落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

トルコ・クーデター未遂、その後

2016年07月20日 | 政治・外交
トルコは民主主義、三権分立体制の国。
・・・
1982年に定められた現行の憲法では、世俗主義が標榜されている。
三権はほとんど完全に分立しており、憲法の目的(世俗主義、他)を達成するためにそれぞれの役割を果たすことが期待されている。
このことが、世俗派と宗教的保守派との対立を助長し、その対決が終息しない遠因ともなっている。
立法府として一院制のトルコ大国民議会(Türkiye Büyük Millet Meclisi、定数550名、任期5年)がある。
行政は議会によって選出される国家元首の大統領(任期7年)が務めるが、首相の権限が強い議院内閣制に基づいている。・・・(Wikipedia)

だが、クーデター未遂後、政府が粛正を強めているという。
トルコ粛清拡大、教育関係者1.5万人停職 24報道機関の免許剥奪
2016年07月20日 11:44 発信地:イスタンブール/トルコ
http://www.afpbb.com/articles/-/3094550?cx_part=topstory

写真:
×クーデター未遂の際に爆撃されたトルコの首都アンカラの警察本部で、窓にうがたれた穴からのぞいたトルコ共和国建国の父スタファ・ケマル・アタチュルクの像(2016年7月19日撮影)。(c)AFP/DIMITAR DILKOFF

【7月20日 AFP】トルコ政府は19日、クーデター未遂後に進めている粛清をさらに強化し、その対象を学校や報道機関にまで広げた。政府が事件の黒幕とみなす米在住のイスラム教指導者、フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師の支持者らの一掃に向けた決意の表れとみられる。15日の事件発生後、拘束された軍や警察、司法関係者らは9000人近くに達しており、国際社会は政府による報復行為を懸念する声を強めている。

 政府はレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領の最大の政敵であるギュレン師のネットワークを「フェトフッラー派テロ組織(FETO)」と呼んでいる。19日にはFETOへの関与が疑われるとして教育部門の国家公務員1万5200人の職務を停止したほか、私立および公立大学の1600人近い学長らに対して辞職を要求した。

 政府はさらに、ギュレン派と関わりがあるとされるラジオ局やテレビ局の放送免許取り消しにも踏み切った。国営アナトリア(Anadolu)通信によると24の報道機関が免許を剥奪され、ジャーナリスト34人が取材許可証を没収されたという。

 一方、ビナリ・ユルドゥルム(Binali Yildirim)首相は米側に文書を送り、ギュレン師の身柄引き渡しを正式に求めたと発表した。
 ギュレン師は米ペンシルベニア(Pennsylvania)州に暮らしているが、現在もトルコ国内のメディアや金融業界、教育機関などと関わりを持ち続けており、法曹界や警察をはじめさまざまな部門で影響力を誇っている。
(c)AFP/Fulya Ozerkan and Raziye Akkoc with Stuart Williams in Ankara

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成28年(2016)7月21日(木曜日) 通算第4968号  <前日発行>
http://melma.com/backnumber_45206/

トルコの強権政治化に欧米が懸念、ロシアは別な意味で警戒
3万3000名の公務員を追放とは「異常な事態」が進行している


 結局、トルコの「独裁者」となりつつあるエルドアンの目的は何か?
 オスマントルコ帝国を復活させ、自らがカリフになろうとしているとすれば、ライバルのギュラン師とその関係者すべての追い落としを画策するのは、政治闘争の常套手段として理解できる。熾烈な権力闘争の本質とは、そうしたものだから。

 マルマラ島のリゾートホテルを襲撃した武装ヘリ二機に分乗した特殊部隊25名が、その後、ヘリコプターともども行方不明になっているとトルコの新聞が伝えた。
 隊員達は結果的にもぬけの殻となったホテルを襲ったのだが「テロリストが潜伏している」という情報を受けていたとする説もある。

 またクーデタ直前まで黒海を遊弋していたトルコ海軍の艦船14隻が、現在所在不明となっていると『アジアタイムズ』が伝えている(7月19日)。こんかいのクーデタ未遂事件に海軍の関与は報じられていない。
 陸軍は南東のシリア国境に展開している部隊から5000の兵士をアンカラに移送させようとしていた。

 テレビ局をクーデター側が占領し、番組を中断させて戒厳令を命じたのに、町には「市民」がでて抵抗した。
 まさか、ソーシャルメディアが、これほど反撃に効果的であったとは。

エルドアン大統領は軍人、司法関係7543名、警官8777名、財務省職員1500名の拘束、追放をはかったというが、さらに教育委員会に命じて大学学長、学部長クラス1557名の辞職勧告をするように指示した。

 過剰な拘束、証拠不十分な基礎は人権問題として、欧米はクーデターそのものを批判するものの、その後の、エルドアンの過剰な行為には警告を発している。
死刑の復活など、「民主主義のルールを逸脱している。人権問題になる恐れがある」としている。この論点では欧米は一致している。

 このチャンスを逆利用し始めたのがロシアのようだ。
 トルコ滞在中だったロシア人の観光客は450000人。トルコが治安悪化、政情不安となってドイツ人観光客が激減し、その空隙をロシアが埋めていた。ロシアのトルコ観光客は75%の増加を示していた。

 ▼ロシアとトルコは地政学上の宿敵であるはずだが。。。。。。。

 ロシアの論調を読んでいると、―
 米国はトルコのNATOメンバー資格を疑い始めた
 ドイツはエルドアン独裁を嫌ってトルコ空軍基地に展開していたAWACSを撤収した。
 ロシアはトルコとのパイプラインプロジェクトは継続させており、月内にプーチンはアンカラを訪問する。

 欧米がトルコと距離をとりはじめた状況に乗じて、独自にトルコへの接近をはかるロシアだが、昨年のロシア機撃墜の恨みは忘れていない。
ロシアは、ISが密輸する石油タンカーを空爆し、2000のトラック密輸団のうち、1500台を破壊させたが、この石油密輸はエルドアン大統領の息子が絡むダーティビジネスだった。
ロシアの言い分ではISのスポンサーはトルコだったと攻撃する。
石油密輸ルートを破壊され、この重要な利権を台無しにされたことでエルドアンはロシア機撃墜を命じたのだとするのがロシアの解釈である。

 エルドアンは遺族への補償を提示したが、ロシアはまだ怒りがおさまらず「パイロットの処刑」を暗に要求したと推測される(英文プラウダ、7月19日)。