米露外相会談が実現 実は対立していない
2017.04.13(liverty web)
《本記事のポイント》
- 米露外相会談でロシアはアメリカのシリア攻撃を非難。
- 両国の利害は一致しており、優先順位が違うだけ。
- 米露が協力すれば中東問題の解決は近づく。
ティラーソン米国務長官とラブロフ露外相、プーチン露大統領が12日、会談した。ラブロフ氏は、アメリカのシリア攻撃を違法であると非難し、「今後このような行動を二度と繰り返してはならない」と述べた。一方ティラーソン氏は、「両国の利害の一致点を見出し、米露関係を前進させたい」と協調姿勢を示した。会談では、アメリカはロシアにアサド政権の凶行を止めるように協力を求めたと見られている。
ロシアがアメリカを強く警戒する理由
各紙報道では、両国の対立姿勢が鮮明になったと見る論調が多い。しかし、両国の溝は、それほど深まったわけではない。
ロシアが今回のアメリカのシリア攻撃を強く非難する背景には、これまでのアメリカのロシアへの対応に対する不信感がある。オバマ前米大統領は、クリミア併合や、シリアへの介入など、事あるごとにロシアの行動を非難したことに加え、北大西洋条約機構(NATO)諸国に、対露の名目で防衛支援の拡大を計るなどし、両国の関係は悪化した。
トランプ大統領が就任し、ロシアも関係改善の期待は持っていたものの、いまだ信用が構築されていない段階で今回のシリア攻撃があった。ロシアからすれば、アメリカの動きに強い警戒感を持つのは当然だろう。
アメリカは、ロシアに十分配慮している
一方、アメリカは今回の一連の行動について、ロシアには最大限の配慮をしている。攻撃に際しては、事前にロシア側へ通知し、ロシア軍に被害が及ばないように標的を選んでいる。会談でも、ティラーソン氏は冒頭で、「率直に意見を交わし、相互の関係を前向きなものにしたい」と述べ、ロシアの理解と協力を呼びかけた。
トランプ大統領も、米テレビ局のインタビューで、「われわれがシリアに入っていくことはない」と述べた。今回の攻撃の狙いが、アメリカによるシリア支配への足掛かりではなく、アサド政権の非人道的な虐殺行為を抑止するものであったことを強調したのだ。
ロシア側も、この配慮に応じる形で、これからも対話を続けていくと表明しており、決して両国の間に決定的な亀裂が入ったわけではない。
ロシアとアメリカの違いは「優先順位」の付け方
そもそもロシアがシリアを支持するのは、自国の国防上の理由がメインであり、アサド政権を守ることを目的としているわけではない。
ほとんどの海岸を氷に閉ざされているロシアにとって、地中海へのルートを確保することは必須だ。もしアサド政権を強制的に排除した場合、無政府状態となったシリアでは、紛争や混乱が続発する可能性が高い。そうなったとき、事態を収拾すべく、ロシアに敵対感情を持つ欧米諸国がシリアに介入してくれば、ロシアは地中海へのルートを失いかねない。
ゆえにロシアは、中東の混乱を収める際、「まずイスラム国によるテロの脅威を終わらせることを優先し、その後、正当な手続きを経てアサド政権を終わらせる」ことを目指している。
アメリカはというと、実は基本的にロシアと同じ青写真を描いている。ティラーソン氏は今月、「暴力的に政権トップを変えると長期的な安定が困難になる」「(アサド政権が)どのように終わるかは非常に重要」と述べている。あくまで、シリアに安定をもたらしたいという考えが前提にあり、ロシアの利害と一致している。
しかし、トランプ政権には「非人道的な虐殺行為は誰であろうと許さない」という強い哲学があり、こちらが最優先されたということだ。
米露の相互理解と協力が、中東紛争を終わらせる
両国はテロの撲滅という同じ目的があるが、優先的に取り組む問題が違っているために、今現在すれ違いが起こっているといえる。しかし、これはこれからすり合わせていくことのできるものだ。
米露が協力したならば、中東問題の解決は飛躍的に進むことだろう。一刻も早い両国の信頼関係の構築を望みたい。(和)
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