ガタン。ゴトン。快速電車がゆっくりと動き出した。
平日に乗る電車は人が少なかった。
修は仕事が休みで実家に帰っていた。
アナウンスでは、車掌がお年寄りに席を譲る様に促していた。
修は車窓から見える景色をぼんやりと眺めて会社の事を考えた。
最近研修生の指導係についた。休みの時くらいは仕事の事を考えまいとしても考えてしまう。そんな事を考えていると、自然と眠気が襲ってきた。
あっという間に次の駅に着いて電車のドアが開いた。
暖かい風と一緒に何人か乗り込んできた。制服を着ている女子高生。スーツを着たハゲたおじさん。杖をついたおばあさん。黒い服を着ているおばさん二人。
ミニスカートを履いた女子高生は立って教科書を見ていた。ハゲたおじさんは汗をハンカチで拭っていた。杖をついたおばあさんは、少年が席を譲っていて、ありがとうと言って、よいしょと座った。
黒い服を着たおばさん二人は、修の隣の席に座った。
見るからに暗い感じで、梅雨時の雲みたいにドンヨリとしていた。
修は、眠気と格闘しながらその光景を見ていた。
電車が進むと、黒いおばさん二人が重い口を開けてポツポツと言葉を交わした。
「あの人ほどいい人はいなかったのに。残念だわね。」
「本当に信じられないわ。あんなに元気だったのに。」
「最近調子が悪いって言ってた矢先だものね。」
「そうそう。人間っていつ死ぬかわからないわ。」
「そういえば、あの人酒もタバコも吸わなかったて言うじゃない。」
「死ぬ時は一緒だよ。人間の生死なんていつか分からないわ。絶対死ぬんだもの。精一杯今を楽しまなきゃ。」眠気の中、そんな会話が聞こえてきた。
どうやら葬式の帰りみたいだった。
修は、目をつぶって人の死について考えた。
人間って何で死んでいくのだろうか。死んだら目を閉じたように暗闇の中に吸い込まれていくのだろうか。死んだら無になると母親から聞いた事がある。
死んだら無になるくらいだったら、どうしてみんな真剣に生きているのだろうか。
必死に幸せを掴むために一生懸命生きているのが馬鹿らしくなった。
ポックリ死んだ誰かも分からない人の為に心の中で拝んでいた。
隣のおばさん達のおかげで修の心の中も曇っていた。
そのおばさん達と入れ替わりで、次の駅では華やかな格好をした男女が乗り込んで来た。修の隣の席が空いているのが分かると荷物を棚に乗せて席に座った。
座ると同時にため息をついて二人で話した。
「やっと終わったな。奥さん綺麗だったな。俺がもらいたいくらいだ。」
「それって私の立場ないな。」
「ごめん。ごめん。赤ちゃんいつ生まれるんだって。」
「今年の秋くらいだと言ってたけど。まさか出来ちゃった結婚だなんて、信じられないわね。」
「だけど、分かるような気もするよ。」
「それどういう意味。」
「いや。何でもない。」男女二人が冗談とも言えるような会話をしていた。どうやら結婚式の帰りらしかった。花や粗品を持って帰っていた。
修は、生まれてくる赤ちゃんは、可愛いいだろうなと思った。赤ちゃんってどうして可愛いのか。きっと穢れを知らないからだと思った。
何の因果か分からないが、生まれてくる命と死にいく命を同時に見たような気がした。
幸せとは、何も知らない赤ちゃんだけが知っているような気がした。
これだけは言えるのは命は短い。
早く人生を楽しまないと手遅れになること間違いないなと思って、車窓から流れてくる田園風景をただ眺めていた。
案山子が寂しそうにポツンと所々に立っていた。
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平日に乗る電車は人が少なかった。
修は仕事が休みで実家に帰っていた。
アナウンスでは、車掌がお年寄りに席を譲る様に促していた。
修は車窓から見える景色をぼんやりと眺めて会社の事を考えた。
最近研修生の指導係についた。休みの時くらいは仕事の事を考えまいとしても考えてしまう。そんな事を考えていると、自然と眠気が襲ってきた。
あっという間に次の駅に着いて電車のドアが開いた。
暖かい風と一緒に何人か乗り込んできた。制服を着ている女子高生。スーツを着たハゲたおじさん。杖をついたおばあさん。黒い服を着ているおばさん二人。
ミニスカートを履いた女子高生は立って教科書を見ていた。ハゲたおじさんは汗をハンカチで拭っていた。杖をついたおばあさんは、少年が席を譲っていて、ありがとうと言って、よいしょと座った。
黒い服を着たおばさん二人は、修の隣の席に座った。
見るからに暗い感じで、梅雨時の雲みたいにドンヨリとしていた。
修は、眠気と格闘しながらその光景を見ていた。
電車が進むと、黒いおばさん二人が重い口を開けてポツポツと言葉を交わした。
「あの人ほどいい人はいなかったのに。残念だわね。」
「本当に信じられないわ。あんなに元気だったのに。」
「最近調子が悪いって言ってた矢先だものね。」
「そうそう。人間っていつ死ぬかわからないわ。」
「そういえば、あの人酒もタバコも吸わなかったて言うじゃない。」
「死ぬ時は一緒だよ。人間の生死なんていつか分からないわ。絶対死ぬんだもの。精一杯今を楽しまなきゃ。」眠気の中、そんな会話が聞こえてきた。
どうやら葬式の帰りみたいだった。
修は、目をつぶって人の死について考えた。
人間って何で死んでいくのだろうか。死んだら目を閉じたように暗闇の中に吸い込まれていくのだろうか。死んだら無になると母親から聞いた事がある。
死んだら無になるくらいだったら、どうしてみんな真剣に生きているのだろうか。
必死に幸せを掴むために一生懸命生きているのが馬鹿らしくなった。
ポックリ死んだ誰かも分からない人の為に心の中で拝んでいた。
隣のおばさん達のおかげで修の心の中も曇っていた。
そのおばさん達と入れ替わりで、次の駅では華やかな格好をした男女が乗り込んで来た。修の隣の席が空いているのが分かると荷物を棚に乗せて席に座った。
座ると同時にため息をついて二人で話した。
「やっと終わったな。奥さん綺麗だったな。俺がもらいたいくらいだ。」
「それって私の立場ないな。」
「ごめん。ごめん。赤ちゃんいつ生まれるんだって。」
「今年の秋くらいだと言ってたけど。まさか出来ちゃった結婚だなんて、信じられないわね。」
「だけど、分かるような気もするよ。」
「それどういう意味。」
「いや。何でもない。」男女二人が冗談とも言えるような会話をしていた。どうやら結婚式の帰りらしかった。花や粗品を持って帰っていた。
修は、生まれてくる赤ちゃんは、可愛いいだろうなと思った。赤ちゃんってどうして可愛いのか。きっと穢れを知らないからだと思った。
何の因果か分からないが、生まれてくる命と死にいく命を同時に見たような気がした。
幸せとは、何も知らない赤ちゃんだけが知っているような気がした。
これだけは言えるのは命は短い。
早く人生を楽しまないと手遅れになること間違いないなと思って、車窓から流れてくる田園風景をただ眺めていた。
案山子が寂しそうにポツンと所々に立っていた。
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