秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ(もんてきたかえ・2024)

2023年12月21日 | Weblog
祖谷山に今年も師走が、訪れました。
お爺さんとお婆さんは、今年も健在です。庭の南天の実は、少しだけ雪化粧をしています。
池の水は、薄く氷を張っております。

お爺さんは囲炉裏の前で、しめ縄を編んでおりました。
お婆さんは、傍でお餅を丸めておりました。
『婆さんよ、今年はジョージとヒデオは、もどるんこ?なんぞ、びんあったこ?』
「明日、もんてくるってイヨッタわ」
『嫁さんらは戻らんのこ?』

「嫁さんは、冬は戻らんと。布団冷たいきん、ねれんのじゃと」
『布団冷たいって、何をくそごじゃ、言よんぞ、いそげえな電気毛布やこし使いよるきん、
体がどなまくれになっとんじゃわ』
「しよないわの、嫁さんの言うとおりにしよらな、ワタシらも、世話かけて迷惑かけるんじゃけんの、爺さんみたいに、きたなしげえに言よったら、まっこと、だれっちゃあ、寄り付かんわ」

『婆さんよ、世話かけるって言うけんど、あれぞ、ジョージにも、ヒデオにも、山残しとるけんの、
あれぞ、おららが死んだら、あのしらは、山売ったらガイに息できるぞ、
あとあと、なんちゃあ、よわらんわ。嫁さんも孫もよろこぶぞ』
「爺さんは、そんつらこと思いよんこ、隣のフルデラの山、ナンボで売れたか、聞いてないかえ」
『フルデラのしは、山売ったんこ?そんつら話は聞いてないぞ』

「フルデラの隣のしもに出とるしの、空き家あろがえ、どこぞ大阪ってイヨッタわ、
その若いしが、あとに子供もおらんけん、山のしまいつけるきん、てんでに売らんかえって、言われたんじゃと。
いだぁ、フルデラのしも、隣のしから、水をもらいよるきん、断れなんだと。
しよないわの、機嫌そこねて、水やらんって言われたら、よわるわの」

『婆さんよ、水は一回やるって言うたら、親子3代はもろて飲めるんぞ、まだ、3代はきてなかろうが』
「フルデラの息子で、3代じゃわの。息子らがもんたときに、水なかったら弱るけん、言うようにしたんじゃわ。
爺さんみたいに、わがだけ良かったら

ええしには、わかるまい。爺さんは、昔から、我がの酒だけあてごおとったら、
機嫌ええけん、まっこと、長生きするわ、爺さんは』
「はがげえに言うのうや、オラは山の仕事して、たいがいに銭はもうけて、みなを、やしのうたぞ。
オラが仕事できんようになったら、婆さんらは、エラげえになって、オラがしらんまに、
なんでも決めて、たいがいに、きやいくそ悪かったけんど、オラは言わなんだ。ちったあ、ありがたいと思えよ」

『だれっちゃあ、有難うないやこし、いよらんわの、まっことたいがいに憎まれくち、言えろよ、
しらんしが、聞きよったら、あのしらは、こつごもりきて、何を言よんだろって呆れるぞよ』
「おらは、なんちゃあ、いよらんのに、婆さんがきやいくそ悪いこと言うきん、腹たつんじゃわ。
おなごしの、口には勝てんって、死んだフルデラのじさまも、イヨッタわ。
言いがちばっかりしよる、おなごしのくちは、ひんまがっとるわ!ひん曲がって、ひたいばちに、つかえとるわ」

お婆さんは、手拭いを取り、お茶の支度をしながら、手鏡を見ました。
そして、呟きました。
「ひたいばちには、付いてないけん、まだ ことないわ‥」

あくる日。
庭先で、車の音がしました。
白いホンダステップワゴンが、止まりました。
「まあ、みな、もんてきたんかー」
庭先には、ジョージとヒデオ、そして、その妻と子供達。
妻の手には、しっかりと、電気毛布が握られていました。
お爺さんお婆さんの笑顔が、くしゃくしゃです。
賑やかに、大晦日の夜は過ぎていきました。

愛する人と
想う人と
心を結び合い
良き年の瀬を お迎えください。

『もんてきたかえ』
『もんてきたよ』

            かしこ














コメント
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