著者はフリーライター、編集者として、四半世紀以上にわたり俳優、高倉健を密着取材してきた。本書では様々なエピソードを通して、高倉健の人物像に迫っている。
私は高倉健の映画は数本しか見ていない。また彼が俳優としての存在を確立した任侠映画はほとんど見ていない。だから彼のファンとはいえないが、どこか親近感と好もしさを感じてきた。彼は多くの映画に出演しているが、どれも寡黙でストイックな役柄である。また一途に生きる男を演じている。
高倉健に関する色々なメディアに接していると、どうも映画での役と彼自身の人柄は分けがたいと思っていた。本書では撮影現場でも彼が群れず、いつも一人でいることや、他人への気遣いなどが語られている。そして山下耕作監督の「役の方から高倉健という人にすり寄ってくる。どの映画でも役を超えて高倉健という人が存在すると感じさせる」という言葉を紹介している。
本書を読んで以前、あるロケ地のホテル関係者から聞いた話を思い出した。現地での撮影が無事終了した後、高倉健が撮影に協力した地元の人々を招いて慰労しようとしたが、その慰労会に市長も出席するという話になったということである。すると高倉健は、私はお世話になった方々に御礼をしたいのであって、市長が来られるなら私は出ませんと言ったそうである。その関係者の方は私に高倉健は変わった男だと言ったが、高倉の気持ちが分かる気がした。
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