カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

日本を少し知っている中国若者事情   中国のヤバい正体

2015-01-09 | 読書

中国のヤバい正体/孫向文著(大洋図書)

 サブタイトルには、「中国人漫画家が命がけで書いた」とある。勇気ある告発漫画という捉え方であるが、それは必ずしも間違っていないだろうが、やはり日本の読者に向けた溜飲本の類ではある。そこまで驚愕の内容ではないし、日本の一般人が、おそらく中国にもそういう人は居るんじゃないかという認識くらいは持っていたはずの人物が漫画家であるというのが最大の価値だろう。
 しかしながらそうであるからこそ、これはそれなりに等身大に面白くもあるから不思議だ。著者は極端な反中国政府思想の人間ではなさそうだし、さらにべったりの日本人びいきということでもない。いや中国国内の人間からすると、かなり日本寄りの売国中国人という捉え方もできないではなかろうが、しかし見たところ、それなりに普通の中国人の若者と考えていいのではないか。そういう若者が日本の漫画に影響を受けて、日本の漫画の世界で生きていきたいと考えている。そういうことで日本を知って徐々に自国に疑問を持つさまが、素朴に描かれているという感じだ。もう少しその動機を分析するならば、彼は少しエッチな漫画を描きたいということがミソという気がする。おそらく日本のそのようなソフトな学園もののような世界が、彼の漫画の出発点なのだろう。ところがそういう漫画を中国で描くことはほとんど絶望的に難しいらしい。軽い路線のわいせつがダメなだけでなく、政治や暴力であっても、日本の漫画に当然のものであっても、驚くほど規制が厳しい。そうでありながらパクリや模倣は全部OKという現実にさらされて、疑問に思わない方がどうかしているということになる。
 普段の生活では、同世代の仲間とともに、普通に反日の感情も理解できている。そのように教えられているし、実際に腹立たしいニュースは聞かされている。興味本位で反日のデモにも参加している。そうであるけれどそのデモの内容にも過激すぎるとついていけなくなって、離脱したりしている。同調と反発がないまぜになって、複雑な中国人若者心理がなんとなくリアルに伝わってくる。ゆるいところもあるし、かわいそうなところもある。明らかな誤解も含まれている様だし、しかし社会の不満が上手く吐き出されてもいない感じすらする。そのような中このような漫画を描いているのも、少しでも売れてお金になればいい、という素直な気持ちもあるようだ。そうして本当に書きたい漫画は、やはり少しエッチな感じの漫画であるらしい。純粋といえばそうで、だからこそこの漫画の意味もやはり大きいのかもしれない。中国を悪く言って日本人の気分を良くするために書いているというより、だからそこまで深く考えていなくても、やはり普通の感情としておかしさを気づいていける人間ドラマになっているからだろう。この中途半端に見える中国の若者でさえ、日本の事であれば最大の注意を払って発言などをセーブしながら生活していかなければならないらしいということが、この国の将来をおそらく変えるのではないか、と思う。もちろんそれは、単なる淡い期待に過ぎないのかもしれないけれど…。
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