８．ファミレス ３

　メニューを聞いて料理を一通り持って行った。
　エリは、私の事など何とも思ってない様子だった。カズミも今の彼氏とラブラブのようでいい事だった。
　問題はヨリコだった。まさか今この時間にファミレスに来る事は誰が予想しただろうか。自分の胸に聞くと本当に正直でヨリコの前だけドキドキと胸が苦しくなっていた。心拍数が高くて倒れようとしたが、何とかこらえた。
　「ありがとうございました。」挙動不審の男は、ダッシュで帰って行った。それに続くようにドラミちゃん夫妻も帰って行った。帰り際「バイト頑張ってね」と言われた。
　外を見ると雨が滝のように降っていた。遠くから雷の音が聞こえてきた。女の人達は、雷がなるたびにキャーと叫んでいた。
　女の人は基本的に雷が怖いようだ。ヨリコも怖がっていた。私が側に行って怖くないよと励ましてあげたかった。
　そんな事を考えていると、近くで大きな音がドーンと鳴り響き雷が落ちた。それと同時に室内の電気がすべて消えて真っ暗になった。
　みんながキャーとわめいた。私もびっくりしてその場にうずくまった。まったく偶然は雷までも呼び起こしたようだ。
　私しか責任者が今の時間いないので、しっかりしなくてはと思い、お客さんを誘導した。
　「みなさん。大丈夫です。すぐ電気がつくので安心してください」暗い中お客さんに説明をした。
　十分後くらいに電気がパッとついた。電気がついたらみんなおかしな動作をしていたので驚いた。
　ホモカップルが男同士で抱き合っていた。カズミも彼氏と抱き合っていた。大学生の男女は手を握り合っていた。エリも男と寄り添っていた。ヨリコは女友達と手を握り合っていた。
　私はみんなを一部始終見ていた。みんなが帰る時、怖かったねと話しをして帰って行った。
　最後まで残っていたのは、ヨリコのグループだった。ヨリコが帰る時意味深な笑みを浮かべて帰って行った。
　何の合図かよく分からなかったが携帯の番号を教えてもらった。
　これが思い出になる事だろう。あの時、ファミレスで雷がなって、落ちて電気が消えて、手を握り合って抱きしめあったよね。
　一時の出会い。一時の時間。一時の思い出。そんなことを考えながらファミレスのドアを閉めた。