◆甲府市浄化センターの紹介◆
こんにちは。今年度の市民レポーター、「かずさん」こと武田和巳(69才)です。
今回の街散歩は、甲府市広報誌2022年8月号の「とびだせ!市民レポーター!」で紹介した「“きれいな水にして、自然に戻す”水の再生工場『甲府市浄化センター』」の補足ブログです。2022年6月14日(火)に甲府市浄化センターを取材してきました。
これまでのブログは以下の通りです。
「かずさんの街散歩 」
・vol.1~vol.29:東、千塚、大里、里垣、住吉、北新、玉諸、湯田、春日、石田、中道、池田、国母、朝日、甲運、貢川、伊勢、相生、千代田、羽黒、大国、宮本、能泉、相川、穴切、富士川、新田、上九一色、新紺屋の各地区
・番外編1:米倉山太陽光発電所&ゆめソーラー館やまなし.
・番外編2:市立甲府病院管理栄養士の栄養指導
・番外編3:甲府・峡東クリーンセンター
**** 施設の紹介 ****
今回は番外編4で、<甲府市浄化センター>の紹介です。
甲府市の甲府市全人口の約97%(180,107人:令和4年3月末現在)の生活・産業排水を処理(中道地区を除く)している、1980年から稼働を始めた「甲府市浄化センター」を見学しました。甲府市大津町に立地し、東京ドームの約3.3倍の敷地(156,100㎡)で、小学校のプール約440面分に匹敵する11万㎥の汚水を毎日処理している施設です。笛吹川沿いにあり、景観のよいところでした。(小学校のプールの容積=長さ25m*幅10m*深さ1.1m=250㎥とした時)
- 「甲府市浄化センター」の詳細は以下をご覧ください。
・甲府市上下水道局 浄化センターHP
https://www.water.kofu.yamanashi.jp/general/facility/20200305151627.html
「①敷地入口」と「②管理棟」の前からスタートします。
**** 見学前の説明 ****
「浄化センターの施設の流れ」を甲府市上下水道局の石川課長、野村係長に説明して頂きました。
甲府市の人口の約97%の生活・産業排水は、公共下水道で処理されています。直接、下水処理場へ流れてくるものと住吉3丁目にある住吉中継ポンプ場を経由して流れてくるものがあり、中道地域を除く下水は、地下10mに埋設された直径2.4mの下水道管を通り、浄化センターに流れ込んでいるそうです。
浄化センターでは、中央監視室で制御する10数の処理工程で浄化・消毒し、きれいな水にして笛吹川に放流しています。
主な工程は、
①大きなゴミ、小石等を取り除く。
②ポンプで地上の処理施設に汲み上げる。
③曝気(ばっき)沈砂池、沈殿池で砂・汚泥を除去する。
④汚水に微生物を混ぜ、微生物の力で汚れを分解する。
⑤塩素消毒して放流する。
⑥一部は砂ろ過搭でろ過し、場内の機械用水、市内道路の清掃用水に再利用する。
⑦汚泥は脱水・焼却し、灰はセメント原料として再利用する。
主な業務は、設備が毎日正常に動くように約2,000点ある設備のメンテナンス、汚水が法令基準内に浄化されているかの水質管理だそうです。
施設見学は、今回は取材と言う事で特別に一般見学していない場所も見せて頂けるとの事でした。ヘルメットを被り現場の見学です。
**** 管理棟内の見学 ****
管理棟にある中央監視室に行きました。施設にあるポンプ、消毒設備等の処理設備を制御しています。
次に、水質検査室では、微生物の観察をしていました。
汚水をきれいにする微生物には細菌、原生動物、後生動物が知られています。「地上最強生物」として注目される数100μmの「クマムシ」は後生動物になります。
「クマムシ」が地上最強と言われる所以は、乾眠状態になった「樽状のクマムシ」は、①120℃以上の高温下②-273℃の絶対零度下③75,000気圧下④ほぼ真空下⑤高濃度放射線(人の半数致死量の1000倍)下⑥宇宙空間で10日間でも死なないからです。但し、「動いているクマムシ」は50℃程度で死んでしまうそうです。
反応タンクの「汚水」に微生物が混ざった「活性汚泥」を混ぜ、空気を送り込むと、微生物は汚れ(有機物)を食べ、汚れた水はきれいになります。増えた細菌やそれを食べる原生動物などがくっつき塊になり、水より少し重くなり下に沈み、上の方の水は浄化されて川に放流するとの事です。汚泥は焼却処分します。
反応タンクの「汚水+活性汚泥」の液体1ミリリットルに細菌類がおよそ数千万~数億匹、原生動物と後生動物は5000~2万匹もいるそうです。μm単位の微生物が毎日11万㎥の汚水浄化をしている事に驚きました。
参考に、東京都下水道局の下記サイトをご参照ください。https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/business/b3/corner/biozukan/kousei/index.html
**** スクリーン・ポンプ棟、ブロワ棟 ****
市内の汚水は、地下に埋められた直径約2.4mの下水管を通り、施設入口の「スクリーン」で大きなゴミや小石を取り除き、ポンプで地上の処理工程「曝気沈砂池」に汲みあげられます。曝気ブロワーで空気を送り込み、攪拌しながら細かい砂などを除去します。
曝気(ばっき)とは、下水処理で微生物が有機物を分解するのに必要な酸素を供給する為に、空気を吹き込んだり攪拌したりすること。(デジタル大辞典より)
**** 浄化している現場 ****
汚水は「曝気沈砂池」「最初沈でん池」に送られます。2時間かけてゆっくり流れながら大きな汚れ(汚泥)を底に沈めていきます。
次に「反応タンク」に送られ、「活性汚泥」を混ぜ、空気を送り込みながら攪拌し微生物の力で汚れを分解します。
その後「最終沈でん池」に送られ、分解された汚れは、微生物と一体となり重いかたまり(活性汚泥)となり、底に沈みます。きれいになった水の一部は「砂ろ過搭」でろ過し、ろ過水は、施設内の処理水や甲府市内の道路清掃用水として7,000㎥/日を再利用します。
殆どの水は「塩素混和池」で塩素消毒し、「放流きょ」から笛吹川へ放流します。
**** 活性汚泥の処理 ****
「沈でん池」から出た汚泥は「汚泥濃縮施設」で濃縮され、さらに「汚泥脱水機」にて水分76% 、固形分24%の「脱水ケーキ」にして、汚泥焼却施設で焼却します。焼却灰はセメントの原料として再利用しています。脱水ケーキには匂いは感じられませんでした。
**** 脱水ケーキの焼却 ****
脱水ケーキは、汚泥焼却施設で約51t/日もの量が焼却されています。焼却灰は約1.5t/日出ますが、焼却灰はセメントの原料として再利用されます。
高さ21mもある「汚泥焼却施設」に特別に上らせていただきました。プラント施設の一部の様で、上りの階段はきつかったですが、上部からの景色はとても素晴らしかったです。メンテナンスの方は毎日上り下りしているとの事、大変ですね。
**** 笛吹川へ放流 ****
最終沈でん池の処理水に塩素を注入して大腸菌などの細菌を滅菌消毒し、BODは 9mg/l 以下で、「放流渠(きょ)」から笛吹川へ放流します。毎日、約90,000㎥(小学校のプール約360校分)の水が再生され、放流されています。
偶然、土手を国土交通省の河川パトロールカーが走っていました。
*BODとは生物化学的酸素要求量で河川の環境基準の一つ。微生物が有機物を分解する時に消費する酸素の量。酸素量が少ない程有機物が少なくきれいな水になります。
*渠(きょ)とは人口の水路、掘り割り。使用例:暗渠(あんきょ)
**** 管理棟へ戻る ****
管理棟への戻りは、メンテナンスの方が使う、設備そばの地下道をひたすら歩きました。どこを歩いているのか、場所も方角も分からなくなりましたが、ご担当の方の後について、何とか生還できました。発電機の前で「お疲れ様でした!!」
**** 関連施設のご紹介 ****
①住吉中継ポンプ場
甲府市の汚水は自然流下なので、甲府市住吉3丁目にある「住吉中継ポンプ場」では、汚水の汲み上げ処理と雨水を濁川へ放流しています。日当たり小学校のプール約120面分(30,000㎥)の量になるそうです。
②池添ポンプ場
甲府市朝気2丁目に「池添ポンプ場」があります。ここでは雨天時に、日当たり小学校のプール約3分の1程度の量を濁川へ放流しているそうです。
**** 取材を終えて ****
この施設は24時間稼働していて、一日でも止まると下水の処理が間に合わなくなり、大変なことになるそうです。そのため、毎日のメンテナンスがとても重要であり、自然環境を守るための浄化処理や水質検査も欠かせない事がわかりました。
普段なにげなく汚水を流していましたが、毎日出る汚水の量に驚き、また毎日設備をメンテナンスして、市民が安心して生活できる環境づくりに、若い方々も地道な努力されている事を、今回の取材を通じて知る事ができました。
丁寧で分かりやすい説明をして頂いた石川様、野村様、有難うございました。
この施設の仕事内容が下記サイト「あたりまえの、裏にあるもの」の中で、動画で紹介されています。是非一度ご覧ください。
https://water.kofu.background.jp/
**** おまけ、中央監視室に私の・・・が!!! ****
中央監視室の中央パネル盤に、私が40年前に設計した指示計があり、びっくりしました。現在はデジタル制御のため使われていませんでしたが、とても懐かしく不思議な気持ちでした。