AWA@TELL まいにち

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科挙 中国の試験地獄 (中公新書)

2021年10月04日 | 


 つくづく、あの国の、いや、あの民族の、システムを作るエネルギー、知恵、配慮というものはすごい。感嘆する。そして、それをすり抜けようとする知恵、それもすごい。

 いや、先ごろ、習近平政権が私塾を事実上禁止するという政策をとったのを見て、今度は「栄養士」とか「保育士」とかいう肩書で家庭に入って家庭教師をするという抜け道を考えたという記事なんかも読んで、やっぱり人間は変わらない、と思ってまた読み始めた。

 不正がないように、答案を官僚が書きうつしていくという話、それも複数の段階で、というのを見ると字の形で誰かがわからないようにするという不正防止の熱意を感じる一方で、答案の冒頭にこの文字を入れておく、というのが符号になっていたとかいうのを見ると、それでも抜け道があるのか、とやはり驚く。

 中国や韓国、科挙があった国は教育、受験、というものに対する意識が日本とは違うのよね、と簡単に結論にもっていきそうになる自分がいるんだけど、科挙のおかげで貴族制度が崩れていった、王朝が変わるたびに王朝に帰省していた貴族が没落していったというのを見ていくと、それぞれの王朝が皇帝に権力を集中させようと努力したのに気づく。どっかに書いたけど、「今」を解決するための制度は、未来には対応できんのだよな。三国志の魏王朝が藩屏になるはずの身内を冷遇したことで王朝が倒れたから、続く晋は身内を厚遇して、そのために収拾がつかない争いが続いたとか、まあ、歴史は面白いわ。
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