カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

なんでプロレス・ファンなのかは謎だが   言語学バーリ・トゥード

2021-12-06 | 読書

言語学バーリ・トゥード/川添愛著(東京大学出版会)

 副題は「Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか」。東京大学出版会のPR誌に「UP」(university press の略らしい)というのがあって、最近になって定期購読を始めた。今年の初めの号から始めたようにしても良い、ということだったので、切りよく遡って年間購読することにした。そこで連載されていたものをまとめた本である。3か月に一度のスパンで連載しているようで、2018年からの12本と書き下ろし4回分が載せてある。
 言語学的なウンチクが語られているのはもちろんだが、基本的にはギャグをちりばめた面白文章で、笑いを取るためにそれなりに凝った文体になっている。その理由も文中に説明があるが、これもそれなりに複雑な事情があって面白いのだが、要するに面白く読んでもらうための目論見であろう。ちょっとふざけすぎているようなところも無いではないが、読みだすとこれがそれなりに一定のテンポのようなものを形作っており、ハマると笑いの連続性が生まれる。大声で笑ったりはしていないと思うが、フフフ、くらいは笑わされているかもしれない。僕よりちょっと若いくらいの人みたいで、昔の事情もそれなりにリアルにわかる。僕はプロレスには疎い方だが、それでも友人にプロレス・ファンくらいはいるので、なんとなくだが、それも分かる。なかなか核心に迫らない周辺事項からじわじわと事例などが語られて、いつの間にかそれなりに深いところまで来ているのではないか、と思われる言語学的なセンスがつかめるかもしれない。そういう意味ではお得な感じもする学術エッセイである。
 僕のブログでも言葉については、一つの枠を作って定期的に語っている。特に日本語というのは普段使っている言語なので、話者としての言い分がある。また言葉を使って普段コミュニケーションははかっているわけで、それによるトラブルのようなことが度々起こる。そういう中にあって言葉について、考えざるを得ない人(日本人)というのは日常的にいるはずである。それで、そういった問題ごとに対して有用なことが書いてあるのかというと、正直に言ってすべて当てはまるなんてことは不可能であるにせよ、なんとなく少しだけ掠るようにして当たるものがあるのではないか。僕は最近の「Go to トラベル」などの言い回しだとか、キャッチコピーの「カワイイは作れる」という言い回しの謎をこれで知った。なんとなく変だな、とは思うものの、それがどういう構造をもって違和感があるのか、あんがい分からないものなのだ。
 もっともそれが駄目であるとか間違いであるとか断罪している本では無い。言葉というのは、そういう実態を持つものなのだ、ということを言っているのだ。かといって肯定しているという意味ではないので、そういうところも読んで理解して欲しいところだ。
 ところでこれは図書館で借りたのだが、背表紙に郷土作家、と書かれている。うん?、と思ってググってみると、北陽台から九大に進まれた方らしい。なんだか親近感がわいてきた(全然かすってもいないけど)。それで他の著書はちゃんとアマゾンでクリックしました。この本についてもレファ本として使えそうなので、おそらく購入予定です。地元の作家さん、頑張ってください。
コメント
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