恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

4.母の手

2005年10月16日 | 家族
 風邪をひいて熱が出た時必ず母親の手を思い出す。
 私が子供の頃、風邪でダウンして、水枕にタオルを頭に乗せていた。喉もグチャグチャになっていて、喋るのも億劫だった。
 明日は、大事なイベントがある時に限って熱が出るのだ。この時は確か運動会の前の日だった。
 「大丈夫かーい?」母親が優しい言葉をかけてくれる。私はウーンウーンと顔を真っ赤にして熱にうなされていた。母親はそっと頭のタオルをのけて、自分の手を私の頭に当てて早くよくなれと呪文を言う。
 その後冷たいタオルをまた頭に乗せるとすーと熱が下がっていくような気がするのだ。
 母親の手には魔法がかかっているのかもと子供の頃思ったものだった。
 私が熱が出て母親に甘えている時、父親が「熱くらい気合で直せ」と言った。それでも、何故かムカついて熱が下がっていくのだ。
 なぜなのかよく分からなかったが、父親にとっての優しさなのかもしれないと大人になった今思っている。
 母親の優しさと父親の怒りは似ているのかもしれない。どちらも優しさで出来ているのではないだろうか。
 そういう優しい母親のような彼女を見つけられたら良いだろうなと思う。
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