恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

15.eternal love

2006年08月01日 | 家族
 祖父が亡くなって随分と時間が経った。
 お盆でお墓参りに来ていた。近くの畑をトンボの群れが水を探して飛んでいた。大きな木の間からは、ワシワシと蝉の鳴き声もしていた。二つのミスマッチな組み合わせに、お盆の寂しい雰囲気が伝わって来る。
 祖父のお墓に手を合わせると、祖父の元気な姿を思い出す。
 それと祖父の机の中からラブレターが出てきたのを思い出した。
 内容は「ひさえ愛している。君の事を忘れた時は一度もない。天国に行ったら必ず逢おう。」祖父の速記字なので読みにくかったがこんな感じだった。その時、私は驚いた。あの頑固で真面目一筋の祖父がこんな恋愛をしていたなんて信じられなかった。亡くなる前に、病室で書いたものだった。
 病室で彼女の幻影を毎日のように見ていたのかもしれない。
 祖母には絶対何があってもこの手紙は見せれないと父親が言っていた。
 見せたらきっとあの祖母の事だからヒステリーを起こしてそのまま天国に行くかもしれなかった。
 父親に聞いたら、ひさえという人は、祖父の前の奥さんだと言った。
 町一番の美人で、牡丹が一輪咲いたような華やかな人だったらしい。
 そんなひさえさんが、お産で21歳の若さで亡くなった。その時生まれた子供が、私の伯父にあたる人だ。だから、父親とその伯父とは血がつながっていない。
 結構複雑な家庭環境なので大きな声では言えないが、祖父は心の底からひさえさんという人だけを愛しているみたいだった。
 祖父の気持ちも分からないではない。
 21歳というと、子供が生まれて、これから愛を見つけていく段階だ。その時に子供とひきかえに奥さんが亡くなるなんて、祖父は言葉にあらわせれないくらいに心から悲しんだ事だろう。
 私は心から同情をしていた。赤いトンボがお墓の上にとまった。祖父が何か言っているような気がした。
 その人の次にお見合い結婚をしたのが現在の祖母だ。
 祖父は亡くなる間際に「ひさえ」と呟いていたと父親から聞いた。祖母はどんな気持ちで聞いただろうか。
 祖母の気持ちを考えると胸が痛かった。
 祖母がかわいそうな気もするが、一途な気持ちは中々消えるものではない。
 それが例え10年20年、結婚しても本当に好きならば、永遠に想い続けるものかもしれない。
 私の一途な気持ちは祖父に似たのだろうか。頑固な所もそっくりだ。
 私もキセルを吸う祖母よりも、上品な感じのひさえさんという人の方が好きになりそうだ。
 今頃祖父は、ひさえさんと愛の続きを天国でしているだろうか。
 人生とは実に儚い。
 私もそんな大好きな人と恋愛がしたいと祖父にお願いをして、お墓に水を撒いていた。
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2 コメント

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末期(まつご)に本音が (ririe)
2006-08-07 16:30:58
こんにちは。これはキーボーさんのおじい様そのままのお話なのでしょうか。せつなくも、また遠い日の花火のように華やかな恋のお話です。じーんと感じ入りました。

死ぬ時、人は本音を語るのですね。それも勉強になりました。わたしはその時何を口走るかな^^;それも考慮して毎日を生きねば、と思わせられました。あちゃー^^;
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その通りです。 (キーボーです。)
2006-08-07 20:55:07
 この物語は実話という事ですね。



 祖父は前の奥さんの事、本当に好きだったんでしょうね。

 病室では、多分彼女が迎えに来てたのではないのでしょうか。



 今頃、現実でうまくいかなかった分、天国でイチャイチャしている事でしょう。



 人間死ぬ時は何をおもうのでしょうね。

 やはり最愛の人の幻影でしょうか?
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