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東日本巡回公演「ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち」第8週目。
まだまだ肌寒く、羽織物が手放せなかった5月下旬にスタートした東日本の巡回公演も、
雨とともに蒸し暑さが日ごとに増す7月に入りました。
夏休みという大型連休を目前になんとなく落ち着かないこの季節。
そんな大人の気だるさを吹き飛ばす勢いをなみなみと持ちながら、
先生の言葉に「はい!!」と返事する小学3年生に続いて、
目の前の舞台に自由に声を上げながら小学2年、
1年生と次々と会場に入ってくる3校の低学年の子供たち。
今週の第1日目となった公演は、聖籠町教育委員会の主催による
蓮野小学校、山倉小学校、亀代小学校の3校合同公演。
午前低学年、午後高学年の2ステージが今週の始まりでした。
7月7日(木) 新潟県聖籠町教育委員会
3校、午前午後と合わせて約800人の子供たちがつくる興奮に満ちた客席は
アニー・サリバンをヘレン・ケラーの元へ送った恩師アナグノス校長役、緒方一則の
影マイクでの冒頭の語りと音楽、
舞台の真ん中に置かれたベビーベットに集まってくるヘレン・ケラーの家族、
緞帳幕で始まりを示さない舞台の、幕開けをしっかりと受け取り、
徐々に沈黙を作っていく子供たち。
舞台上に起こる出来事に笑ったり、怒りや疑問を投げかけ、
まるで800人のヘレン・ケラーが客席にいるように感じ、
子供たちは舞台に自ら参加しながら舞台と向き合っていたと思いました。
終演後、退場してくる子供たちを見送るためロビーで待ち、
会場から出てきた子供たちは列になって役者とタッチしたり、握手したり、
控えめに会釈をしてくれる子、「面白かったです!」と声をかけてくれる子、
「"a"ってどうやるの?」と劇中に出てくる指文字、
実際当時アニーがヘレンに教え続けたその指文字のやり方を聞いてきて、
それを見せると"a"とその小さな手で指文字を形づくり、
その後に"L"と劇中でアニーが最初にヘレンの手に打った"DOLL"の"L"を手を突き上げ、
やって見せてくれる子、
子供たちが舞台を見て、自分の感覚を持って受け取ったものを感じることのできた時間でした。
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全員が退場した後、空っぽの客席に先生と共に戻ってくる子供たち。
「子供たちが写真とりたいっていうものですから」と子供たちの声、
姿を見て「バスの時間まで」と子供たちを連れてきてくださった先生と
時間が来てもまだまだ!と言わんばかりに次々と声をかけてくれました。
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また、その女の子たちに続いて男の子が2人、
先生と共にやってきて舞台装置のポンプを目の前に「水だしてみたい」とポンプに触れ、
撤去されていく舞台に「もう、バラバラだ。じゃあ今のうちに!」と言って
まだトラックに積まれていない道具を手に取ってみて、
「これはどうなってるの?」とか「あの絵は何ですか?僕には目に見えます」と
彼らにとってこの舞台は何であったのかと改めて考えさせられました。
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7月8日(金)栃木県日光明峰高校
少し行ったところには"日光東照宮"という歴史ある街並みと、修学旅行の団体、
海外からの観光客が多く、その場所に長くある日光総合会館での公演。
1995年の風の公演「星の王子さま」、2007年の「Touch」を公演して以来の日光明峰高校の皆さんとの再会、
そして新たな出会いある公演となりました。
目の前に飛び込んでくる舞台に元気よく声を上げながら会場に入ってくる生徒さんたち。
そのエネルギーが充満した客席と、校長先生の開演前の挨拶で生徒さんたちに向けられた言葉、
「芸術に触れ、自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じてほしい」「感動は心の栄養です」
この言葉を受け取った生徒さんたちの体に迎えられ開演した舞台でした。
公演中の皆さんは凄まじい静けさで舞台に体を向け、その少しピリッとした客席、
厳しい目と態度をを持ちながら舞台と向き合う彼らを
ひしひしと感じながら舞台に立っていました。
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終演後には先生の呼びかけで、舞台見学と
演劇部の皆さん、ヘレン・ケラー役の倉八ほなみと共に行われた座談会は、
最初は緊張感を感じたものの、徐々に舞台で見たもの、
受け取ったものを持ちながら倉八に問い投げかけ、
先生も一緒になって座談会に参加してくれていた、
声が聞けたいい時間であったと聞きました。
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この舞台を見ようとした自分、見た自分、たった一瞬でも何かを感じた自分を大切に、
そのことが自分と出会えるきっかけ、
発見になるほんの力になってくれたら、と思います。
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今週の3ステージは聖籠町の子供たちと共に在った公演、
日光明峰高校の生徒さんたちと互いに競り合いながら作っていった公演でした。
残りの4ステージ、その彼らの姿、彼らの姿を見守る先生方の目、
そして彼らに「本物の芸術を」と公演を企画した教育委員会の皆さんや各校の先生方の姿を
しっかりと受け、私たち自身、
たった一人の誰かのために今日の舞台がその誰かにとって何であったのか、
考え続け、一回一回、一瞬一瞬やりきっていきます。
文:
アニー・サリバン役 高階ひかり
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