正しい日 間違えた日/ホン・サンス監督
講演会のためにやってきた町だったが、予定より一日早くついてしまった。寺を散策していると一人の可愛らしい女性と知り合う。そのままいろいろと話をしていて、彼女は絵を描くらしいことを知り、書いたものを見せてもらったりする。夜も食事に行こうということになって、だんだんと気持ちが抑えられなくなっていくのだった。
ずっと会話をしていて、調子に乗って酒を飲みすぎて、フラフラになって失敗しているように見える。そういう日があって、また同じ設定で出会って飲んだくれる日が繰り返される。同じ日を違う展開で送る男女の恋愛模様を描いているということなんだろうか。いずれにしても、男である僕から見ていると、単にいい感じに思わせぶりな若い女に振り回されて、浮気しようとしている男にしか見えない。
確かにちょっと映画的でないところはたくさんある。まず映画の科白としては、なんだかかなりまどろっこしい。しかしながら考えてみると、現実の会話というのは、そんなものかもしれない。相手を探るようにいったり来たり。実際何を言っているのかよく分からない。しかしながら時間を共有するうちに、相手の好ましさは伝わるものなのかもしれない。もちろんその逆もあるが。
酔っぱらわないとうまく相手に気持ちまで打ち明けられないというのは、設定としては分かる。しかしながら僕の性格とは違うものであって、こんなに酔ってまでいってしまうと、もう言わない方がいい気もする。それが制御できない、というのも分かるが、出直すべきである。なんだかやっちまったな、という雰囲気があって、そういうのが映画的にいい、という話なんだろう。芸術というのは、ほんとにまどろっこしいことである。
邦題の所為なのかは分からないのだが、どっちの話が正しくて、どっちの話が間違っていたのか、そもそも僕にはそれが分からなかった。どっちもかなり失敗したんじゃないか。どっちにも未来はないのじゃないか。そういう夜があったけど、そういう恥ずかしい思い出をもとに、日常に戻るべきだろう。そういう映画じゃないんだろうけどね。