◆〜本と歩こう(53)〜◆
こんにちは。市民レポーターの 杉浦玲子 (すぎうら れいこ)です。
今回は11月4日(土)に、山梨県芸術の森公園内・素心庵にて行われた『十二単(ひとえ)着付けショー』のご報告です♪
山梨県立文学館特設展『それぞれの源氏物語』(10/28~12/17)関連イベントとして、ハクビ京都きもの学院(立川校)による実演で行われました。
はじめに、ハクビ京都きもの学院と文学館からの挨拶があり、その次に、十二単着付けショーが始まりました。
着付けてもらう人を「御方様(おかたさま)」、着付けをする人を「衣紋者(えもんじゃ)」と呼びます。
衣紋者は「前(まえ)の衣紋者」と「後(うしろ)の衣紋者」の二人一組で、着付けを行います。
御方様は下着として小袖と長袴(未婚を表す濃色「こきいろ」紫)を着用。
十二単と言っても12枚着物を着るわけではなく、「五衣(いつつぎぬ)」・唐衣(からぎぬ)・裳(も)」などの着物や、檜扇などの小物も含めての装束だそうです。
「十二単」とは、身分の高い人にお仕えする、女房たちのハレの衣装(装束)のことを指します。
一番最初に単(ひとえ)を着ます。一番下の衣装が一番大きいつくりになっています。
紐を「もろかみ」(蝶々結び)にして着付けます。
二本の小紐のみで、交互に抜きながら着付けをして、最後にはどちらも抜くそうです。
今回は五衣ということで、単の上に黄色二枚(一の衣、二の衣)、紅梅二枚(三の衣、四の衣)と重ねていきます。
ちなみに、「御方様に息をかけては失礼」にあたるため、前の衣紋者が立ち上がることは許されません。
五枚の色の重なりのグラデーションのことを「にほひ」と言います。
今回の襲(かさね)は「黄菊がさね」という色の組み合わせです。
表着(うわぎ)を着ます。上の御衣(うえのおんぞ)とも言います。
色鮮やかで紋様もあります。
一番上に着る丈の短い「唐衣(からぎぬ)」には、「髪置(かみおき)」という三角の布が衿の後ろの部分に付いています。
洋服に例えるなら、パーカーのフードのような感じですね。
腰の後ろから、「裳(も)」を付けます。小腰(こごし)という裳の紐を前で結び、表着を着付けていた紐を抜きます。
高貴な身分の姫君は他人にお顔を見せてはいけないので、檜扇と帖(たとう)紙を持って、顔を隠して完成です。
十二単の総重量は15~16kgほど。ここまでわずか3~40分ほどで着付けがされました!
この日の男性の装束は、普段着用の烏帽子直衣(えぼしのうし)姿です。
指貫(さしぬき)の袴に、桜かさね(下衣が赤、上衣が白)の直衣を着用されています。
永遠の美男子「光源氏」も、きっとこのような麗しいお姿だったことでしょう。
着付けショーの後は撮影会。私もお二人の間に入らせていただきました♪
千年の時を超えて、王朝の雅(みやび)に触れることができた、貴重なひとときでした★
★本と歩こう(53)★
『きもので読む源氏物語』
近藤富枝著
河出書房新社
2010.5.20初版
1800円(税別)
※著者(出版社)の許諾を得て書影を使用しています
「服装とは言葉以上に心を語る」(本文より)
平安時代の貴人にとって、立場や教養を表すだけでなく、イベント衣装やインテリアでもあった「きもの」。
『源氏物語』の作者・紫式部はさらに、その人の心情や運命までも「きもの」で描写していると、著者は指摘しています。
自然の恵みや四季の移ろいを感じながら、「きもの」をととのえ、身にまとった古(いにしえ)の人々。
雅な時代に思いを馳せて、詠んでいただきたい一冊です。
―取材へのご協力、ありがとうございました―