落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

台湾総統選挙・結果論評

2012年01月16日 | 政治・外交
豊かな社会がもたらす”愚民化“
頂門の一針 2493号  12・1・15(日)メルマガより
http://www.melma.com/backnumber_108241/
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/2569265/

東郷 勇策

台湾の総統選挙は現職、馬英九総統の再選という結果に終りました。か なりの接戦、場合によっては野党、民政党の主席、蔡文英候補の勝利も あり得ると報道されていましたが、結果は約79万票もの大差(14日21時 現在)となりました。

台湾国民の判断ですから異国の民が異を唱えることは慎むべきでしょう が、正直なところ、落胆しました。

台湾国家の国益、国民の自己保全を考える時、最大の危険因子は中華人 民共和国による併呑であるのは自明であり、その事態を防止すべく備え ることこそが、台湾の国家・人民の自存自衛の根幹の筈です。

支那に傾斜して脇が甘くなった国民党政権に続投を許すことは、その根 幹を蔑ろにした、或いは忘れた、愚民の選択ではないでしょうか。国民 全体として、経済的誘惑に負けて現世の利益に靡いたことになり、これ では、台湾併呑を目論む支那の共産党一党独裁政権に誤ったシグナルを 送ったことになります。

台湾国民は民主主義体制の下で自由をそして繁栄を満喫しているのです から、基本的人権を無視し自由を抑圧する独裁政権の統治下に入ること を望み支那による併呑を是とする人々は、支那系と雖も、極少数だと思 われるのですが、実に危険極まりない選択をしてしまいました。少し冷 静に少し深く考えることができれば、最初に排除されるべき選択です。

支那が近い将来に本気で併呑に動くことはあるまい、危険が切迫すれば その時は別の選択だ、とタカを括り、根幹を見ずして私利私欲を優先し ているのでしょうが、気付いた時は手遅れとなることが案じられます。

両岸の交流が更に拡大し、共産党一党独裁政権の抑圧体制に対する警戒 感が薄れることは、内堀までも埋められた状態と言え、最早なす術は無 くなり、併呑は時間の問題となると信じます。

アメリカが、支那との核戦争の危険を冒してまで台湾防衛や我が国のシ ーレーン防衛に動く姿は、とても考えられないのです。

支那の台湾併呑が我が国に及ぼす深刻な影響も大きな問題ですが、それ は別として台湾人民の行く末を考える時、彼らが激しく後悔し慟哭する 姿が容易に想像され、哀れに思えてなりません。

世界を見渡すと、全体として人類史上最も豊かな社会が構成され、その 維持こそが優先され、結果として公の心が希薄化・・・というのが共通 した現象のようです。

関心が個に偏って向けられる社会では、大局を俯瞰する姿勢や深い思考 が忘れられ、愚民が溢れてきます。我が民族だけは例外だと思いたいの ですが、残念ながら既に他民族と大同小異の状態となっており、何処も 同じかと嘆息せざるを得ません。

地球が狭くなり、良きにつけ悪しきにつけ瞬時に影響を及ぼし合う時代 ゆえ、愚民化の波に歯止めをかけることすら容易ではないでしょうが、 このままでは、我々が向かう将来は日本国が衰退し消滅する日であり、 更に究極的には地球そのものの終焉の日である、と思われてなりません。
そっくり日本人にもあてはまるのではないだろうか。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第49号(1月15日)メルマガより
http://www.melma.com/backnumber_190875/

台湾は併合されるのか?

 昨日の台湾総統選は独立派の女性候補が敗れ、親中派の現職の続投が決まった。昨年末においては独立派優位であったが、中国の露骨な選挙干渉が功を奏し逆転した。問題は、米国が民主主義の危機とも言える中国の干渉を黙認した点だ。
 実は米国の黙認は単なる気紛れや怠慢ではなく、巧妙に仕組まれた戦略に基づいている。昨年10月、米誌フォーリン・ポリシーにヒラリー・クリントン米国務長官の論文”America’s Pacific Century”が掲載された。日本の新聞ではこの題名を「米国のアジア太平洋戦略」と訳したりして紹介していたが、注目度は低くこの論文の持つ戦略的意味を正しく伝えていたとは言い難い。

 同月下旬、米国防長官レオン・パネッタはインドネシアにF16戦闘機20数機の供与を表明し、翌11月16日、オバマ大統領は豪州への米海兵隊駐留を表明した。そしてその3日後、インドネシアのバリ島で開かれた東アジア・サミットで、中国は南シナ海への海軍進出の断念に追い込まれた。
 日本の一部メディアが「米国による対中包囲戦略の成功だ」と喧伝し「日本もTPPに参加して対中包囲網形成に協力せよ」などと大騒ぎしたのは、この頃の事だ。
 だがその4日後の11月23日、中国艦隊6隻が東シナ海から日本の琉球列島を横切って太平洋に入った事実を日本の多くのメディアは見落とした。この日は日本の玄葉外相が訪中した当日であり、中国海軍のこの行動には政治的メッセージが込められているのは明白である。

 今までも中国海軍は琉球列島を横切っており、その暗示する所は尖閣のみならず沖縄を含む琉球列島が中国領であるという隠れた主張であった。だが東アジア・サミットの4日後の横断の意味する所はそれだけではない。中国海軍は南シナ海では封じ込められたけれども、東シナ海では封じ込められていないという意思表示なのである。つまり対中包囲は成功していない。

 ヒラリー論文では、アジアというとき東アジアや北東アジアより南アジアや東南アジアに重点が置かれており、太平洋というときも東太平洋よりも南太平洋に重点が置かれているが、この意味はその後の米中の動きから理解できるだろう。東アジア・サミットで決まったのは中国の封じ込めではなく、米中による南シナ海と東シナ海の交換取引だったのだ。

 東アジア・サミットで、中国の温家宝首相はオバマ大統領に特別に会談を申し込んだ。会談の内容は不明だが、東アジア・サミットでの議題について中国が米国に直接何らかの確認を求めたに違いなく、そうだとすればそれは2カ月後に迫った台湾総統選だっただろう。

 東シナ海が中国の権益下に置かれるとするなら、東シナ海と南シナ海の間にある台湾の位置付けは当然問題となる。台湾が中国の権益下に置かれる事を米国が認めるならば、米国は台湾総統選に干渉すべきでないし、それは必然的に中国の台湾への選挙干渉を米国が黙認することになる。

 かくして今回の台湾総統選の結果は、米国が台湾を中国に売り渡した事を立証した。今後、中国による台湾統一工作は着々と進み、数年後には併合されるかもしれない。もし中国が台湾を併合すれば、そこに海軍と空軍の基地を作る事は間違いない。
 米国としては、台湾と眼と鼻の先にある沖縄の米軍基地を維持するのに危険を感ずるようになるだろう。沖縄から撤退するとなれば、その他の在日米軍基地を維持し続ける利点が失われるから結局、在日米軍の撤退につながるだろう。
 今回の選挙の意味合いは日本にとっても大きいのである。
米中の思惑、それは自分の国益。狭間の日本はどうするか。属国根性でない答えがほしい。