ジャンル映画をより多く観ようとするには、道標となるガイドブックが必要である。特にクンフー映画など特殊なジャンルの場合には。
小学生高学年でジャッキー・チェンのファンとなりクンフー映画ファンの扉を開いた時、最も活用したのは秋田書店から出されていた日野康一・編の『ドラゴン大全科』だった。この本によりブルース・リャン&倉田保昭の『帰ってきたドラゴンを観る事ができたし、フレッド・ウィリアムソン&風間健の『ドラゴンを消せ』はつまらないと感じたし、とにかくクンフー映画の取っ掛かりには最適の書籍だったのだ。
そんな中、正統派クンフー映画の中に混じって一際目に付いた作品があった。それが今回紹介する(前置長いなぁ)マイ・フェイバレット・ムービー『アマゾネス対ドラゴン』(73)だ。
猛女集団アマゾネスに襲われるある村を救う為、超人的な身体能力を持つ自称・神の使いが道々で知り合った黒人の怪力男と中国のクンフー使いとで、知恵と勇気と個々の技術で立ち向かうという、これ以上無い王道パターンで、それプラス物語の所々に小悪党の盗賊団が絡んでいい具合にかき混ぜてくれるので世の東西問わず楽しめちゃう娯楽アクション映画になっているのだ。
日本ではちょうど第一次クンフー映画ブームの真っ只中に公開されたので"ドラゴン”の文字が入っているが、原題はおろか他の公開題にもクンフーを匂わす単語は入っていない。だから最初観たときに(子供だったので)「あれ、ドラゴン主役じゃないの?」と思って多少がっかりした記憶がある。
しかし、いろいろな映画を観てそれなりに成長した現在の眼でみてみればこの作品にはそれなりに見所はあるもので、多数の馬を走らせる場面なんかはローアングルや俯瞰で撮ってみたりしてかなりの迫力だ。さすがアクション史劇やマカロニウェスタンで培った技術は伊達じゃないよ、と言わんばかりだ。
時代がクンフー映画ブームだというので香港からわざわざ『大酔侠』などで有名な岳華(ユェ・ホァ)を招いて美青年中国剣士役をセッティングしたのも心憎いポイントだ。国際的知名度からいえば多分この当時、羅烈がキャスティングされてしかるべきだが、きっと他の作品に出演していて岳華にお鉢が回ってきたに違いない(事実、羅烈は同じイタリア合作の『東洋のスーパーメン』(未)に出演している)。
すげぇ胡散臭いタイトル(内容も)であるが、クンフー映画が好きな方も、イタリア娯楽アクション映画が好きな方も一度御覧になっては如何かな?…っていうかその両方のジャンルの好きな方限定で喋っているな、こりゃ。普通の映画好きの方も是非。
合言葉は「ハホハ~!」だっ!!
クンフー映画→怪獣映画→SF映画…と嗜好がグルグル廻っています。現在はそれらをひっくるめていますけど。これさえ押さえとけばどこの国の映画でも怖くないですもんね。