しかし、それは間違いだった。
片手袋を撮り始めてしばらくすると、より変わった素材の手袋、より変わったシチュエーションに落ちている手袋を求めるようになる。
そうすると、僕は軍手に対して気付かないうちに冷たい態度を取るようになっていた。
冬場、皮手袋やファー付きの高級そうな手袋を見つけると胸が躍る。
一方、防寒具以上の役割があり、冬に限らず通年見付ける事の出来る軍手の時は、心の中で「チェッ」と舌打ちをしているのだ。
しかし、この波止場で佇む軍手片手袋を見つけた時、彼が放つ何とも言えない哀愁に打ちのめされてしまった。
いつも傍にいるのが当たり前だった人の、意外な一面を見てしまったかの様な衝撃。例えば、お父さんが泣いているのを見てしまった時の様な。
以来、僕は軍手を差別することを止めた。そうなった時初めて、僕は真の片手袋愛好家の道を歩み始めたのである。