先日17日に発表された防衛大綱(来年度から5ヶ年に適用される中期防衛力整備計画)。
2000人規模の人員、戦車や火砲の削減があった、一方護衛艦、潜水艦などは、強化されていた。
素人はこれをどう見ていいのか判らないが、専門家の評価が掲載されていた。
やはり、安心できるものではなさそうだ。
参考ブログ
■軍事評論家=佐藤守のブログ日記 ■新防衛大綱=軍縮大綱!
http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20101217
2000人規模の人員、戦車や火砲の削減があった、一方護衛艦、潜水艦などは、強化されていた。
素人はこれをどう見ていいのか判らないが、専門家の評価が掲載されていた。
やはり、安心できるものではなさそうだ。
【正論】帝京大学教授・志方俊之 「動的防衛力」は総額抑制の方便 2010.12.28 02:38 産経
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101228/plc1012280240007-n1.htm
民主党政権下初の「防衛計画の大綱(以下、防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(以下、中期防)」は、激変する一連の戦略環境の中で立案され、最終的に安全保障会議と閣議で決定された。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突、ロシア大統領による北方領土訪問、北朝鮮による韓国砲撃と対抗して行われた米韓合同演習、最大規模となった日米共同統合演習とそれを妨害したロシア機の闖入(ちんにゅう)など、騒然とした中で、大綱と中期防の立案作業は最終段階を迎えた。
同じ時期、国連安全保障理事会は、北朝鮮の核開発阻止をめぐり日米韓と中露の間の意見が折り合わず、「声明」さえ採択できない状況に立ち至った。東西冷戦時代にもなかったような、東アジアの現下の厳しい戦略環境である。
◆評価二分の大綱、中期防
それだけに、今回の大綱、中期防発表は内外の注目するところとなった。評価は二分している。
一つは、こんな難局に直面して練られた防衛戦略にしては、なお危機感不足で、法整備を含む具体化策が掛け声に終始しているという見方である。民主党政権は、冷戦終結後続いてきた防衛力の低下(これは自民党政権の責任)を、少なくともストップすべき役を振られていたにもかかわらず、中期防の予算枠も削減して、南西諸島上空を飛ぶ無人偵察機の導入さえ組み込むことができなかった。
もう一つは、民主党が野党時代にマニフェストや政策集で掲げていた空疎な安保・防衛政策を捨て去り、現実的な責任政党としての自覚を曲がりなりにも持ち得たと一応、評価する捉え方である。
民主党は政権に就いた直後、うれしさのあまり安全保障、防衛分野でも脱自民色を出すべきだと錯覚して、普天間飛行場の移設先は「国外、少なくとも県外」と粋がってしまい、それが大きなツケとなってはね返ってきた。だが、大綱、中期防の立案過程で防衛力整備の現実を学び日米同盟の真の意義にも気付き、1年遅れにせよ、何とか、策定にこぎつけた。その学習能力を褒めるべきなのか。
◆対中認識などに甘さあり
ただし、大綱は二つの点において甘い。
第一は、安全保障環境の中で、大量破壊兵器と弾道ミサイルや大規模な特殊部隊を保持する北朝鮮の挑発的な軍事行動を挙げたのは当然だとしても、中国に関する認識は生ぬるい。国の文書だから外交的配慮を加えざるを得なかったとしても、だ。急激な高度成長を続ける中国が、国防費を膨張させて軍事力を近代化し、戦力投影能力を強化させるのは大国台頭時の歴史的必然であり、不透明で地域・国際社会の懸念事項とするにとどめたのでは甘すぎる。
問題は、その大国が党独自の軍隊を持つ独裁政権で、経済・外交・軍事上の国際ルールを真摯(しんし)に守らないことだ。このまま経済規模を拡大し、民主化を躊躇(ちゅうちょ)し、貧富の格差是正に回すべき予算を軍事力増強に注ぎ込めば、国として立ち行かなくなり、軍部独走か人民蜂起のいずれかで自壊する可能性すらあると指摘すべきだった。
冷戦期にわが国が潜在的脅威とした極東ソ連軍、とりわけ太平洋艦隊はシーレーン(海上交通路)を守る必要がなく、千島列島を抜けて潜水艦を太平洋に展開させ、ベトナムのカムラン湾に細々と前方展開するだけで、事足りた。
これからの中国は違う。そのうち15億人に達する人口を扶養し経済発展を持続させるのに不可欠なエネルギー資源や食糧を、アフリカや中東から搬入するシーレーンを確保しなければならない。それを国際社会と協調せずに自前で行うため、強大な外洋海軍力を建設するというのが中国の論理だ。
◆高速値下げは無人機より大切か
だが、東南アジア諸国に因果を含めてミャンマーからベンガル湾に出ても、そのころのインド洋には強大になっているであろうインド艦隊が遊弋(ゆうよく)しているはずで、中国もシーレーンは国際的協調下で維持すべきだと気づくだろう。
それまでは、日米豪が協力、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国も協働し、海洋における「力の均衡」を維持する努力を続けなければならない。防衛力を「北から南西へスイング」する真の理由は、そこにこそあるのである。
第二の甘さは「動的防衛力」という大綱のキーワードにある。
政府は予算削減に聖域はないとして、他分野同様、防衛関係費を一律削減するという。陸上自衛隊は地元との関係も考えて全国各地に駐屯しているが、冷戦時代、これらの部隊が固定的に運用されたことはないし、今もそれは変わらない。配置と運用は別物だ。「動的防衛力」という表現は、新しい概念であるかのように装っているだけで、実体は防衛関係費の総額抑制のための方便にすぎない。
筆者は元自衛官ながら、わが国の財政が危機的状況にあるとは十分承知している。だが、政治家には問いたい。休日に国民が一律千円で高速道路をどこまでも遊びに行けるようにするのに巨費を使うことと、その一部を使って南西諸島の偵察に無人偵察機を導入することとどちらが大切か、と。(しかた としゆき)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101228/plc1012280240007-n1.htm
民主党政権下初の「防衛計画の大綱(以下、防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(以下、中期防)」は、激変する一連の戦略環境の中で立案され、最終的に安全保障会議と閣議で決定された。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突、ロシア大統領による北方領土訪問、北朝鮮による韓国砲撃と対抗して行われた米韓合同演習、最大規模となった日米共同統合演習とそれを妨害したロシア機の闖入(ちんにゅう)など、騒然とした中で、大綱と中期防の立案作業は最終段階を迎えた。
同じ時期、国連安全保障理事会は、北朝鮮の核開発阻止をめぐり日米韓と中露の間の意見が折り合わず、「声明」さえ採択できない状況に立ち至った。東西冷戦時代にもなかったような、東アジアの現下の厳しい戦略環境である。
◆評価二分の大綱、中期防
それだけに、今回の大綱、中期防発表は内外の注目するところとなった。評価は二分している。
一つは、こんな難局に直面して練られた防衛戦略にしては、なお危機感不足で、法整備を含む具体化策が掛け声に終始しているという見方である。民主党政権は、冷戦終結後続いてきた防衛力の低下(これは自民党政権の責任)を、少なくともストップすべき役を振られていたにもかかわらず、中期防の予算枠も削減して、南西諸島上空を飛ぶ無人偵察機の導入さえ組み込むことができなかった。
もう一つは、民主党が野党時代にマニフェストや政策集で掲げていた空疎な安保・防衛政策を捨て去り、現実的な責任政党としての自覚を曲がりなりにも持ち得たと一応、評価する捉え方である。
民主党は政権に就いた直後、うれしさのあまり安全保障、防衛分野でも脱自民色を出すべきだと錯覚して、普天間飛行場の移設先は「国外、少なくとも県外」と粋がってしまい、それが大きなツケとなってはね返ってきた。だが、大綱、中期防の立案過程で防衛力整備の現実を学び日米同盟の真の意義にも気付き、1年遅れにせよ、何とか、策定にこぎつけた。その学習能力を褒めるべきなのか。
◆対中認識などに甘さあり
ただし、大綱は二つの点において甘い。
第一は、安全保障環境の中で、大量破壊兵器と弾道ミサイルや大規模な特殊部隊を保持する北朝鮮の挑発的な軍事行動を挙げたのは当然だとしても、中国に関する認識は生ぬるい。国の文書だから外交的配慮を加えざるを得なかったとしても、だ。急激な高度成長を続ける中国が、国防費を膨張させて軍事力を近代化し、戦力投影能力を強化させるのは大国台頭時の歴史的必然であり、不透明で地域・国際社会の懸念事項とするにとどめたのでは甘すぎる。
問題は、その大国が党独自の軍隊を持つ独裁政権で、経済・外交・軍事上の国際ルールを真摯(しんし)に守らないことだ。このまま経済規模を拡大し、民主化を躊躇(ちゅうちょ)し、貧富の格差是正に回すべき予算を軍事力増強に注ぎ込めば、国として立ち行かなくなり、軍部独走か人民蜂起のいずれかで自壊する可能性すらあると指摘すべきだった。
冷戦期にわが国が潜在的脅威とした極東ソ連軍、とりわけ太平洋艦隊はシーレーン(海上交通路)を守る必要がなく、千島列島を抜けて潜水艦を太平洋に展開させ、ベトナムのカムラン湾に細々と前方展開するだけで、事足りた。
これからの中国は違う。そのうち15億人に達する人口を扶養し経済発展を持続させるのに不可欠なエネルギー資源や食糧を、アフリカや中東から搬入するシーレーンを確保しなければならない。それを国際社会と協調せずに自前で行うため、強大な外洋海軍力を建設するというのが中国の論理だ。
◆高速値下げは無人機より大切か
だが、東南アジア諸国に因果を含めてミャンマーからベンガル湾に出ても、そのころのインド洋には強大になっているであろうインド艦隊が遊弋(ゆうよく)しているはずで、中国もシーレーンは国際的協調下で維持すべきだと気づくだろう。
それまでは、日米豪が協力、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国も協働し、海洋における「力の均衡」を維持する努力を続けなければならない。防衛力を「北から南西へスイング」する真の理由は、そこにこそあるのである。
第二の甘さは「動的防衛力」という大綱のキーワードにある。
政府は予算削減に聖域はないとして、他分野同様、防衛関係費を一律削減するという。陸上自衛隊は地元との関係も考えて全国各地に駐屯しているが、冷戦時代、これらの部隊が固定的に運用されたことはないし、今もそれは変わらない。配置と運用は別物だ。「動的防衛力」という表現は、新しい概念であるかのように装っているだけで、実体は防衛関係費の総額抑制のための方便にすぎない。
筆者は元自衛官ながら、わが国の財政が危機的状況にあるとは十分承知している。だが、政治家には問いたい。休日に国民が一律千円で高速道路をどこまでも遊びに行けるようにするのに巨費を使うことと、その一部を使って南西諸島の偵察に無人偵察機を導入することとどちらが大切か、と。(しかた としゆき)
参考ブログ
■軍事評論家=佐藤守のブログ日記 ■新防衛大綱=軍縮大綱!
http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20101217