かたてブログ

片手袋研究家、石井公二による研究活動報告。

『キュッパのびじゅつかん』展に急げ!

2015-10-03 23:47:38 | 番外

大学時代の友人が一冊の絵本と展覧会を薦めてくれました。「石井君は絶対好きな筈!」と。

絵本は『キュッパのはくぶつかん』、展覧会はその絵本を元にした『キュッパのびじゅつかん』です。片手袋研究を初期から知ってくれていた友人ですので、これは気になる。早速絵本を買いに近所の本屋へ。

…これがね。素晴らしかったです。簡単な内容紹介をAMZONから引用しますと…

キュッパは、いろいろなものをあつめるのがだいすきな、まるたのおとこのこ。でも、はこもひきだしも、もういっぱいです。キュッパは、集めたものを分類して、ラベルをつけます。こんどはそれを展示して、記録に残します。最後はリサイクルと、なにをしたと思いますか?もしかしておかたづけって、芸術のはじまり?キュッパのはくぶつかんのはじまりはじまり。

つまりキュッパという主人公は、「何かを集める→研究観察→分類→公開→アーカイブ」という作業を経験するのですが、これはそのまま博物館が担っている役割なのです。と同時に、この作業って僕が試行錯誤しながら十年間、片手袋を通じて行ってきた事そのものな訳ですよ!

僕自身片手袋研究の面白味を伝えるのに苦労する事もあります。しかし『キュッパのはくぶつかん』は何かを集めたり分類したりすることの楽しさを、子供から大人まで誰にでも分かるように伝えてくれるのですから感心しました。しかもキュッパが森で集めてくるものの中に、沢山片手袋も描かれているのです!

こんな素晴らしい絵本を元にした展覧会も見てみたい!

と、いう事で昨日、仕事終わりに急いで東京都美術館へ向かいました。

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※ポスターにも早速片手袋が。期待大!

結論から言いますと、展覧会も素晴らしかった!

会場には「収集・分類」がテーマになっている作品がいくつも展示されていたのですが、やはりメイン会場の企画がとても面白かったです。

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※メイン会場

参加者は最初に木箱を一つ支給されます。会場にはまるで統一性のない雑多なものが所狭しと並べられているのですが、参加者は一つテーマを決めて(丸いもの・赤いものetc)その中からピックアップしていきます。

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※こんな感じで雑多な物が沢山並べられている

木箱に集めたものを並べて、何をテーマに集めたのかを記入したタグを付けたら、公開スペースに置いて終了。

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※僕の作成した箱。“2を感じさせる物”というテーマで作成。

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※片手袋をピックアップしていた人がいたので、横に置かせて貰った。

つまり、参加者自身がキュッパになり、キュッパが絵本で経験したことを疑似体験する仕組みになっているのです。

他の人がどういうテーマで箱を作成したのかを見るのも楽しいです。

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※この人のテーマは恐らく“黄色い物”

これはつまり、自分と違うまなざし、自分と違う思考で世界を見てみる、つまり「他人には世界がどう見えているのか?」を知る事にも繋がります。

また、一見雑多に見える物達も、一つテーマを決めるだけで視界がすっきり拡がる感じ。それは僕が片手袋を研究し始めてから、一見つまらない町並みが一気に複雑で豊かな景色に変貌してしまった経験と重なりました。

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※例えば“丸い物”というテーマを設けただけで、無関係に見えた物達が意味を帯びてくる。

絵本は最後、キュッパが「自分が今回経験した過程。それはもしかしたら芸術というものだったのかな?」と気付く事で終わります。“芸術”というと全く新しい感性によって全く新しいものを生み出す行為のように考えてしまいがちですが(そういう側面も強いのだが)、「既存のものをどのようなテーマで切り取り、選び取り、結論付けていくのか?」という視線。その視線そのものがまさに芸術であるのだ、というメッセージに深く共感します。

ただ二つ残念な事があって。一つは明日、10/4で展覧会が終了してしまうので、当ブログで強く推薦してもあまり意味が無くなってしまった事。もう一つは、片手袋研究とテーマが完全にシンクロしているこの展覧会に、アーティストとして参加させて貰いたかったな、という事です(いや、分不相応である事は分かった上で言ってますよ!)。

後一日ではありますが、お時間と興味がある方は是非行ってみて下さい!展覧会が終わっても絵本はいつでも買える訳ですし。

都美術館から出る時、こんな立て看板にすら何かシンクロニシティを感じてしまった僕でした。

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P.S それにしても片手袋研究を始めるきっかけとなったウクライナの『てぶくろ』、僕の十年間の活動を分かりやすく代弁してくれているような『キュッパのはくぶつかん』。両方共に福音館書店の本である事に、何か運命を感じましたし、お礼を言いたい気持ちで一杯です。