恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

2.生徒の恋

2005年08月07日 | 若い恋
 髪を黄色に染めて、耳にはピアスが三個両サイドについている。制服のズボンはずり下がり、上のブレザーのシャツはだらんとだらしなく出している。ネクタイもちょこっと巻いているだけだ。カズは高校一年生。
 私とは相性が合わない。話しかけようとすると「だりー」「きちー」「ねみー」の一点張りだ。新任教師だから舐められているのかもしれない。この前も掃除をしないから叱った。ふて腐れて「だりー」といいながらしていた。
 髪は染めてはいるものの、幼い顔をしている。その顔つきが何よりの慰めだった。
 ある時、ビシッと制服を着て、髪を黒に染めて、ピアスも外していた時があった。何をそんなにきめているのかと不安になって聞いてみたら、「うるせーよ」と強がっていた。
 普通の姿になっただけなのに私が聞くのもおかしいかなとは思ったが、あまりにも滑稽な姿だったので、笑いながら聞いたのだった。
 カズの様子が少し変だなと疑問に思っていたら、どうも恋をしているみたいだった。最近、転校してきたユキと話す時だけ、優しい顔になって、口元が緩んでいた。
 私が話しかけても「だりー」しか言わないのにユキが話しかけた途端、「何でしょうか?」と標準語になるみたいだった。また、その姿がおかしくて、授業中に笑が止まらなかった。
 カズは相変わらず私を睨んでいたのだが、ユキから見られてるぞー等とからかって言うと、口をへの字に曲げて、何も言えなくなるのだった。
 ユキは、ウサギみたいにおとなしい生徒だ。もの静かで、小さな声で話す。カズとは正反対な生徒だ。だから、好きになったのかもしれない。
 少し雨が降っていた時に、二人が学校の入り口の所で話していた。私はそっと会話を聞いていた。
 「雨やむかな?傘持ってきた?」カズが照れて聞いていた。
 「持ってないよ」ユキが下を向いて小さな声で答えていた。
 「俺あるけど、一緒に帰らない?」
 「うん。」ユキが少し笑った。私は、笑った顔をはじめて見た。カズは不器用に傘をひろげると、ニコッとして、二人一緒に相合傘をして帰っていた。二人とも顔が赤くなっていた。
 一つの傘に二人仲良さそうに入って帰っている姿を見て、私は、うれしい気持ちで胸がいっぱいになった。雨の憂鬱な気分が吹き飛んだ。
 私は職員室の窓を開けて、空を見上げた。うっすらと虹がかかっていた。それに気を取られていると、小さな雨粒が目に入った。雨の日も悪くないかなと一人で呟いてみた。
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5 コメント

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Unknown (うさぎちゃん)
2005-08-07 09:39:01
先生、みかだよぅこの話は、純粋で綺麗な水玉模様みたいこれからも先生を応援していくからね可愛いウサギさんでした
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Unknown ()
2005-08-07 19:46:27
とても、ほほえましい光景が浮かびました。

っても、凛は中坊なのでこんな光景はごく普通な感じもしますが・・・(笑)

凛も恋したいですっっ!!(笑)
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コメントありがとうございます。 (キーボーです。)
2005-08-08 07:38:19
 若いうちは色んな恋をした方がいいと思います。思い出しただけでも恥ずかしくて狂いそうな恋をしたほうがいいと思います。

 恋という炎に水をかけても消えないような。めらめらと更に燃え上がる恋です。

 恋っていいものです。
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Unknown (ぱぷ子)
2005-08-08 16:33:19
>若いうちは色んな恋をした方がいいと思います。



ほんとにそう思います。若いって、それだけで、特権って思います。いーなーーー。



で、若くない人の恋愛は?結婚してしまった人の恋愛は…どーなんでしょーか?



こんな質問すると、キーボーさんに、おこられちゃうかな?
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そうですね。難しい所です。 (キーボーです。)
2005-08-08 18:59:57
 私は、一途に人を好きになるタイプなので何とも言えませんが、結婚したり、歳をとったとして、人を好きになる感情は確かにあることだと思います。

 人を好きになるという感情があるからこそ、若返ったり、ウキウキと人生を楽しめるのかもしれません。

 そう考えたら、不倫というものもいいかなと思われますが、自分としては今まで生きてきた人生の中で最高の人と結ばれたんだなと自分に言い聞かせて、歳をとっていくのも悪くないかなと思います。

 密かな自分だけの好きに留めておければいいですけど。どうかな。難しい所ですね。
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