今朝方(12月29日)見た夢の内容「#974 ガラパゴスの怪(1)」の続きです…
*
研究所に来て二日目の朝。
みな食堂に集まりましたが、ひとりの参加者の姿がありませんでした。
レイチェル「ミスター・キムラは体調を崩し、医療部門に隔離されました。伝染病の疑いがあるからです」
紅葉「……(昨日、いちばんはしゃいで、大騒ぎしていた人だ…)」
レイチェル「皆さんには念のために、薬を服用してもらいます。予防効果があります」
参加者「なに? 十錠も飲まなくちゃならんのか?」
昨日は明るかった参加者達の表情が今日は冴えない。
「見学可能なところは昨日のうちに全部見てしまって、ほかの場所は立ち入り禁止。一週間ここでどうやって過ごせば良いんだ?」
「遊び道具でも持ってくるんだったな」
「チェス盤はあるようだが…」
「いや、チェスは知りません。将棋ならできるんですが…」
参加者の一人・田中「それにしても、なんだか監禁状態のような感じがしませんか?」
「まあ、ぶっちゃけそんな感じだけどな。どこでもお役所仕事は融通が利かないものさ」
田中「それに参加者六人で一週間というのも引っかかってるんです」
「なにが?」
田中「アガサ・クリスティーのアレですよ」
「あれって、何? 『そして誰もいなくなった』くらいしか知らんが」
田中「それですよ」
「あれは死んだの六人だったか?」
田中「そこまでは憶えてませんが、今回のツアーの場合、一日で一人ずつ消えてゆけば最終日にはちょうど誰もいなくなる計算です」
「うむ、現に今朝一人いなくなってるしな」
「よせよ、縁起でもねえ」
「このはさん、でしたかな? あなたはどう思いますか?」
紅葉「さあ、頭の鈍いわたしには皆目見当はつきませんわ」
「こりゃ失礼、あなたにはふさわしくないお話でしたか(笑)」
陰謀の臭いはツアーの最初からありました。
そもそも政府が何か強制するというのは、悪いことに決まっています。
もし本当に正しいことなら、強制せずに丁寧に説明すれば相手が納得するはずなのです。
そして、陰謀のただ中に居るときは、冷静沈着に行動し、決してうかつなことを口にしてはいけません。
もし次に消えるとしたら、「監禁状態」とか「アガサ・クリスティー」を引き合いに出したあの人であると、だいたい相場が決まっているのです。
ツアーの規制で、筆記具や写真機も持って来られませんでした。絵描きの道具があれば退屈しないのですが、それもダメでした。
本を少し持ってきたので開いてみましたが、どうも気になって集中できません。
これからどうなるか不安なのに加え、あの奇妙な「猿」のことです。
あの「猿」はどこか違和感がありました。
どんな奇妙な動物でも、生活環境に適合した姿をしているはずです。
動物を観察するには始めに糞と足跡を見つけることだ、という話をどこかで聞いたことがあります。
糞から食性がわかりますし、足跡つまり足の形状がわかれば生息域の環境もある程度わかります。
とくに霊長目はものをつかむ手に大きな特徴が表れているはずです。
わたしは「猿」を見に行きました。
飼育室の前に来ましたが、「猿」は昨日のようには飛びかかってきません。
わたしの顔を覚えて「猿」の方が驚かなくなったからだろうか?
それともわたしを驚かせないように気を利かせているつもりなのだろうか?
とりあえず「猿」をじっと見る。
「猿」はわたしが見ているのを気にしているようだが、敢えて平静を装っているようにも見える。
やはり、違和感があったのは当たっていました。
手の形がほとんど人間そっくりです。五本の指がそれぞれ独立して動かせるようです。そんな動物が人間以外にいたのかな?
足の形もほとんど人間と変わりません。ただ、足の力が弱く立ち続けるのが大変なようです。
この「猿」が、四つんばいで歩くのも、二足歩行も、木に登るのも、いずれも得意でないとすれば、果たして野生の世界で生き残れるだろうか?
レイチェル「ミス・コノハ、熱心に観察しているようですが、なにか面白い発見でもありましたか?」
紅葉「いいえ、何も。退屈なのでなんとなく見ていただけです」
レイ「動物を見るのが好きですか?」
紅葉「とくに好きでもありません」
レイ「あなたはたしか、絵描きさんでしたね」
紅葉「ただのしがない素人絵描きです」
レイ「絵描き道具が持ち込めなくて残念でしたね」
紅葉「はい。でも、規則ですから仕方ありません」
このやたらと親しげに話してくるレイチェルというのも、かなり「食えない人」のよう。
さりげない会話で探りを入れてくるようです。とにかく当たり障りのない会話で済ませた方が無難でしょう。
あとは自室でおとなしく過ごすが、何やら全身がかゆい。
服を脱いでみると皮膚のあちこちにぶつぶつや湿疹やら、かさぶた状になったのやら、ひどいことになっていました。
いつも持ち歩いている軟膏「雪の元」を塗ってみたら、少し症状が和らいだよう。
しかし、これはどうしたことか。
これがレイチェルの言う「伝染病」の症状なのか?
それとも、あの飲まされた薬の影響か?
あるいは、基地に入るときに打たれた注射のせいか?
このことは黙っていて、もう少し様子を見た方が良いのか?
ともかく今日はもう寝て、明日に備えなければ体力がもちません。
次回につづく…
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研究所に来て二日目の朝。
みな食堂に集まりましたが、ひとりの参加者の姿がありませんでした。
レイチェル「ミスター・キムラは体調を崩し、医療部門に隔離されました。伝染病の疑いがあるからです」
紅葉「……(昨日、いちばんはしゃいで、大騒ぎしていた人だ…)」
レイチェル「皆さんには念のために、薬を服用してもらいます。予防効果があります」
参加者「なに? 十錠も飲まなくちゃならんのか?」
昨日は明るかった参加者達の表情が今日は冴えない。
「見学可能なところは昨日のうちに全部見てしまって、ほかの場所は立ち入り禁止。一週間ここでどうやって過ごせば良いんだ?」
「遊び道具でも持ってくるんだったな」
「チェス盤はあるようだが…」
「いや、チェスは知りません。将棋ならできるんですが…」
参加者の一人・田中「それにしても、なんだか監禁状態のような感じがしませんか?」
「まあ、ぶっちゃけそんな感じだけどな。どこでもお役所仕事は融通が利かないものさ」
田中「それに参加者六人で一週間というのも引っかかってるんです」
「なにが?」
田中「アガサ・クリスティーのアレですよ」
「あれって、何? 『そして誰もいなくなった』くらいしか知らんが」
田中「それですよ」
「あれは死んだの六人だったか?」
田中「そこまでは憶えてませんが、今回のツアーの場合、一日で一人ずつ消えてゆけば最終日にはちょうど誰もいなくなる計算です」
「うむ、現に今朝一人いなくなってるしな」
「よせよ、縁起でもねえ」
「このはさん、でしたかな? あなたはどう思いますか?」
紅葉「さあ、頭の鈍いわたしには皆目見当はつきませんわ」
「こりゃ失礼、あなたにはふさわしくないお話でしたか(笑)」
陰謀の臭いはツアーの最初からありました。
そもそも政府が何か強制するというのは、悪いことに決まっています。
もし本当に正しいことなら、強制せずに丁寧に説明すれば相手が納得するはずなのです。
そして、陰謀のただ中に居るときは、冷静沈着に行動し、決してうかつなことを口にしてはいけません。
もし次に消えるとしたら、「監禁状態」とか「アガサ・クリスティー」を引き合いに出したあの人であると、だいたい相場が決まっているのです。
ツアーの規制で、筆記具や写真機も持って来られませんでした。絵描きの道具があれば退屈しないのですが、それもダメでした。
本を少し持ってきたので開いてみましたが、どうも気になって集中できません。
これからどうなるか不安なのに加え、あの奇妙な「猿」のことです。
あの「猿」はどこか違和感がありました。
どんな奇妙な動物でも、生活環境に適合した姿をしているはずです。
動物を観察するには始めに糞と足跡を見つけることだ、という話をどこかで聞いたことがあります。
糞から食性がわかりますし、足跡つまり足の形状がわかれば生息域の環境もある程度わかります。
とくに霊長目はものをつかむ手に大きな特徴が表れているはずです。
わたしは「猿」を見に行きました。
飼育室の前に来ましたが、「猿」は昨日のようには飛びかかってきません。
わたしの顔を覚えて「猿」の方が驚かなくなったからだろうか?
それともわたしを驚かせないように気を利かせているつもりなのだろうか?
とりあえず「猿」をじっと見る。
「猿」はわたしが見ているのを気にしているようだが、敢えて平静を装っているようにも見える。
やはり、違和感があったのは当たっていました。
手の形がほとんど人間そっくりです。五本の指がそれぞれ独立して動かせるようです。そんな動物が人間以外にいたのかな?
足の形もほとんど人間と変わりません。ただ、足の力が弱く立ち続けるのが大変なようです。
この「猿」が、四つんばいで歩くのも、二足歩行も、木に登るのも、いずれも得意でないとすれば、果たして野生の世界で生き残れるだろうか?
レイチェル「ミス・コノハ、熱心に観察しているようですが、なにか面白い発見でもありましたか?」
紅葉「いいえ、何も。退屈なのでなんとなく見ていただけです」
レイ「動物を見るのが好きですか?」
紅葉「とくに好きでもありません」
レイ「あなたはたしか、絵描きさんでしたね」
紅葉「ただのしがない素人絵描きです」
レイ「絵描き道具が持ち込めなくて残念でしたね」
紅葉「はい。でも、規則ですから仕方ありません」
このやたらと親しげに話してくるレイチェルというのも、かなり「食えない人」のよう。
さりげない会話で探りを入れてくるようです。とにかく当たり障りのない会話で済ませた方が無難でしょう。
あとは自室でおとなしく過ごすが、何やら全身がかゆい。
服を脱いでみると皮膚のあちこちにぶつぶつや湿疹やら、かさぶた状になったのやら、ひどいことになっていました。
いつも持ち歩いている軟膏「雪の元」を塗ってみたら、少し症状が和らいだよう。
しかし、これはどうしたことか。
これがレイチェルの言う「伝染病」の症状なのか?
それとも、あの飲まされた薬の影響か?
あるいは、基地に入るときに打たれた注射のせいか?
このことは黙っていて、もう少し様子を見た方が良いのか?
ともかく今日はもう寝て、明日に備えなければ体力がもちません。
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