ロープ/アルフレッド・ヒッチコック監督
ヒッチコック初のカラー作品。元は舞台劇のようだし、実際の事件もモチーフにしているという。当時のフィルムは15分くらいしか連続撮影ができなかったのだが、1時間20分の尺の映画が、あたかもワンカットで撮られたような工夫がなされていることでも有名(ヒッチコックにはそういうのが多いけど)。さて、内容は、ということなんであるが……。
最初に二人の男が一人の男の首を絞めて殺すところから始まる(これが題名のロープの由来である)。蓋つきの収納箱(本などを詰めているようだ。チェストっていう家具らしいですね。まあ形態がいろいろあるんだろうけど)に死体を隠し、その夜は最初から殺した友人の両親や恋人、そうして共通の恩師を招いてパーティを催すのである。要するにそんなことをしてもバレはしないという確信があって(それだけ自分たちは頭がいいという証明らしい)、そういう状況でスリルを味わって楽しもうという趣向なのである。収納箱の上に燭台を置いて料理の皿を並べ、集まった人たちと居なくなった(殺した)男が何故か来ないのだけれどどうしたものか、というような会話を交わして楽しもうとする。一人の男はこの状況に興奮して楽しんでいるのかもしれないが、もう一人の付き合わされた友人は、内心ヒヤヒヤして奇矯な行動に出たりしてしまう。バレそうな不安から、自分たちが殺したことを告白してしまいそうなのだ。
恩師の先生がジェームス・スチュワートで、事実上の主役であることから、このやり取りは、失敗に終わることが運命づけられていることが最初から分かっている。こういう撮影方法や会話劇という意味では当時の人々は面白がることができたのかもしれないが、現代の僕らにはちょっとハードルが低すぎる感じである。僕らは既に多くのトリックやサスペンスを経験している。元はヒッチコックらの功績だとはいえるのだが、こういう仕掛けは、すでになんとなく陳腐化しているのかもしれない。彼らは頭は良かったのかもしれないが限りなく愚かで、そうしてその一生をその時点で失う訳である。なんともむなしいことではないか。
ということで、映画好きでそういう歴史的な仕掛けを確認したい人には、
楽しめるかもしれない。映画でなく舞台演劇なら、これはこれでいいのだろうと思われる。今となっては、古典というのはこういうものか、という作品かもしれない。