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精神科医がおすすめする「沈んだ心に効く名作映画」(2)―嫉妬に学ぶ? 嫉妬に狂う?

2017年04月03日 07時01分54秒 | 日記

精神科医がおすすめする「沈んだ心に効く名作映画」(2)―嫉妬に学ぶ? 嫉妬に狂う?

精神科医がおすすめする「沈んだ心に効く名作映画」(2)―嫉妬に学ぶ? 嫉妬に狂う?

 

 

《本記事のポイント》

  • マイナス映画には人生の教訓はあるか?
  • 映画「アマデウス」で描かれた「嫉妬」
  • 映画の感情は社会を駆け巡る

 

精神科医

千田 要一

プロフィール

(ちだ・よういち)1972年、岩手県出身。医学博士。精神科医、心療内科医。医療法人千手会・ハッピースマイルクリニック理事長。九州大学大学院修了後、ロンドン大学研究員を経て現職。欧米の研究機関と共同研究を進め、臨床現場で多くの治癒実績を挙げる。アメリカ心身医学会学術賞、日本心身医学会池見賞など学会受賞多数。国内外での学術論文と著書は100編を超える。著書に『幸福感の強い人、弱い人』(幸福の科学出版)、『ポジティブ三世療法』(パレード)など多数。

仕事や人間関係に疲れたり、落ち込んだりした時、気分転換のために映画を見たくなります。その時、せっかくなら名作を見たいもの。

 

しかし、精神医学の立場から観たときに、同じ「名作」と言われるものの中でも、気持ちを浮かせるために「観るべき名作」と「観てはいけない名作」が分かれるといいます。

 

辛口評論家のお墨付きとも、動員数とも違う基準ですが、観る側にとっては大事な観点と言えます。

 

本記事では、国内外で数多くの治療実績・研究実績を誇る精神科医・千田要一氏に、「映画とメンタルの関係」、そして「名作映画の"診断"結果」について聞いていきます。

 

◆             ◆             ◆

 

マイナス映画には人生の教訓はあるか?

前回は、メンタルにいい影響を与える映画とは何かについてお話ししました。しかし、これは、映画の中に「不幸」「戦い」「狂気」などが一切入ってはいけないということではありません。

 

ドラッグで苦しんだり、人間関係で苦しんだり、というのが人間の現実です。それを描かず、一方的にポジティブなことばかり言っても通じないことは、私自身、治療をしていてもよく実感しています。『僕と妻の1778の物語』でも、主人公が妻の病気に悲嘆に暮れるからこそ生まれる感動があるわけです。

 

ただ大事なのは、マイナスの描写をそのままにしないこと。それを人生の教訓や、次の幸福に「昇華」させるための「解毒剤」が入っていることが大事なんです。

 

 

アマデウスで描かれた「嫉妬」

『アマデウス』という映画があります。敬虔な信仰心に生き、人々からも尊敬される作曲家アントニオ・サリエリの前にある日、天才作曲家であるモーツァルトが現れます。

 

礼儀知らずのモーツァルトは、他の作曲家から軽蔑されましが、サリエリだけは、モーツァルトが神の寵愛を受ける最高の才能を持つことを見抜いてしまいます。自分が凡庸だという自覚と、モーツァルトへの嫉妬に苦しむサリエリが、大きな悲劇を引き起こしていきます。

 

音楽、ストーリーの斬新さ、美術など、非常に優れたものでした。ただ、もし観客がサリエルの嫉妬に共感して、「こういう人生があるんだなぁ」というだけで終わったなら、考え物です。サリエリの嫉妬の感情を、ただ受け取ってしまうことになるからです。

 

本当なら、「嫉妬を克服した描写」や、そうでなくても、「どこで考え方を間違えたために、嫉妬に狂ったのか」という教訓を得られる「解毒剤」が欲しいところ。

 

ただし、嫉妬の怖さや、克服方法についての知識をちゃんと持っている人は、反面教師として学びにすることができるでしょう。

 

 

映画の感情は社会を駆け巡る

こうした映画のメンタルへの影響は、観た本人に留まらないことも、指摘しておきます。

 

ポジティブな感情や、ネガティブな感情は、人間関係を通じて社会に伝播していくのです。これはハーバード大学医学部のニコラス・A・クリスタキス教授らによる「ソーシャルネットワーク理論」と言われます。

 

例えば、ある人が幸福になると、その幸福は友達には15%、友達の友達には10%、友達の友達の友達には6%伝播します。ネガティブな感情は、さらに強く伝播すると言われています。また、行動も伝染するため、肥満さえも伝染すると言われています。

 

一人の社会的なつながりのある人が10人だとすると、一人は数千人に影響を与えることになります(感情伝播は3次レベルの友達まで影響するため、単純計算すると10×10×10になる)。10万人がある映画に強い影響を受けると、億単位の人に影響を与えることになりかねないということです。

 

今政府も、日本の「メンタルヘルス」「ストレスマネジメント」を大きな課題にしています。あまりにマイナス情報の多い映画がヒットしたりすることは、その動きと逆行しているとも言えるわけです。

 

繰り返しになりますが、精神医療から観れば、映画は「単なる個人の憂さ晴らし」では終わりません。映画業界の人たちも、その社会的責任があるでしょう。

 

次回からは、具体的にオススメできる映画をご紹介していきます。

(次回へ続く)

 

【関連記事】

2017年3月29日付本欄 精神科医がおすすめする 心を浮かせる名作映画 (1)

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2017年3月25日付本欄 大川宏洋座長・劇団新星の旗揚げ公演「俺と劉備様と関羽兄貴と」始まる

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自民党が「こども保険」を提言 教育の質の向上はカネで解決できるのか?

2017年04月03日 07時00分12秒 | 日記

自民党が「こども保険」を提言 教育の質の向上はカネで解決できるのか?

《本記事のポイント》

  • 自民党が教育無償化に向けて走り出した
  • 無償化ありきの議論でいいのか?
  • 教育の質の高さが子供を育てる

 

自民党の小泉進次郎・農林部会長ら若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」がこのほど、保育や幼児教育を支援する「こども保険」を創設する提言をまとめた。

 

提言では、企業と従業員の支払う社会保険料を0.1%ずつ引き上げることで、年3400億円の財源を確保し、教育政策に充てる考えが示された。これにより、小学校入学前の子供の児童手当に月5000円加算できる。将来的には引き上げ幅を各0.5%に拡大し、保育や幼児教育が実質無償となる約1.7兆円の財源確保を目指すという。

 

教育無償化については、安倍晋三首相も先月28日の参院決算委員会で「貧しい家庭に育っても進学できる日本をつくりたい。私の信念でもある」と意欲を示している。

 

また自民党内では、教育無償化をめぐり、馳浩・前文科相や下村博文幹事長代理らを中心としたプロジェクトチームから、「教育国債」を発行する案も検討されている。これについては、「将来世代への負担の先送りに過ぎない」との意見が発されたため、それに対抗する形で出されたのが、今回の「こども保険」案である。

 

 

無償化ありきの議論でいいのか?

少子化問題や、貧困が原因で進学できないなどの問題に対して課題意識を持つことは重要だ。しかし、今の与党内の議論は、無償化ありきの議論となってしまっている。

 

無償化だけが教育の充実ではない。それぞれの学校が切磋琢磨して教育の質を上げていくことも重要だ。公金の投入は、教育機会の確保と同時に、教育の質を上げる目的にもかなったものであるべきだろう。

 

例えば、低所得層に向けた教育バウチャーの導入や、参入規制の緩和といった方法が挙げられる。バウチャー制度で、教育機関の間に競争原理が取り入れられれば、「この学校に子供を通わせたい」と多くの親が考えるような、教育の質の向上に努力した教育機関が残っていく。単に無償化するだけでは、質の向上につながらないばかりか、もし教師の中に「どうせ無料だから」という意識があれば、むしろ質は低下しかねない。

 

しかも、現在挙がっているこども保険案の内容も、すべての未就学児童が対象で、十分な所得があるかどうかなど、家庭の事情は考慮されておらず、支給される手当も本当に教育に使われるかどうかはわからない。

 

こうして見ると、こども保険は、実は社会保険制度に目をつけた増税とも言える。人気取りのためのバラマキ政策にもなりかねない面がある。

 

 

教育の質の高さが子供を育てる

歴史に目を転じてみると、明治期の立役者を多数育てた教育者の吉田松陰は、ほったて小屋のようなところで松下村塾を開き、獄中でも人材を育てた。お金はかかっていなくても、そこから伊藤博文や高杉晋作、久坂玄瑞らが育っていった。その根底には、教育者としての松陰の人材を愛する心と情熱があった。

 

国として教育に力を入れることは素晴らしいことだ。しかし、無償化ありきの議論では、教育において一番大切なものを見失ってしまう恐れがある。

(HS政経塾 野村昌央)

 

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