東京マラソン完走記を7ヶ月以上かけて完結させたことで、止まっていたこのサイトの中の時間がようやく動き出したように感じている。東京マラソンの翌週のびわ湖マラソンから5日後が3月11日だった。それ以後の「マラソンにっぽん」について、語っていこう。こんな風に、トップランナーたちについて語るのは随分久しぶりのような気がしている。
空前のランニング・ブームとか言われているが、今のブームは、観戦スポーツとしてのマラソンの人気や、日本代表の知名度アップにはほとんど貢献していないように思う。この半年のマラソン界を振り返ると、大震災の影響で数々の主要大会が中止になった。名古屋国際女子、実業団ハーフ、長野マラソン、仙台国際ハーフ・・・。今夏の大邸で開催された世界選手権の代表選考レースであった名古屋が中止になり、代替大会として急遽ロンドンマラソンへの女子の有力候補選手の大量派遣という異例の事態を乗り越えて、世界選手権は男女ともに入賞を果たし、男子においては、団体で銀メダルも獲得したというのに、陸上競技専門誌はともかく、一般誌の扱いは小さかった。総合スポーツ誌を謳いながら、実質はサッカー専門誌である某N誌では一行の記事にもならなかった。この雑誌、最近はランニング情報をメインとした増刊号を発刊するも表紙は中田ヒデであり、三浦カズである。なめとんのか。
「ナンバーワンにはならなくていい。」
というSMAPのヒット曲の歌詞や、女性大臣の
「2位じゃダメなんですか?」
発言が批判されるご時世か、マラソンも1位でなければ見向きもされないのである。世界選手権直前の「なでしこジャパン世界一」に食われてしまったようでもある。
その一方で、プロ野球においては、二年連続リーグ優勝チームの監督とコーチが解任されるという異常な事態が起こった。いったい、今、アスリートには何が求められているのか?
僕が求めているのは、世界のトップに勝負を挑む日本人ランナーの活躍である。観戦スポーツとしては「マイナー」な存在であるマラソンに、少しでも光を当てたい。そんな想いで立ち上げた、この「感情的マラソン論」。久しぶりに「マラソンにっぽん」の現在について、語っていこうと思う。まずは、男子から。
現在の日本の男子マラソンの最重要人物はと言えば、今年の東京マラソンに2時間8分37秒で3位に入賞した24歳の公務員、川内優輝であろう。今回で5回目となる東京マラソンで初めて、日本人の上位入賞者が脚光を浴びる結果となった。日本人ランナーが上位を独占した昨年においてさえ、翌日の中継局の朝のニュースショーは自局の女子アナが完走したとかいう話題が中心だった。一体、何のためにこの局は箱根駅伝を主催しているのかと憤った。1位から4位を独占した日本人ランナーは全て箱根駅伝経験者であり、優勝した藤原正和は、花の2区と山登りの5区で区間賞を獲得している中央大のスーパーエースだったというのに。この時の4位が川内だったということを、どれだけの人が記憶していただろうか。
「市民ランナーの快挙」とは言うものの、今回も招待選手として出場していたランナーである。一部の報道では彼のことを
「川内優輝さん」と敬称をつけて紹介していたが、スポーツ報道においては、現役の選手は敬称略が原則のはずである。これは彼に対して失礼というものである。
川内のレース展開も、2004年の名古屋国際女子の土佐礼子を彷彿とさせる、見る者の胸を熱くさせるような素晴しい物であったが、その一方で、彼に敗れた、“事実上のプロランナー集団”である実業団ランナーたちの不甲斐無さを批判する声もあった。
東京から半年後の世界選手権。川内の上位入賞に期待したが、日本人トップとなる7位でゴールしたのは、実業団の老舗である旭化成の堀端宏行であり、10位でゴールしたのも、実業団駅伝の強豪である安川電機初のマラソン日本代表である中本健太郎だった。2人とも、東京の翌週のびわ湖毎日マラソンでの走りで代表入りしたランナーだったのは偶然ではあるまい。これはやはり、「市民ランナー川内の激走」に対する「実業団からの回答」だったとみたい。特に堀端は高校卒業後に旭化成入りして6年目のランナーで、川内とは同学年にあたる。(堀端は'86年生まれで、川内は'87年の早生まれ)この両者が今後、「ライバル」として、より高いレベルを目指していければと期待せずにはいられない。川内は16位だったが、暑さに弱いと伝えられ、6月にトレーニングの一環として出場した50kmマラソンにてゴール直前に熱中症でリタイアというアクシデントに見舞われ、今回も大惨敗するのではと危惧されたが、彼の走りがあったからこその団体銀メダルであった。彼自身にとっても、これまで以上の夏のマラソンへの自信を深める結果になったのではあるまいか。
東京で日本人2位だったトヨタ自動車の尾田賢典は、これが31歳にして初のマラソンだったが、今後は川内や堀端のように、25歳以下のランナーが積極的にマラソンに挑戦して欲しい。特にこの世代には、逸材が多いのだから。先日のシカゴマラソンにおいて、日本人トップの7位でゴールしたのは、川内よりも一学年下の五ヶ谷宏司だった。昨春にJR東日本に入社した社会人2年生である。タイムは2時間12分台とやや物足りないが、次回以降に大化けする可能性は高い。
年間の最大行事を駅伝と定め、駅伝中心のトレーニングを続けるチームが多数なのが現在の実業団の現状である。しかしながら、実業団の関係者たちからマラソンに対する情熱が消え去っているわけではないことが、今回の世界選手権の収穫だった。アフリカ勢との差は確かに大きいが、追い駆けることをあきらめてはいない。まずは、川内の記録を追い駆けることからだ。彼の東京でのタイムが、今年の日本のマラソン最高記録でなくなるようなら、来年のロンドン五輪も面白くなる。
もちろん、川内が自己ベストを更新する可能性も高いのだ。五輪代表となった彼も見たいが、彼には実業団ランナーにはいろんな意味で不可能なレーススケジュールで国内ローカル大会から、WMM大会まで、世界のロードで大暴れしてもらいたい。そんな彼を中心に、これからの日本男子マラソンは動いていきそうだ。
今は、日本の男子マラソンが面白いんだぞ!!
空前のランニング・ブームとか言われているが、今のブームは、観戦スポーツとしてのマラソンの人気や、日本代表の知名度アップにはほとんど貢献していないように思う。この半年のマラソン界を振り返ると、大震災の影響で数々の主要大会が中止になった。名古屋国際女子、実業団ハーフ、長野マラソン、仙台国際ハーフ・・・。今夏の大邸で開催された世界選手権の代表選考レースであった名古屋が中止になり、代替大会として急遽ロンドンマラソンへの女子の有力候補選手の大量派遣という異例の事態を乗り越えて、世界選手権は男女ともに入賞を果たし、男子においては、団体で銀メダルも獲得したというのに、陸上競技専門誌はともかく、一般誌の扱いは小さかった。総合スポーツ誌を謳いながら、実質はサッカー専門誌である某N誌では一行の記事にもならなかった。この雑誌、最近はランニング情報をメインとした増刊号を発刊するも表紙は中田ヒデであり、三浦カズである。なめとんのか。
「ナンバーワンにはならなくていい。」
というSMAPのヒット曲の歌詞や、女性大臣の
「2位じゃダメなんですか?」
発言が批判されるご時世か、マラソンも1位でなければ見向きもされないのである。世界選手権直前の「なでしこジャパン世界一」に食われてしまったようでもある。
その一方で、プロ野球においては、二年連続リーグ優勝チームの監督とコーチが解任されるという異常な事態が起こった。いったい、今、アスリートには何が求められているのか?
僕が求めているのは、世界のトップに勝負を挑む日本人ランナーの活躍である。観戦スポーツとしては「マイナー」な存在であるマラソンに、少しでも光を当てたい。そんな想いで立ち上げた、この「感情的マラソン論」。久しぶりに「マラソンにっぽん」の現在について、語っていこうと思う。まずは、男子から。
現在の日本の男子マラソンの最重要人物はと言えば、今年の東京マラソンに2時間8分37秒で3位に入賞した24歳の公務員、川内優輝であろう。今回で5回目となる東京マラソンで初めて、日本人の上位入賞者が脚光を浴びる結果となった。日本人ランナーが上位を独占した昨年においてさえ、翌日の中継局の朝のニュースショーは自局の女子アナが完走したとかいう話題が中心だった。一体、何のためにこの局は箱根駅伝を主催しているのかと憤った。1位から4位を独占した日本人ランナーは全て箱根駅伝経験者であり、優勝した藤原正和は、花の2区と山登りの5区で区間賞を獲得している中央大のスーパーエースだったというのに。この時の4位が川内だったということを、どれだけの人が記憶していただろうか。
「市民ランナーの快挙」とは言うものの、今回も招待選手として出場していたランナーである。一部の報道では彼のことを
「川内優輝さん」と敬称をつけて紹介していたが、スポーツ報道においては、現役の選手は敬称略が原則のはずである。これは彼に対して失礼というものである。
川内のレース展開も、2004年の名古屋国際女子の土佐礼子を彷彿とさせる、見る者の胸を熱くさせるような素晴しい物であったが、その一方で、彼に敗れた、“事実上のプロランナー集団”である実業団ランナーたちの不甲斐無さを批判する声もあった。
東京から半年後の世界選手権。川内の上位入賞に期待したが、日本人トップとなる7位でゴールしたのは、実業団の老舗である旭化成の堀端宏行であり、10位でゴールしたのも、実業団駅伝の強豪である安川電機初のマラソン日本代表である中本健太郎だった。2人とも、東京の翌週のびわ湖毎日マラソンでの走りで代表入りしたランナーだったのは偶然ではあるまい。これはやはり、「市民ランナー川内の激走」に対する「実業団からの回答」だったとみたい。特に堀端は高校卒業後に旭化成入りして6年目のランナーで、川内とは同学年にあたる。(堀端は'86年生まれで、川内は'87年の早生まれ)この両者が今後、「ライバル」として、より高いレベルを目指していければと期待せずにはいられない。川内は16位だったが、暑さに弱いと伝えられ、6月にトレーニングの一環として出場した50kmマラソンにてゴール直前に熱中症でリタイアというアクシデントに見舞われ、今回も大惨敗するのではと危惧されたが、彼の走りがあったからこその団体銀メダルであった。彼自身にとっても、これまで以上の夏のマラソンへの自信を深める結果になったのではあるまいか。
東京で日本人2位だったトヨタ自動車の尾田賢典は、これが31歳にして初のマラソンだったが、今後は川内や堀端のように、25歳以下のランナーが積極的にマラソンに挑戦して欲しい。特にこの世代には、逸材が多いのだから。先日のシカゴマラソンにおいて、日本人トップの7位でゴールしたのは、川内よりも一学年下の五ヶ谷宏司だった。昨春にJR東日本に入社した社会人2年生である。タイムは2時間12分台とやや物足りないが、次回以降に大化けする可能性は高い。
年間の最大行事を駅伝と定め、駅伝中心のトレーニングを続けるチームが多数なのが現在の実業団の現状である。しかしながら、実業団の関係者たちからマラソンに対する情熱が消え去っているわけではないことが、今回の世界選手権の収穫だった。アフリカ勢との差は確かに大きいが、追い駆けることをあきらめてはいない。まずは、川内の記録を追い駆けることからだ。彼の東京でのタイムが、今年の日本のマラソン最高記録でなくなるようなら、来年のロンドン五輪も面白くなる。
もちろん、川内が自己ベストを更新する可能性も高いのだ。五輪代表となった彼も見たいが、彼には実業団ランナーにはいろんな意味で不可能なレーススケジュールで国内ローカル大会から、WMM大会まで、世界のロードで大暴れしてもらいたい。そんな彼を中心に、これからの日本男子マラソンは動いていきそうだ。
今は、日本の男子マラソンが面白いんだぞ!!
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