昨年チェニジアで起きたジャスミン革命からエジプト、リビアなどに飛び火した革命は、民衆の経済的不満から起きた反政府運動ではあったが、「民主革命」ではなかった。
これら中東の国々は、政教一致で民主主義にはなじまいという。
イランは昨年末、ホルムズ海峡の封鎖をほのめかして、欧米の経済制裁に対抗しようとしている。
イラン対イスラエルの地域戦争は、核の使用だけはやめてもらいたいものだ。
これら中東の国々は、政教一致で民主主義にはなじまいという。
■「加瀬英明のコラム」メールマガジン より
http://www.kase-hideaki.co.jp/magbbs/magbbs.cgi
送信日 : 2012/01/12 (Thu)
題 名 : 民主化にはつながらない イスラム圏の「アラブの春」
中東が世界の安定を、激しく揺さぶる震源地になってゆく可能性が高い。
チュニジアの“ジャスミン革命”によってベン・アリ長期独裁政権が倒れ、エジプトに飛び火した。リビアでも、カダフィ大佐による42年にわたった独裁体制が崩壊した。イエメンでも独裁者だった、サーハレ大統領が追われた。危機がバーレインや、シリアにも拡がっている。
欧米のマスコミは「アラブの春」とか、「アラブ民主革命」といって、さかんに喝采した。日本の新聞やテレビも、追従した。
私は「民主革命」と呼んで、囃し立てるのは誤っており、中東はアラブの民衆にとっても、先進諸国にとっても、状況が革命前よりもかえって悪くなるだろうと、予見した。
アラブ世界では独裁体制が、イスラム原理主義を敵視して弾圧していた。これらの独裁体制は、みな宗教色が薄い世俗的な政権だった。
イスラム原理主義は、イスラム教が7世紀に生まれた時の厳しい戒律そのままの政治を行おうとするものだが、今日のイランがそうである。アフガニスタンがタリバン政権のものにあった間も、そうだった。
いま、アラブ世界において世俗主義と、イスラムとの間の戦いの幕があがった。
“民衆革命”後に、チュニジアと、12月にエジプトで行われた自由な選挙では、イスラム原理主義政党が合法化されたために、最多議席を獲得した。11月のモロッコで行われた選挙も、同じことだった。
リビアでは、カダフィ政権が国民に、多くの恩恵をおよぼした。石油収入を使って1人当たり国民所得が大きく伸び、教育水準が向上し、女性が解放されて社会進出が促された。カダフィ政権は140以上の部族に分かれて抗争していた国を、1つにまとめていた。
エジプトは最大のアラブ国家である。アラブ世界でもっとも大きな影響力を持っている。
オバマ政権はムバラク政権のエジプトが、アメリカが中東におけるもっとも信頼する盟邦だったのにもかかわらず、「民主革命」がエジプトに波及すると、エジプトの「民主化」が望ましいといって見放した。
エジプトは1952年に陸軍のナセル中佐がクーデターによって王制を倒した後に、昨年まで一貫して軍事政権のもとにあった。軍部はムバラク政権が倒れると、最高評議会をつくって、新憲法の制定のよって民政に移管するまでといって、暫定的に権力を掌握しているが、まだ実権を手放すのを躊躇している。
これまで、中東からイランまでイスラム圏には、民主主義国が1つとして存在してない。
もともとイスラム教は、宗教と政治が一致した政治を行うことを定めており、宗教権威に絶対に服従することを求めている。東南アジアの“南洋型”のイスラム諸国を例外にして、イスラム教は民主主義になじまない。
“アラブの春”は民衆の経済的な不満から起ったもので、民主主義とかかわりがない。“アラブの春”が、〃イスラムの春〃になろうとしている。
2012年に、イスラエルがイランの核施設を除去するために、攻撃を加える可能性が相当に高い。そうなれば、地域戦争が起ろう。
イスラエルはイランが核兵器を手にしたら、民族絶滅の危機に直面すると判断している。ユダヤ民族はナチス・ドイツによる“ホロコースト”を、生々しく記憶している。
サウジアラビアはイランの宿敵であるから、イスラエルの行動を暗黙に支持するとみられる。サウジアラビアはアメリカがムバラク政権を裏切ったために、アメリカに憤っている。
中東ではイスラム教主流のスンニー派と、傍系のシーア派の抗争が激化している。両派は歴史を通じて、犬猿の仲だ。イランはイスラム圏で唯一つのシーアの大国であって、サウジアラビアをはじめとするスンニー諸国によって、恐れられている。
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加瀬英明事務所
お問い合わせメール: info@kase-hideaki.co.jp
ホームページURL: http://www.kase-hideaki.co.jp/
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題 名 : 民主化にはつながらない イスラム圏の「アラブの春」
中東が世界の安定を、激しく揺さぶる震源地になってゆく可能性が高い。
チュニジアの“ジャスミン革命”によってベン・アリ長期独裁政権が倒れ、エジプトに飛び火した。リビアでも、カダフィ大佐による42年にわたった独裁体制が崩壊した。イエメンでも独裁者だった、サーハレ大統領が追われた。危機がバーレインや、シリアにも拡がっている。
欧米のマスコミは「アラブの春」とか、「アラブ民主革命」といって、さかんに喝采した。日本の新聞やテレビも、追従した。
私は「民主革命」と呼んで、囃し立てるのは誤っており、中東はアラブの民衆にとっても、先進諸国にとっても、状況が革命前よりもかえって悪くなるだろうと、予見した。
アラブ世界では独裁体制が、イスラム原理主義を敵視して弾圧していた。これらの独裁体制は、みな宗教色が薄い世俗的な政権だった。
イスラム原理主義は、イスラム教が7世紀に生まれた時の厳しい戒律そのままの政治を行おうとするものだが、今日のイランがそうである。アフガニスタンがタリバン政権のものにあった間も、そうだった。
いま、アラブ世界において世俗主義と、イスラムとの間の戦いの幕があがった。
“民衆革命”後に、チュニジアと、12月にエジプトで行われた自由な選挙では、イスラム原理主義政党が合法化されたために、最多議席を獲得した。11月のモロッコで行われた選挙も、同じことだった。
リビアでは、カダフィ政権が国民に、多くの恩恵をおよぼした。石油収入を使って1人当たり国民所得が大きく伸び、教育水準が向上し、女性が解放されて社会進出が促された。カダフィ政権は140以上の部族に分かれて抗争していた国を、1つにまとめていた。
エジプトは最大のアラブ国家である。アラブ世界でもっとも大きな影響力を持っている。
オバマ政権はムバラク政権のエジプトが、アメリカが中東におけるもっとも信頼する盟邦だったのにもかかわらず、「民主革命」がエジプトに波及すると、エジプトの「民主化」が望ましいといって見放した。
エジプトは1952年に陸軍のナセル中佐がクーデターによって王制を倒した後に、昨年まで一貫して軍事政権のもとにあった。軍部はムバラク政権が倒れると、最高評議会をつくって、新憲法の制定のよって民政に移管するまでといって、暫定的に権力を掌握しているが、まだ実権を手放すのを躊躇している。
これまで、中東からイランまでイスラム圏には、民主主義国が1つとして存在してない。
もともとイスラム教は、宗教と政治が一致した政治を行うことを定めており、宗教権威に絶対に服従することを求めている。東南アジアの“南洋型”のイスラム諸国を例外にして、イスラム教は民主主義になじまない。
“アラブの春”は民衆の経済的な不満から起ったもので、民主主義とかかわりがない。“アラブの春”が、〃イスラムの春〃になろうとしている。
2012年に、イスラエルがイランの核施設を除去するために、攻撃を加える可能性が相当に高い。そうなれば、地域戦争が起ろう。
イスラエルはイランが核兵器を手にしたら、民族絶滅の危機に直面すると判断している。ユダヤ民族はナチス・ドイツによる“ホロコースト”を、生々しく記憶している。
サウジアラビアはイランの宿敵であるから、イスラエルの行動を暗黙に支持するとみられる。サウジアラビアはアメリカがムバラク政権を裏切ったために、アメリカに憤っている。
中東ではイスラム教主流のスンニー派と、傍系のシーア派の抗争が激化している。両派は歴史を通じて、犬猿の仲だ。イランはイスラム圏で唯一つのシーアの大国であって、サウジアラビアをはじめとするスンニー諸国によって、恐れられている。
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イラン対イスラエルの地域戦争は、核の使用だけはやめてもらいたいものだ。