[AC通信:No.599 Andy Chang (2016/07/07)
http://www.melma.com/backnumber_53999
ヒラリー不起訴 アメリカ死ね
7月5日朝、FBI長官コーメィ(James Comey)はヒラリーのメール調
査報告で、ヒラリーの数々の違法行為を列挙し、「きわめて不注意
(Extremely careless)だった」と糾弾しながら最後の結論において
「ヒラリーが法を知りながら故意に罪を犯した証拠は挙がらなかっ
た。よってどの検察官も彼女を立件できない」と述べたあと、記者
の質問に答えず退場した。15分後に誰かがインタネットで「アメリ
カ死ね」とツイートした。
発表後からすぐにこの不起訴決定に不信、不満足、抗議が押し寄せ、
メディアはこのことで持ち切り、しかも決定に不満が100%である。
6日午後、リンチ(Loretta Lynch)司法長官は「FBI長官の結論でヒ
ラリーの調査は打ち切る」と発表した。そして本日7日、国会はコ
ーメィ長官を喚問した。国会も国民もFBIの報告に失望しているの
でヒラリーの不起訴討論は11月の選挙まで続くだろう。
FBI長官の発表の数日前にリンチ司法部長とビル・クリントンが「偶
然の出会い」の密室会見をした事件があり、ヒラリー不起訴はすべ
てオバマ政権の作ったシナリオ通りと言われている。
●FBI長官報告の概略
コーメィ長官の列挙したヒラリーの違法行為は簡単に説明すると以
下のようである:
1 ヒラリーは国務省の許可を得ず複数の私有スマホを使用し、国
外でも機密保持のない私有スマホで通信していた(ヒラリーは個人
スマホを一つしか使っていないと公言、誓言した)。
2 ヒラリーは国務省の許可を得ず、複数のクリントン家専用のサ
ーバーにすべての通信データを残し、このうちの55000通の通信を
提出したが、国務省の許可なく勝手に32000通のデータを消去した。
データの消去は弁護士が全てをチェックしたとウソをついた。だが
弁護士は「機密マークのあるなし」を調べただけだったと言う。ヒ
ラリーはメールの送受信に機密メールの記号はついていなかったと
強調した。しかし機密マークの付いたメールが3通発見された。弁
護士は機密扱い許可を持っていない。
3 FBIの調査したメールの結果とは2014年に国務省が提供したヒ
ラリーの3万通のメールを調査した結果である。ところがFBIの調
査したメールのなかに110通のトップシークレット(Top Secret)
メールが発見され、その他にも複数の敏感(Confidential)メール
も見つかった。更に2000通のメールは機密データを程度の低い敏感
に変更したものがあった。許可なしで変更したのか。
4 調査したメールのうち、ヒラリーが勝手に消去したメールを国
務省以外の機関から取得したのもある。ヒラリーが提出しなかった
メールでほかの機関から取得できなかったメールもまだあるはず。
5 メールに機密記号が付いていたかどうかではなく、他の機関か
ら送られてきたメールは、ヒラリーの地位(国務長官)からみてトッ
プシークレットかどうか判別できるはずだ。ヒラリーは送受信した
メールに機密記号はついていなかったと弁明したが事実として機密
記号の付いたメールもあった。たとえメールに記号がなくてもヒラ
リーは機密かどうか判別できるはずだった。
6 この調査で分かったことは国務省が機密メールの取り扱いに極
めて杜撰であることだった。
7 ヒラリーのサーバーは機密扱い許可がないためハッカーに侵入
された可能性がある。しかもヒラリーは国外に居た時の送受信にも
機密性のないスマホを使っていた。ハッカーが機密データを取得し
た証拠は発見されなかった。
8 これらの事実が分かったにも拘らず、ヒラリーが「明らかに意
図して、違法と知って法を無視した」、「意図して法を犯した」、また
は「国家に危害を与える行動をとった」ことは証明できなかった。
9 ヒラリーの行いは「きわめて不注意(Extremely careless)]であ
ったが、違法を知って故意に行った証拠はなかった。そういうわけ
で、いかなる検察官も彼女を立件、起訴は出来ないと判断したので
ある。以上が結論である。
●リンチ司法部長とビル・クリントンの秘密会見
コーメィ長官の発表に先立つ6月28日、ビル・クリントン元大統領
はアリゾナ州フェニックスの空港で「偶然の出会い」と称する秘密
会見をした。
クリントンの飛行機がフェニックス空港に着陸しクリントンが地上
におりたあと、まもなくリンチ司法部長の飛行機が到着して、二人
は「偶然の出会い」で握手し、二人はリンチの飛行機に乗り込んで
39分の会話をした。機内に入る前にリンチ部長は護衛に対し、「機
内に入るな、写真を撮るな」と命令した。会見の後彼女は新聞記者
の質問に答えて「ただの日常会話、孫の話やゴルフの話」と説明し
たが、二人で39分も日常会話をしたなんて誰も信用しない。
メディアの批判が激しかったのでリンチ部長は、ヒラリーの調査結
果はFBIの調査結果を見てから決めると述べた。そのようなことが
あって、5日にFBI長官がヒラリー不起訴としたから、リンチ部長
は6日の午後、「ヒラリーの調査は終了した」と発表した。
だからこの一連の事実を繋ぎ合わせてあるシナリオがあったと言う
人もいる。つまり、リンチ司法部長とクリントンの秘密会見→FBI
長官のヒラリー不起訴処分発表→司法部長のヒラリーの調査終結、
この繋がりに疑問を感じない人はいないだろう。但しFBI長官は、
「誰からも何処からも圧力を受けなかった」と国会喚問で誓った。
●国会でFBI長官コーメィを喚問
7日の朝、国会はコーメィ長官を国会喚問した。コーメィ長官は5
日の発表の通り、誰からも圧力を受けていないと宣誓し、ヒラリー
不起訴は調査の結果からヒラリーが法を知りながら違法行為を犯し
た証拠は立件できないと強調した。しかし国会議員は信じなかった。
ガウディ議員は記者に次のように述べた。個人スマホの使用、複数
のスマホ、複数のサーバー、データの改竄と消去、機密メールの存
在など、すべてヒラリーの決定である。そして彼女はウソの弁明を
繰り返した。明らかに違法と知って法を犯した証拠である。
ギングリッチ元国会議長も記者の質問に対し次のように述べた。ヒ
ラリーは8年の大統領夫人、4年の上院議員と4年の国務長官の経
歴を持つ法を知り尽くした人である。ヒラリーが機密とは何か、違
法とは何かも知らなかった、だから「極めて不注意だった」と言う
FBI長官の結論は不当だ。このような経歴の持ち主が本当に法を知
らなかったならこんな人物が大統領になれるはずもない。
ライアン国会議長は7日、ヒラリーの機密扱い許可を廃止すべしと
言う申請書を提出した。機密扱い許可がなければ大統領になれない。
ライアンは「最低限度、今から11月の選挙までヒラリーの機密扱い
許可を廃止すべきだ」と述べた。
ヒラリーの選挙本部は不起訴処分で立候補は確実と喜んだが、民意
調査ではヒラリー不利となった。トランプの人気が下落したのでこ
の二週間ほどヒラリーがリードしていたのに、FBIの発表のあとヒ
ラリーの人気は落ちてトランプと同じ40%以下になった。
つまり二人とも大統領に不適任である。ヒラリーとトランプ、二人
とも「大統領になる資格」が26%。アメリカにはこんな人物しかい
ないのか。まさに「アメリカ死ね」である。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成28年(2016)7月6日(水曜日)通算第4956号
http://melma.com/backnumber_45206/
クリントン、最大のピンチを切り抜けた
FBI、個人メール問題で訴追を断念
ニクソン大統領をするどく弾劾し、辞任に追い込んだのは米国の左翼ジャーナリズムだった。
「デープスロート」などと、内部告発者を英雄視し、情報のリークという醜聞は不問に付され、とうとうニクソンは大統領職をフォードに譲ってホワイトハウスを去った。
ささいな事件なのに、執拗に追求し、なにしろニクソンを追い込むことに熱心だった米国のメディアだが、一転して民主党となると、追求の手を緩め、問題の核心をぼかし、有耶無耶にしてしまう。
ヒラリー・クリントンの嘘は明らかだが、まったくウォーターゲートと対照的に、この「ベンガジゲート」では真相究明に不熱心。この傾向をよむ議員らは、議会聴聞会でも、共和党の質問を妨害、この偏向たるや、いかんともしがたい。
そういえば夫君ビル・クリントンの「モニカ・ルインスキー事件」でも、偽証を追求せず、有耶無耶に片付けた。
主導したのは左翼ジャーナリズムだったことを思い出す。
ベンガジ事件でヒラリーはFBIの聴聞に応じ、三時間半の取り調べを受けた。「結局、新しい証拠は出ず、FBIは訴追をあきらめた。
これでヒラリーは最大のピンチから脱出した。
ロシアのプラウダ(英語版、6月29日号)は、「2012年9月11日のベンガジにおける米大使殺害は、煎じ詰めて言えばヒラリーの責任であり、真相をしる軍事関係者は、事件発生から六ヶ月以内にひとりの提督と六人の将軍が辞任している。ヒラリーが大使を殺したも同然だ」と手厳しく書いた。