カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

古い現在と未来の話   スタートレック4・故郷への長い道

2014-08-24 | 映画

スタートレック4・故郷への長い道/レナード・ニモイ監督

 とにかくへんてこな話なのだが、これが面白いのは確かだ。古さも適当にいいし、だから懐かしさもあるが、しかし過去にはこんな話があったのか、という素直な驚きも覚える。やっぱりアメリカ人ってどこか変だな、というのが良くわかるし、しかしどこか善人で平和だという感じも漂っていて、時代もあるんだろうが和んでしまうという感じかもしれない。
 捕鯨問題に対する偏見というのはあるのだが、そういうことは鯨に聞いてみたほうが早い。当然それもやっていて反則技だが、これもドラマとしては面白い。スポック博士はまじめに鯨の入っているプールに飛び込んでそういうことを聞き出してしまう(ことができるということになっている)。これくらいの超人なら、わざわざ地球人と付き合うまでも無いことのようにも感じるが、アメリカ人はそんなことは気にしないのだろう。未来のアメリカ人が過去の(当時は現在の)アメリカ人を批評しているわけだが、自分勝手だからいつまでも傲慢さは変わらないということを示唆してもいる。もちろんそのあたりに屈託は無くて、悪気も何も無い。あるのはその場に流れる違和感を楽しむコメディだ。実際に笑えるのでいいのだけれど、本当はまじめな思想なども含まれているのかもしれない。
 未来の政治が必ずしも優れていないだろう感じも変なんだが(ほとんど大岡越前だ)、しかし、宇宙人が集まる民主主義というのはそういうものなのかもしれない。そもそも民主主義の成立のために長い時間をかけて現在に至っているわけで、将来が劣化しないという保障は無い。そもそも現在であってもほころびは十分に見て取れるわけで、そのあたりのことは感慨深いものがある。多かれ少なかれ米国民主主義の影響を受けて生活している僕らにしてみても、このような時代の流れの中にある考え方を見ることで、その変遷や思想を垣間見ることができる。どう考えても過去も未来も変だけれど、それはこの映画が作られた時代と、今の空気の違いがそのままパロディになってしまっている所為だろう。古い前衛的な映画というのは、そういう運命を辿ることになるということだろうか。
 タイムトラベルものだからそのあたりの風俗の違いがいろいろギャグになっているわけだけれど、恐らく今の未来像とは軌道修正が必要になっており、サルから分かれてチンパンジーやゴリラとなった未来と、今の人類が違うような感じになっている可能性が高い。たぶん人間側から主観的に眺めているわけだが、そういうずるい視点から物を言わせてもらうと、未来は違ったものになって良かった面と悪かった面が混在している。スタートレック的な未来像は恐らく訪れる可能性は低くなった残念さもあるが、だからといって未来が明るいものではないのには変わりは無い。これはやはり悲しむべきところかもしれないのだが、まあ、未来なんて詰まるところ予測の範囲でしか分かりえない。楽観的に行こうじゃないか。
 スポック博士は、この映画の監督さんも兼任しているらしい。カーク提督もこのあいだコロンボに出ていた役者さんだ(ルーサン刑事)。個人的にはそのような米国芸能界のつながりにもなんとなく興味のわくところであるが、あの時代に活躍した役者さんたちなんだから当たり前なのだろう。思えば確かにいつの間にか年を取ってしまったものであるなあ。
コメント
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