前の記事「千貫門」は、海辺へ下りる断崖の道の足元の険しさや
崖の上下からの撮影にもかなり時間がかかりそうなために
まずはすぐ北隣りの「雲見海岸」へ立ち寄ることにしました。
目の前が波止場のバス停から海辺に下りて行くと
「千貫門」の海辺から見た北隣りの「烏帽子山」の絶壁の裏側が
雲見海岸の波止場のすぐ左手(南隣り)にそびえていました。
ここの海岸は北方の彼方に富士山が望める絶景ポイントです。
この日はよい天気で幸い富士山は雲に隠れていなかったので
立つ位置をあちこちと変えて何度もシャッターを切り続けました。
ここでもまたよい思い出になる写真を残すことができました。
波止場の出入り口に向き合っているかのような二つの岩があり
小さなボートなら間を通りぬけることもできそうです。
運よく富士山がはっきりと見えているので
一枚目の写真の撮影位置からすこし右側へ移動して
二つの岩の間にはるか彼方の富士山の姿を入れて
数枚撮影しておくことにしました。
なんと、撮影中好運にも左側の大きな岩に急に日が差して
「ジオサイト」らしい岩肌も鮮明に撮ることができました!!
帰宅して調べてみると、この二つの岩には名前がついていました。
地元では「牛着岩」と呼ばれているということで
実は地元でなければわからない言い伝えもありました。
「昔々豪雨による洪水のため多くのものが海に流されてしまい
大事な家畜までも小屋から海へ流されてしまったが
幸いにも牛が沖合いの岩にたどり着いて救われた。」
ということから、二つの岩には「牛着岩」という名がつけられ
左手の大きい岩は「大牛岩」、右の小岩は「小牛岩」
と呼ばれるようになった、ということがわかりました。
また一枚目の写真左端の岩の姿もずっと気になっていました!
この岩には 「スフィンクス」 という名がつけられていたのです!
じっと見つめていると 「なるほどそっくり !!」 という感じです。
ここでもまたとても楽しいひとときを過ごすことができました。
「千貫門 (せんがんもん)」・・・ 地表に姿を現した「火山の根」
海辺に下りて「千貫門」を真正面の海岸線から撮影した一枚
太古の昔マグマからこの姿になるまでの激しい地殻変動により
全面に見られる「柱状節理」 も滝などでよく見られる姿とは異なり
荒々しく、著しく変形した姿になっています。
*「千貫門」の近くに立てられているジオサイト案内板の説明文
西伊豆や南伊豆をはじめとする伊豆半島南部の広い地域は
伊豆が本州に衝突する前に噴火した海底火山や
火山島によってつくられています。
遊歩道先の千貫門や千貫門の右手に見える「烏帽子山」は
かつて海底火山の地下にあった「マグマの通り道」が地上に
姿を現した「火山の根」(火山岩頚)の一部です。
千貫門には岩の中央部分に波で削られできたトンネルがあり
巨大な門に見えるその姿は烏帽子山山頂にある雲見浅間神社
の門に見立てられて「浅間門」と呼ばれていましたが
「見る価値が千貫にも値する」という意味で
「千貫門」と呼ばれるようになりました。
千貫門の前からはなかなか去り難く、一枚目の写真に写しこんだ
岸辺に横たわる巨大な流木に腰掛けて
かつては「海底火山の根」であった巨大な岩礁を見つめながら
かなりの時間を過ごしていました。
その間にシャッターを切ったこの一枚は
一枚目の写真には写っていない千貫門の右端の部分に目がとまり
背後に隠れていた小さい岩礁も入れて撮影した一枚です。
じっと見つめていると・・・「地表に現れた海底火山の根」の
激しいマグマの動きが眼前に蘇るような気がしてきます。
荒々しく乱れた「柱状節理」がそれを物語っているかのようです。
一枚目の写真は海辺でジオサイト「千貫門」を正面から見た姿ですが
この写真は崖上で「千貫門」を北側から見下ろして撮影した一枚です。
「千貫門」北側海岸から見た断崖と伊豆半島最西端の「烏帽子山」
「烏帽子山(えぼし山)」伊豆半島南西部(静岡県賀茂郡松崎町雲見)
標高 162m で 「伊豆半島の最西端」 となる海岸に立つ岩山。
最西端で富士山がよく見える山頂には「浅間神社」があります。
中腹には「拝殿」「中の宮」もあり
山頂まではかなりきつい428段の急な石段があります。
この岩山も周辺の断崖や岩礁もすべて千貫門と同じく
「地表に現れた海底火山の根」です。
この海岸線一帯が貴重な「ジオサイト」となっています。
西伊豆 堂ヶ島海岸 「亀島」(手前)と 「蛇島」(奥)
左手が港で右が駿河湾、その間を遊覧船が次々と出入りします。
初めて伊豆半島西海岸「西伊豆町」へ向かいました。
三島駅まで新幹線で、伊豆箱根鉄道に乗り換えて修善寺駅へ
そしてバスに乗り換えて西伊豆町へ。
三島市・・・伊豆半島西岸・・・下田市まで続く国道136号線
堂ヶ島バス停で降りて観光案内所で資料をいただだいた後
海辺のカメラ散策を始めました。
いちばん眼についたのは「天窓洞」というポイントでしたが
「洞窟の中の天井に穴が開いて空が見える」
という意味の名称だとわかりました。
遊覧船のお客さんはこの船から洞窟の中で青空を
見上げているのだろうと想像していました。
その直後に鳩が飛んできて洞穴の中に入っていきました。
海辺のコースには同じような岩肌の太古の巨岩が連なっています。
最も高いこの巨岩の頭の付近に昼の月が白く光り
左奥の山あいには満開の山桜が輝いていました。
なんとも魅力的な景色でカメラを構えて一枚撮影しました。
伊豆の春、山々にはどこも山桜が咲き乱れていました。
その後もコース沿いには同じような巨岩が連なり
狭い歩道が押しつぶされそうな恐怖を感じるほどでした。
「ジオサイト」の巨岩に手を触れて、その感触を確かめながら
やっとカメラ散策を終えることができました。
「鮎壷(あゆつぼ)の滝」 (県指定天然記念物)
JR三島駅北口から徒歩約24分の位置で「黄瀬川」にかかる滝。
富士山南の愛鷹山麓からの溶岩流が固まった岩壁を流れ落ちる。
滝前には「吊り橋」があって彼方に富士山の姿を望めることから
「富士見の滝」 ともいわれている。
この滝は幅が(川幅と同じ)65mもあり、落差は約10mとなっている。
「鮎壷の滝」の名は、この川幅いっぱいが岩壁となっているため
鮎が滝を越えられず滝壷に集まるのでそう名づけられたという。
この写真は滝から80mほど下流の吊り橋の上から撮影した。
この日は川の水量が少なく幅65mの岩壁がほとんど露出していた。
岩壁の右上彼方には富士山の姿が望める。
水量が多い日には岩壁いっぱいに激流となって水が流れ落ち
迫力ある豪快な滝の姿を楽しむことができるにちがいない。
激しい流れはただ一筋だけで川岸から降りて滝前に近づき
時間をかけて何度もシャッターを切り続けた。
ぜひまたいつか水量の多い日に撮影にでかけたいと思う。
「釜 滝(かまだる)」
左上部分の崖に「柱状節理」模様が見られます。
*「浄蓮の滝」から「道の駅天城越え」を経由し上りが続きます。
標高 708m の「旧天城トンネル」 (=「天城山隧道」) に入りました。
*「天城山隧道(旧天城トンネル)」=「国の重要文化財指定」
「日本の道百選」 「日本百名峠」 に選ばれ、風景展望は格別。
*天城路ハイキング道筋には、川端康成・井上靖・梶井基次郎
与謝野晶子・横光利一・島崎藤村・穂積忠が歩き著した作品に
登場する名所や数々の文学碑を巡ったりの楽しみもあります。
「蛇 滝(へびだる)」
この「へびだる」 の 周囲の岩礁は
まさに無数の柱をぎっしり立て並べたかのように見えます。
「柱状節理」だとすぐにわかる見事な眺めでした。
「蛇 滝」
「出合滝(であいだる)」
この滝周囲の岩壁もまた、ひと目で「柱状節理」とわかります。
はるか昔のどろどろの溶岩の流れが想像できるほどです。
「大 滝 (おおだる)」(高さ30m 幅7m)
河津七滝の中では最大規模の滝で見応えがあります。
この滝は大滝温泉「天城荘」旅館の敷地内にあって
滝前には露天風呂があり、宿泊客は無料で(立ち寄り客は有料)
滝を眺めながら入浴することもできるということです。(水着着用)
この大岩壁にも恐ろしいほど迫力ある 「柱状節理」 が見られます。
この滝前には「伊豆の踊り子」の踊り子と学生のブロンズ像があります。
滝は伊豆の踊り子が歩いた山あいの「踊り子歩道」で見られます。
*河津では「滝」を「たる」と読むことから「七滝=ななだる」となっています。
「初景滝(しょけいだる)」
多くの滝が連なる山あいの道筋はかなりきついコースで
足元には十分な注意が必要です。
「カニだる」
滝周囲の「柱状節理」は「柱状」の模様がはっきりせず乱れています。
このような不規則な柱状節理の模様は珍しいでしょう。
花が少ない時期でしたが、道脇に「ミツマタ」の花が咲いていました。
「河津七滝七福神」
「河津七滝」には滝前に「七福神」が祀られています。
「滝と七福神めぐり」を同時に楽しむのもよいでしょう。
河津町にはこれらの滝以外にもいくつか滝があります。
(*「二階滝」「平滑の滝」「美滝」「竜姿の滝」)
紅葉の季節にもぜひもう一度このコースを歩いて
多数の滝を心を込めて撮影したいと思っています。
駿河湾の沖合い(南)から富士山(北)を眺めるこの地形図では
富士山の下に見える市街地は沼津市から富士市辺りとなります。
説明文では、「駿河湾は港から数キロ沖へ出ると急に深くなり
水深は2,500mにもなり、南北に伸びる「駿河トラフ」と呼ばれる
深い溝が存在して、湾を東西に二分している」と書かれています。
この図は「激しい地殻変動」による「独特な地形」といえるでしょう。
*「伊豆半島の生い立ち」を調べてみると、とても信じられないような
大昔からの伊豆半島の地殻変動がわかりやすく示されています。
① 深い海での火山活動(800~400km沖合い):2000~1000万年前
② 浅い海での火山活動(400~80km沖合い):1000~200万年前
③ 本州への衝突の始まり(80~40km沖合い): 200~100万年前
④ 本州への衝突の進行(伊豆半島海面隆起):100~60万年前
⑤ 伊豆半島原型完成(海底火山多数地上に現れる):60万年前
⑥ ほぼ現在の伊豆半島の形に(箱根・天城火山等):60~20万年前
⑦ 現在の伊豆半島の形(火山活動):20万年前以降
(注):富士山・箱根火山の活動開始時期には
いろいろな説があり、 調べてみると ・・・
*「富士山誕生」=古富士(2700m) 約25000年前
新富士(3776m) 約10000年前
*「箱根火山誕生」=約40万年~50万年前
*伊豆半島はこのような遥か昔からの激しい海底火山の活動と
本州への衝突を続け現在の姿になったことがわかりました。
上の①~⑦の長い長い歴史を頭に入れて、伊豆半島だけではなく
日本列島全体の激動の生い立ちに思いを馳せながら、今後は
このような観点からも探究心を持って国内各地へでかけて、
ジオパーク旅を楽しみ味わいたいと感じています。
とても小さい写真ですが駿河湾沿いの沼津市の位置がよくわかります。
湾岸沿いの沼津市内には「沼津アルプス」と呼ばれる山系があります。
この写真手前に見える山々の標高は以下のとおりです。
「牛臥山(70m)」「香貫山(193m)」「横山(182m)」
「徳倉山(256m)」「志下山(214m)」「小鷲頭山(330m)」
「鷲頭山(391m)」 「大平山(356m)」
標高の低い山々ですが実はこれらは昔々は海底火山群でした。
北への移動で本州への衝突開始となり姿を現したのです。
「沼津アルプス」は小さな連山でも起伏が多く鎖を使い歩く場所もあり
眼下には駿河湾、北には富士山の大パノラマが楽しめるコースで
県外からも山好きで訪れる人が多いということです。
*< 「プレート」の動きについて >*
( 「プレート」とは、「地球の表層部を覆う厚さ100km もの硬い岩盤」 )
「伊豆半島UNESCO世界ジオパーク」について詳しく調べているうちに
これまでとてもわからなかった多くのことを学ぶことができました。
ネット検索中にこの図が眼に入り、日本列島周辺の「プレート」
について初めてはっきり認識することができました。
伊豆半島が 「フィリピン海プレート」上に乗っているということは
想像さえもできないことでした。南からその「フィリピン海プレート」
そして北からは「オホーツクプレート」が 伊豆半島直下でぶつかり
さらに両側からは「太平洋プレート」と「ユーラシアプレート」が迫り
伊豆半島の地盤はとても不安定であるといえるでしょう。
<*以下は上の図面の解説になります。>
約2000万年前、伊豆半島は数百キロ南方の現在の硫黄島付近
の海底火山群で、2011年の東日本大震災の原因となった巨大な
「太平洋プレート」が伊豆半島が乗っている「フィリピン海プレート」
の下に沈みこんでいて、フィリピン海プレートは本州が乗っている
「ユーラシアプレート」の下に沈み、「フィリピン海プレート」の上に
できた海底火山は、プレートと一緒になり北方へと移動を始めた。
およそ100万年前には本州に衝突して、陸地同士が海を埋めて
現在の姿の伊豆半島が形成された。その後約20万年前までは
陸上のあちこちで噴火が始まり、天城山や達磨山など、現在の
伊豆半島の骨格を形づくる大型の火山が誕生することになった。
プレートの動きはまだ現在も伊豆の大地を本州に押し込み続け
地殻変動により、さまざまな地形を作り続けている。
伊豆半島は世界のどこにも同種の例を見ない「地球上の特異点」
ともいえるほどの 「Global Geopark」 となっている。
柿田川は静岡県駿東郡清水町を流れる狩野川水系の一級河川で
全長は1.2kmと短いが、「日本最短の一級河川」といわれる。
透明度の高さから高知県の四万十川・岐阜県の長良川と並び
「日本三大清流」の一つに数えられている。
都会の清流に接して多くの貴重な動植物が豊かに育っていることも
「天然記念物 柿田川湧水郡」の名称の所以となっている。
「柿田川湧水群」は約40km北方の富士山が水源となっていて
富士の高嶺に降った雨や雪が地下水となり十数年流れ下る。
一日の湧水は約120万トン。川の水すべてが湧水といわれ
沼津市・三島市・熱海市・函南町・清水町35万人分の飲料水となる。
ほぼ無菌でミネラルも含む国内有数のすばらしい湧水といわれる。
川の岸辺付近からも(写真上)、旧織物工場の井戸跡からも(写真下)
こんこんと純粋な湧水が湧き出している。
透明度の高い見た目にも美しい湧水は柿田川から駿河湾へと注ぐ。
三島市内を流れる「世界かんがい施設遺産」に登録の「源兵衛川」
この川の水も 柿田川 と同じく 100% 湧水で
一時は水辺の環境悪化が進んだが、その後の努力によって蘇り
初夏の「源兵衛川」にはホタルが舞う清らかな流れとなっている。
三島駅前の市立公園 「楽寿園」 に湧き出る富士山からの伏流水が
1.5kmの清流 「源兵衛川」 となって市内を流れ
「水の都・三島」を代表する貴重な水辺スポットになっている。
「伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク」
(Izu Peninsura UNESCO Global Geopark)
これまで詳しく調べたことも訪ねたことも一度もなかったのですが
この度二泊三日の旅で伊豆半島の各地へ足を運びました。
行く先々で深く心に残る景観と出あい、まさに感動の連続でした。
まずは「ユネスコ世界ジオパーク」とはどのような地域のことか
世界に何ヶ所、特に日本には「伊豆半島ジオパーク」の他に
何ヶ所、どこにあるのかをくわしく調べてみました。
「ジオパーク」は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)
が推進しているプログラムで、地質学的に国際的な価値の
高い地域であり、「保護」「教育」「持続可能な開発」が一体と
なった概念により管理された地域で、2015年の第38回総会で
正式プログラムとなり、世界で177地域、日本で9地域が
「世界ジオパーク」に指定された。「日本国内ジオパーク」は
この他に46地域が指定され、指定を待つ地域も多い。
*参考:国内「ユネスコ世界ジオパーク」=伊豆半島以外の8地域*
北海道(アポイ岳・洞爺湖有珠山)・島根(隠岐)・新潟(糸魚川)
長崎(島原)・熊本(阿蘇)・高知(室戸)鳥取・京都・兵庫(山陰海岸)
*次回から伊豆半島各地の「ジオパーク」の記録を掲載します。*