力分析(男子篇vol.1)

2008年05月08日 | 記録データ・ランキング
マラソン・シーズンも一段落したところだが、例年、今の時期に上半期のランキングを作成してきた。今年は五輪イヤーということもあり、ランキングの範囲を昨年の9月以降まで広げてみようと思う。五輪選考レースの初戦としての世界選手権から、今春の海外都市マラソンまでを対象に、まずは男子のランキングを作成してみよう。

2年前の上半期のランキングを作る際に、当時新書で刊行され、マラソン&駅伝ファンの間で物議を醸した「駅伝がマラソンを駄目にした」というのは、はたして本当かどうかを探るために、2種類のランキングを作成した。


グループA(箱根駅伝未経験)
1位 高岡寿成(カネボウ)2:09:31 東京②
2位 松宮隆行(コニカミノルタ)2:10:20 びわ湖②☆
3位 入船 敏(カネボウ)2:10:47 東京④
4位 鷲尾雄一(三菱重工長崎)2:11:05 延岡①☆
5位 佐藤智之(旭化成)2:11:46 別大②
6位 中森一也(大塚製薬)2:12:08 延岡③☆
7位 小島宗幸(旭化成)2:12:28 びわ湖⑥
8位 福岡耕一郎(三菱重工長崎)2:14:00 びわ湖⑧☆
9位 沖野剛久(中国電力)2:14:32 別大⑥☆
10位 方山利哉(NTT西日本)2:14:36 東京⑥

10傑平均タイム 2時間12分07秒

グループB(箱根駅伝経験者)
1位 大崎悟史(NTT西日本)2:10:49 びわ湖③
2位 梅木蔵雄(中国電力)2:11:31 ロッテルダム⑪
3位 実井謙二郎(日清食品)2:11:32 ボストン⑥
4位 喜多健一(九電工)2:11:41 延岡②☆
5位 清水将也(旭化成)2:12:31 びわ湖⑦☆
6位 片岡祐介(大塚製薬)2:13:09 延岡④☆
7位 佐藤洋平(カネボウ)2:13:18 別大④
8位 久保田満(旭化成)2:14:19 延岡⑤初
9位 松浦仁一(ホンダ)2:14:47 びわ湖⑨初
10位 河野隼人(早稲田大)2:15:11 びわこ⑩初

10傑平均タイム 2時間12分52秒

タイムの後の〇で囲んだ数字は、大会での順位、☆をつけているのはそのランナーの自己ベスト、「初」は初マラソンであることを示している。

この年は、箱根駅伝経験者がマラソンでは不調だった。

さて、今回の五輪選考期間のランキングはどうなっているだろうか。


グループA(箱根未経験)
1位 松宮祐行(コニカミノルタ)2:09:40 福岡④
2位 入船 敏(カネボウ)2:09:40 東京⑤☆
3位 佐藤智之(旭化成)2:09:59 びわ湖⑦
4位 油谷 繁(中国電力)2:10:30 福岡⑤
5位 小林誠治(三菱重工長崎)2:11:02 東京⑦☆
6位 高岡寿成(カネボウ)2:11:21 パリ⑯
7位 堀端宏行(旭化成)2:11:47 東京⑨初
8位 足立知弥(旭化成)2:11:59 別大①初
9位 太田 崇(コニカミノルタ)2:12:10 東京⑩☆
10位 瀬戸智之(カネボウ)2:12:21 ベルリン⑨☆

10傑平均タイム 2時間11分2秒

グループB(箱根経験者)
1位 佐藤敦之(中国電力)2:07:13 福岡③☆
2位 大崎悟史(NTT西日本)2:08;36 びわ湖③☆
3位 藤原 新(JR東日本)2:08:40 東京②☆
4位 大西雄三(日清食品)2:08:54 びわ湖④☆
5位 諏訪利成(日清食品)2:09:16 東京④
6位 清水智也(佐川急便)2:09:23 びわ湖⑤初
7位 池永和樹(コニカミノルタ)2:10:44 びわ湖⑧☆
8位 梅木蔵雄(中国電力)2:11:00 東京⑥
9位 高塚和利(小森コーポレーション)2:11:15 東京⑧
10位 高橋謙介(トヨタ自動車)2:11:52 福岡⑥☆

10傑平均タイム 2時間9分41秒

今シーズンは、箱根駅伝を経験して実業団入りしたランナーたちが、マラソンで結果を出したシーズンだったと言えるだろう。ニューイヤー駅伝ではエースのブレーキで下位に沈んだ旭化成とカネボウ。高卒ランナー主体のチームではなかなかニューイヤーでは勝てなくなったが、マラソンでは気を吐いた感がある。

先に指摘したように、今回の五輪代表は初めて、箱根駅伝経験者で占められたが、もう一つ、彼らには共通点があったことに気がついた。そこで、もう一つ、2種類のランキングを作成してみた。

グループC
1位 佐藤敦之(中国電力)2:07:13 福岡③☆
2位 大崎悟史(NTT西日本)2:08:36 びわ湖③☆
3位 藤原 新(JR東日本)2:08:40 東京②☆
4位 清水智也(佐川急便)2:09:23 びわ湖⑤初
5位 入船 敏(カネボウ)2:09:40 東京⑤☆
6位 佐藤智之(旭化成)2:09:59 びわ湖⑦
7位 油谷 繁(中国電力)2:10:30 福岡⑤
8位 梅木蔵雄(中国電力)2:11:00 東京⑥
9位 小林誠治(三菱重工長崎)2:11:02 東京⑦☆
10位 高岡寿成(カネボウ)2:11:21 パリ⑯


10傑平均タイム 2時間9分44秒

グループD
1位 大西雄三(日清食品)2:08:54 びわ湖④☆
2位 諏訪利成(日清食品)2:09:16 東京④
3位 松宮祐行(コニカミノルタ)2:09:40 福岡④
4位 池永和樹(コニカミノルタ)2:10:44 びわ湖⑧初
5位 高塚和利(小森コーポレーション)2:11:15 東京⑧
6位 高橋謙介(トヨタ自動車)2:11:52 福岡⑥☆
7位 藤原正和(Honda)2:12:07 びわ湖⑨
8位 太田 崇(コニカミノルタ)2:12:10 東京⑩☆
9位 藤田敦史(富士通)2:12:29 福岡⑨
10位 石毛豊志(ヤクルト)2:12:45 びわ湖⑪☆

10傑平均タイム 2時間11分7秒

グループCとグループDの違いにお気づきだろうか?

駅伝をよくご覧になっている方ならすぐにピンときただろう。Cは「全員日本人の陸上部のランナー」、Dは「外国人ランナーの所属する陸上部のランナー」というグループ分けである。

今回のマラソン代表3人の共通点、それは箱根駅伝経験者であり、外国人ランナーのいない実業団チームで競技を続けているランナーである、ということだった。

コニカ(現コニカミノルタ)に所属し、ケニア代表として3回五輪に出場し、2個のメダルを獲得したエリック・ワイナイナ。しかし、彼のチームメイトからはまだ、五輪の代表選手は出ていない。

思えば、外国人のいるチームからマラソンの五輪代表に選ばれたのは、日清食品の実井謙二郎と諏訪利成、佐川急便の大家正喜だけである。(当時の佐川には台湾のマラソン代表が所属していた。現在は外国人は在籍していない。)

今回のランキングから、
「箱根駅伝有害論は誤りだ。」
「外国人助っ人ランナーは日本人の強化につながっていない。」
と結論づけるのは早計かもしれない。尾方剛も大崎悟史も、山梨学院大時代には、ケニア人留学生と同じ釜の飯を食っている。

しかし、強力な外国人が同じチームにいるよりも、彼らを「ライバル」と見なして競り合うチームからの方が、強力なランナーが育つ傾向にあるのかもしれない。

「外国人効果」というのは、そんなにすぐには現われないのかもしれない。コニカにしても、日本人サブテンランナーがなかなか現われなかった。

2時間5分32秒をロンドンで記録した、サムエル・ワンジルのチームメイトである、トヨタ自動車九州のランナーから五輪のマラソン代表が出るのは、はたしてロンドンか、その次(東京ではない、と僕は思う。)だろうか。





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