チキンナゲット事件は確かにショッキングだったが、企業が叩かれだすと、大衆というのは容赦がない。具体的に暴動をしないとか略奪をしないとかいうけど、ネットの炎上というのは、基本的に同じ精神構造だろう。
まあ、その前からネット上では度々話題の上がることだが、特に俎上にあがる話題に、マックのポテトが腐らない、というのがある。比較検証の写真つき(または動画の場合もある)で、廻りの(他社など)ポテトは黒く腐っていくのに対して、マックのポテトだけはいつまでも腐らず残るというものだ。ハンバーガーだって腐らないらしい。衝撃、というか、こんなものを食わされて、大変だ!ということらしい。毒を飲んだらどうなるかというのは量が問題で…、というのはもうめんどくさいので止めるが、要するにマックを食べたことがある多くの人に、気持ち悪くなってもらいたい目的があるようだ。
こういうのは情報の非対称性というのがあって、安全かどうかなんて検証は専門家が厳密にやらないことには、なかなか素人には分かりづらいというのがまずあるだろう。ジャーナリズムが時々事実の検証に失敗するのは、あるバイアスで物事を見ようと最初から問題のみをクローズアップしすぎてしまうことにあるようだ。さらにこのような事実らしい写真つきのものを見せられると、最初の驚きから思考がストップしてしまうことになるものらしい。これが詐欺のテクニックでもあるが、すぐにそのものが偽モノだなんて検証が出来ないわけで(何しろ実験には準備や時間がかかる)、驚かせる目的だけならこれだけで十分だ。さらにネットだと勝手に驚いた人が拡散してくれる。元ネタがどこかにもぐり込んでも、それこそ素人が探し出せるものではなかろう。
いやそれでも私は実験して実際に見た、という人もでてくる。身近に居たら問いただすことも出来るが、小保方さんの例でも分かるとおり、本人がそうだといっても簡単にそれが本当かは、やはりまた別の第三者が証明するよりないだろう。そんなことをやはりわざわざ素人が、何でやらなければならないのか。結局事実なんて本当には、簡単に分かりえないものなのだ。
それでもやっぱりネット上には、これを実際に検証してみようという人が必ず出てくる。ちゃんとググればなんでもないことだが、数が少なくて埋もれている場合も多くて、簡単に探し出せないという難点はあるようだ。しかしながらやはり検証してみると、マックのポテトが腐らないということはない。まあ、当たり前だろうが、検証した人は本当にえらいと思う。別にマックの回し者ではなく、立ち止まって物事を見ることができる人もいるということだ。
そのようなことは簡単に埋もれやすいし、確かにそんなにショッキングでもないし、場合によっては面白くないことかもしれない。びっくりした人が悪いとは思わないが、一緒に拡散するようなことはせずに、一度驚いた自分を良く考えてみることも必要ではないか。マックの魅力が何なのかは僕には良く知らないことだけれど、そういうマックを選択した自分のことを考えてみてもいいのではないか。結局は一時の勢いを失ったものが、その輝きを失いかけているように見える。そういう落ち目のものが叩かれるのを、面白がってみているということはないだろうか。これがいじめの本質のようなもので、立場が変わるといじめる人間を憎んでいた自分も居たはずなのだ。驚くべきは、そういう自分の人間性の方だ。人間の性質というのは、本来的に恐ろしいものなのだ。