落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

安保法案可決・米中の反応

2015年07月18日 | 政治・外交
安保法案が衆院を通過し参院に送られた。
雨の中、国会周辺では反対デモが行われたという。賛成デモもあったのに、そちらは一向に報道されなかったとか。
米中の日本語版の報道
■CNN
日本の安保関連法案、衆院で可決 参院へ 東京(CNN)2015.07.17 Fri posted at 12:15 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35067546.html

日本の衆議院は16日、安全保障関連法案を可決した。この法案が成立すれば、日本は海外で起きた武力紛争において今よりも踏み込んだ役割を担うことが可能になる。
大雨のなか、国会議事堂の周囲には法案に反対する数千人が集まった。

安倍首相が推すこの法案の採決を複数の野党が欠席した。法案は連立与党が過半数を占める参院に送られる。
安倍首相は、米国の同盟国である日本が軍事上、より積極的な役割を果たすことが可能になるように動いてきた。昨年には第2次世界大戦後に制定された平和憲法の解釈を変更し、国民からの反発が広がった。
今回の法案は、自衛隊が海外での紛争で同盟国の一員として、限定された役割を果たすことを認めるものとなる。

米国は安倍首相の動きを支持している。
米国務省のカービー報道官は「同盟を強化し、地域的、国際的な安全保障活動でさらに積極的な役割を果たそうとする日本の継続的な努力をわれわれは歓迎する」と述べた。
両国は4月には「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を改定。ガイドラインでは攻撃を受けた同盟国を日本が守ることが可能だとしている。

だが日本の国民の間からは、同盟国が起こした戦争に巻き込まれ、自衛隊員や一般市民を危険にさらす可能性があるとの懸念が聞かれ、世界的に有名なアニメ映画監督の宮崎駿氏ら著名人からも批判の声が上がっている。
野党・民主党の藤田幸久参院議員はCNNに対し、日本の国民や国家のイメージ、外交国家としての見られ方を損う結果になると語った。
中国や韓国も、日本の軍事的立場の変化に懸念を表明している。

■人民日報
安倍内閣が安保法案を強行採決、降りかかる無限の災い
週刊!深読み『ニッポン』」第81回人民網日本語版 2015年07月17日15:46
http://j.people.com.cn/n/2015/0717/c94474-8922248.html (全文転載は不可につき、キーワードのみ)
○有事があれば、徴兵が行われ戦場に送り込まれる
○「普通の国家」に向けた歩みが加速する
 (普通の国家とは)西洋の大国のように正々堂々と軍隊を持ち、強大な軍事影響力を顕示すること
○集団的自衛権の行使を言いがかりに、軍事的影響力を拡大させようというのが、日本の真の目的である
○日本が第二次大戦の侵略の歴史を水に流そうとし続けるなら、日本の常任理事国入りは、いつまでも実現できない
○悪魔を瓶に閉じ込めた国--米国が今、悪魔が瓶から逃げるのを黙認している
日本は「普通の国家になる」と云ってくれたが、「悪魔」でもある!?
えらく買いかぶられたもの。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成27年(2015)7月18日(土曜日)通算第4606号 http://melma.com/backnumber_45206/

李克強首相が「安倍密使」の谷内局長と異例の面談
ついに強欲凶暴な中国が日本に再度、近寄る必要に迫られたのだ


安保法案は衆議院と通過した。弐ヶ月後、成立する運びとなる。
 中国は静かに反対の態度を表してはいるものの、いつものような絶対反対の絶叫はなく、軍国主義復活などと無謀な宣伝文句もが見られない。不思議である。
 なにかの予兆を示唆している。

 香港の『サウスチャイナ・モーニングポスト』などは「日本の法律改正は戦争の機会を増大させたと中国専門家が分析」などセンセーショナルは報道だったが、南シナ海の中国軍の蛮行を前になにをほざくかという印象である。
 日中間のささくれだった空気は中国が一方的に醸成したもので、東シナ海にガス井建設の無鉄砲から、さらにエスカレートして尖閣諸島周辺へ中国海監の艦船が出没して領海侵犯を繰り返し、小笠原諸島近海からは赤珊瑚をごっそり盗んでいった。
 劉空侵犯による自衛隊のスクランブル出動も年初来110回以上である。

 日本が尖閣諸島の国有化をなすと、言いがかりを付けての反日暴動とやりたい放題。すっかり嫌気がさした日本企業がどっと撤退をはじめ、「チャイナ・プラス・ワン」の合い言葉の元、アセアン諸国からインドへの進出を加速させた。

 賃金高騰により「世界の工場」ではなくなった中国は輸出に支えられて高度成長を遂げてきたのに、国有工場で生産した品物は売れ残り、在庫の山が各地でみられ、暴動も頻発し、社会不安が拡大した。
こうした環境の下で、海外からの直接投資が激減しては経済が立ちゆかなくなる。ドイツと韓国以外、中国に投資を増加させた国はない。

苦肉の策として在庫処分と中国企業の海外でのビジネス拡大を目的としてAIIBに、信用格付けの問題から、どうしても日本に加盟して欲しかったが、日本はすげなく、鳴り物入りの銀行の船出となった6月26日の「署名式」では7ヶ国が署名しなかった。

 そして上海株暴落が開始された。中国は焦りだした。

 ▲中国は本格的に焦っているのだ
華夷秩序のフォロアーと思っていたフィリピン、ベトナムが鮮やかに反旗を翻し、シャングリラ対話では米国から名指しの非難を受け、四面楚歌の状態にあることを中国はやっとこさ認識できた。
 14年11月の北京APECでは安倍首相と会談した習近平のよそよそしい態度が際立ったが、15年4月のインドネシア会議を利用しての日中首脳会談は、むしろ中国側から呼びかけてきた。
習は気味悪いほどに、にこにこ笑っていた。
 そして5月、自民党の二階総務会長は安倍親書を携えて訪中した。三千人の人民大会堂での夕食会に、習近平が忽然と現れ、日中友好は子々孫々までと、あっと驚くようなおべんちゃらをのうのうと言ってのけた。

 こうした変化を背景に、安倍密使として谷内安全保障局長が密かに北京入りした。
 7月16日に中国外交を司る楊潔チ国務委員(前外相)と五時間以上も会談した。これにより九月初旬の安倍訪中に関しての事前調整の大筋がみえてきた。
 そして17日、李克勝首相と谷内は35分間会談した。政治家でもない政府高官と首相がじきじきに会談するのは異例のことである。
それだけ中国は日本に秋波を送りたいのである。いや、日本に近づかなければ行けない事情が国内にあるからだ。

 記者会見によれば、罨法法案、安倍談話などの話はまったく出なかったというが、他に喫緊の議題はない。要はこれで九月初旬の安倍訪中の段取りが殆ど決まったとみて良いだろう。
安保法案は「戦争法案」と野党や大方のメディアは云ったが、云うなら「戦争抑止法案」と云うべきだろう。