８．長い夢

　放課後。高校の運動場が見える山の上に来ていた。野球部の声がここまで届いている。僕達は、野球部の練習風景を見ていた。野球部の声が聞こえなくなると、急にせつなくなり、友達に話しを切り出した。
　「好きな子がいたんだけど。」僕が静かに言って、黙っていると、友達が身を乗り出して聞いてきた。
　「それでどうなったんだ？」僕達は少し黙った。野球の金属バッドのカキーンという音が響いていた。
　その後、僕が「ふられてね。」と言った。
　「そうか。せっかく彼女が出来ると思ったけど仕方がないな。」友達は一生懸命慰めてくれているみたいだった。一緒に肩を落とした。
　運動場では、野球部やテニス部や陸上部が活動をしていた。日が沈みかけて、周りは薄暗くなっていた。
　「僕は、長い長い夢を見ていたと思う。彼女が目の前に現れて、毎日話す度に胸がときめいて、生きるってこんな感じだったと思ってたんだ。」
　「そっか。夢か。人を好きになるって夢を見ている事に似ているかもな。きっと、今が目覚めたんだよ。」友達が、僕の肩をポンポンと二回叩いた。
　叩いた後、「次を見つけないとな」と言った。
　野球部の練習が終わろうとしていた。「サーコーイ。」の声が段々聞こえなくなっていた。
　僕達は、山を下りて、自転車に乗って、家まで猛スピードで競走していた。