キューピーヘアーのたらたら日記

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OJ (その6)

2008-06-24 13:28:03 | 私が作者です
車は田んぼの中を気持ちよく走った。

農家の住宅が散在する地域。見通しの悪い右カーブにさしかかった。

道路を作ったときに、住人が立ち退きに応じなかったらしい。

カーブのとこだけ道幅が少し狭くなっており、事故が多く、その為カーブミラーが立っている。

ミラー越しに黒い車が来るのがわかった。

しかも、かなり膨らんでいる。

ヤバイ。

キューピーは急ブレーキをかけた。次の瞬間、

ドッカーン

あーああ。


ベンツからサングラスをかけた若い男が外に出てきた。

「あら、みっくん。」とヒロコが言った。

「ヒロコォ!お前が他の男に会いに行くと言うから、追っかけてきたんだ。

 この男がオカザキなんとかなのか?」

「ちが~う。この人はオカザキジローに会わせてくれるおじさん。

 でも、この事故はみっくんが悪い。センターオーバーじゃない。」

「いやー、悪い悪い。」

「今から警察を呼びますから。」

言い出しにくかったが仕方が無い。

「いや、サツはやばい。俺、マークされてるから。

 何とかこれで示談に応じてくれ。」

と人差し指を立てた。

10万円?

「お前、立て替えてくれないか?」

ヒロコはバッグから財布を取り出し、一万円札を一枚出した。

さすがベンツの方は当たり所が良かったのか、バンパーがへこんだ程度だが、

キューピーの愛車シビックはバンパーがボディにめり込み、ヘッドライトは割れ、

ボンネットも変形している。

修理費はどれだけ安く見積もっても30万円は下らない。

それを伝えると、

「じゃあ、3万で手を打って?」

とヒロコがほざく。

「3万じゃなく、30万!」と言うと、

ヒロコはみっくんに、

「あの人、変態なんだって。パン○ィ泥棒だそうよ。

 洗濯物を盗んで天井裏に何百枚も隠してるんだって。

 それに、さっきから私のオッパイや股間ばっかり見てるの。

 ここに来る前も、私の手を握って歩くの。」

と、ささやく。

「なにい、このド変態、俺のヒロコに手出しやがったかあ?」

と本物のヤクザが凄んできた。

「わかりました、わかりました。3万円で示談に応じます。

 警察にも連絡しません。すみませんでした。」

そう謝った。

これで原作料も露と消えた。


「お前、俺に3万よこせ。」

なにやら、気が変わったらしい。

「そうしないと、俺の気がおさまんないんだよ。

 車ぶつけられた上にテメエのイロに手えだされたとあっちゃあ

 ヤクザの面子がたたねえ。」

「今、8千円しか持ち合わせがないんですけど~。」

「みっくん、カタギの人には手を出さないって約束じゃない。」

「うっせえ、お前はすっこんでろっ!」

「この人に何かしたら、私、みっくんと別れるわよ。」

「おーお、上等じゃねーか。別れてやるよ。

 そのかわり、きっちりオトシマエつけてやるからな。

 お前、100万よこせ。」

どんどん値上がりするよー。

「そしたら、この女、お前にくれてやるよ。」

「あのう、貯金が20万しかないんですけどー。」

「親かダチにでも頼んでカネかき集めろよ、このド変態!」

最悪の展開!

こんな気分、小学生のときいじめにあって以来。

その時、

「あんた、どこの組よ。」

と2番がドスの効いた声で言った。

「寺下組の三宅だよ。」

「黒龍会の鷲尾竜次、知ってるわね。私の亭主なのよ。」

「ええっ?鷲尾の親分さんの姐さん!?」

鷲尾真知は、ワニ皮の分厚い財布から束になった一万円札を取り出すと、

みっくんの目の前にぶら下げて言った。

「これでベンツを直しな。そして○出さんとヒロコには今後いっさい手え出すんじゃないよ。

 わかったかい?

 何かあったら、黒龍会が黙っちゃいないよ。」

「へえっ、わかりました。」

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