１３．第二の恋

　私が二回目の恋をしたのは、高校生の頃だった。彼女はバスケット部で、クラスの人気者だった。いや、学校中の人気者だったかもしれない。
　私は、その彼女とは三回しか話した事がない。
　一回目は、後輩のクラスに遊びに行っていた時の事、バスケットの勧誘に来ていたのだ。彼女はバスケットのユニホームを着ていた。さわやかで、ショートカットが印象的だった。私はその姿を見て恋をしたのだ。なんて素敵な人なのだろうと心の中で思うと同時に心臓がバクバクと破裂しそうになっていた。心臓の病気かなと思った。
　後輩の勧誘をした後、私の存在に気付き、微笑んで「バイバイ」と小さく手を振ってくれた。私も小さく手を振った。笑顔に見とれていた。人生の中でこんな笑顔は見た事がなかった。
　彼女と会った二回目は、修学旅行の時だった。私の学校は海外で、オーストラリアに行ったのだ。彼女も勿論いた。話す機会などはないだろうなと思っていた。
　話す機会を作ってくれたのは友達だった。オーストラリアのオペラハウスの前で彼女と出会い、友達が知り合いのようで、話していた。私は、それに合わせるように話した。
　「そうなの。今から買い物に行くの？」
　「うん。」彼女は静かにうなづいた。なれなれしい男と思われたのかもしれない。帰る時もバイバイと手を振ってくれた。いつも私と分かれる時「バイバイ」と悲しい顔して手を振っている。私も悲しそうな顔をして手を振ったに違いない。
　近くの海に浮かぶヨットを見て、私の心もヨットのようにフワフワと浮かんでいるなと思った。
　三回目は、卒業式の日だった。話したというより見たと言った方がいいだろう。彼女は式に出た後、知らない男と話していて、別れを告げていた。桜の木の下で、悲しそうな顔をしていた。男が慰めていた。男と付き合っていたと聞いた事があったが、本当に付き合っていたのか信じたくはなかった。男も悲しそうにしていた。彼女と別れるのが辛そうだった。それを見ていた私の方がもっと辛かったに違いない。桜の木が風に揺れ、花びらが一枚ずつひらひらと落ちていた。
　桜が咲くころになると思い出す。悲しそうな表情の彼女と彼氏。そこには、永遠に悲しそうに語り告がれる別れの一ページがあった。