「私が勝ちですね」とスサノヲ。これで「総てがよければ」と言うことにならないのです。その続きがまだまだあるのです。日本歴史の物語として、此の続きがなくてはならないのです。これら事件の継続があって初めて日本の歴史が生まれるのです。誰が何時頃、どのようにして造り出したのかは不明ですが、誠にお上手に作り上げたものです。何年も何年もの時代を変遷して考え出しただと思われます。決して、一人でこれだけの物語を作り出せるものではありませんもの。その辺りが古事記の古典としての価値があるのではないでしょうか。
「佐備<サビ>」という2文字を使って、それ以後の天上世界の動きの多様性を作り上げてきているのです。思わず「うまい」という感嘆の声を上げないわけにはいかないようにです。この2文字がなかったら、次のスサノヲの高天原での行動は、決して、生まれ出るものではありませんよね。スサノヲの「佐備」、勝ち誇りの気持ちがそのままスサノウヲの体に現れて「荒ぶる」行為をしでかすのです。その第一歩が
“離天照大神之営田之阿<アマテラスオオミカミノ ミツクダノ ア ハナチ>”
です。
「阿」とは畔です。アマテラスが「営田<ミツクダ>」自ら作られた田の「阿<ア>」、即ち、「畔」を離ち、ひきはなつ、めちゃめちゃに壊してしまったのです。
”勝佐備”たスサノヲの第一段です。
更に引き続いて、これもとばかりに、田に水を入れる溝をぶち壊してしまいます。こうなると手のつけようがありません。