１６．吉田くん

　小学生の頃。真冬でも半袖、半ズボンで、頭は坊ちゃん刈りで、常に鼻水を垂らしている吉田くんがいた。
　強烈なイメージとしては、男女関係なくカンチョウをしていた。両手をピストルのような形でくみ、女の子がスカートでもズボンでもお構いなしにカンチョウをして、「ウホッウホッ。」と笑って喜んでいた。
　顔もどことなくゴリラに近いような顔をしていた。
　ある時、渡り廊下で、サッカー部のクニオが窓越しに女の子と話しているのを見ると、助走をつけ、勢いをつけてカンチョウした。指が第二関節まで入ったと言って喜んだ。クニオはうずくまって一時立てなかった。授業中も、椅子に座るのがやっとの様子だった。
　次の日の朝、朝礼で担任の緒方先生が「クニオが痔の手術の為に入院した。」と伝えた。
　吉田くんは、「ヨッシャ―。」と訳が分からないくらいに叫んだら、緒方先生が「誰のせいで痔になったと思ってるんだー。」と隣のクラスにまで及ぶほど叫んで怒った。
　それから、吉田くんは、カンチョウを封印した。
　クニオが退院して、廊下を歩いていると、吉田くんは、好きな女の子のスカートに興味を持ったらしくて、今度はスカートめくりにはまっていた。
　女の子は「キャー。」と逃げていた。
　まったく、懲りずによくやるよと私は思った。

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