山本地方創生相の「学芸員はガン」発言から考える、文化財を守ることの意味
2017.04.24(liverty web)
《本記事のポイント》
- 文化財を傷つけるリスクをとらなくても稼ぐアイデアはある
- 学芸員の仕事のうち、保存・修復に重点を置きすぎると「稼ぐ」が疎かに
- ソフト・パワーは日本を守ることにもつながる
山本地方創生担当相が「文化観光を進めなければならないが、一番のガンは学芸員という人たち。一掃しないといけない」と発言したことが物議をかもしている、後日、「言い過ぎで、不適切だった」と謝罪、撤回した一方で、二条城では過去、英語で案内表記があっても、海外の人がわかるような表記も説明もなく、不十分だと改めて指摘した。
問題となった発言は、山本氏が16日に、滋賀県大津市で開かれた地方創生セミナーに出席した時のもの。観光が地域活性化につながるにもかかわらず、一度文化財に指定されると、その文化財の中で水や火が使えないため、観光客を集めるために花を活けたり、お茶を提供することができないことを問題視した。また、外国語での説明、案内なども不十分だとしている。セミナーでは、「地方創生とは稼ぐこと」と定義し、各地の優良事例を紹介したという。
地方創生に必要な"アイデア"とは?
この発言から、2つのことが考えられる。
1つは、地方財政を健全化させ、地方公共団体がそれぞれ稼ぐためには、アイデアが必要だということだ。ただし、わざわざ文化財を傷つけるリスクを取らなくても、観光客を集めるアイデアはある。
例えば、名古屋市や金沢市では、定期的に、歴史的な建物や古い町並みを利用して工芸品やアート作品などを展示し、美術祭典などを行っている。それにより外国人観光客や若者を呼び込み、2016年に開催されたあいちトリエンナーレでは、74日間で60万人が訪れた。
文化を守ることは国を守ること
もう1つは、学芸員の仕事の意義が問われているということだ。学芸員は公務員で、その仕事の内容は、文化財や美術品、博物館資料などの収集、研究、保存、公開、企画などがある。確かに、保存や修復に重点を置きすぎると「稼ぐ」という視点が疎かになるのも事実だろう。
しかし、文化財の保存が、その土地の歴史や文化を後世に伝えることになれば、日本国民、ひいては世界の人々がその文化、文明を知ることになる。世界の人々が「日本に守るべき文化がある」と認めることになれば、そのソフト・パワーは、国を守る力にもなる。
日本には、古代から皇室をはじめ連綿と受け継がれてきた宗教的文化、芸術、それらから派生する文化財や史跡などがある。そうした日本文化を守る意義を見直すとともに、発信にも重点を置いていく必要があるのではないか。
(HS政経塾 坂本麻貴)
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