秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ(東祖谷ウルトラマラソン・初日)

2024年05月21日 | Weblog
前略。
初日は夏日でありました。参加ランナー14名
朝の5時に京上の宿を出発。 
小島大日堂、釣井木村家、龍宮崖コテージ、阿佐家、昼食後、大枝武家屋敷喜多家。
更に中上集落にある、落合集落展望所。そして1日目のゴール、
案山子の待つ名頃を目指して、炎天下をひたすら走る。歩く。立ち止まる。

2日目は昨日とは真逆の冷たい雨。朝からずっと降り止まない。
冷たい雨に打たれながら、名頃を出発。そして難所の落合峠!電波は圏外。
この冷たい雨が、ランナー達を苦しめた。と思う。
今回、初チャレンジした、若者がいた。マラソン未経験。時々祖谷を訪れている、祖谷好き。
話を聞いて、なんか面白そう?と軽い軽いノリで、参加したみたいだ。
交流会の夜、自ら、皆さんの足を引っ張ります。すみませんと、公言していた、爽やかな好青年。

⁂私は男前には、全て好青年と書く。悪しからず。
マラソン未経験。100キロマラソンも、当然未経験。
他のランナー達は、軽装なのに、この若者、重たいリュックを前掛けにしている。大事そうに抱えている。
その中身は、一眼レフカメラ。
姿勢は良い。姿勢よく、歩いている。
初日から足の裏にいくつもマメが出来て、裂けかけて、痛くて走れなくなった。
走れないが、声は軽快だった。
彼の後ろを、時速4キロくらいで、付いて走った。
『大丈夫、頑張れそう?』
と、おばさんは声をかける。

「足のマメが裂けそうで、痛いです」
『コットン、持っているから、とりあえず当てて様子みてみる?』
「ハイッ、ありがとうございます。使わせてもらいます!」
近くの石に座らせて、コットンを渡す。⁂仕事で持ち歩いている、消毒用のコットン。
少し離れて、見守る。
コットンをあてると、大分楽になったらしく、展望所をあとにして、歩き出した。木漏れ日のコースを下って、
再び、炎天下の国道におりた。
再び、後方から彼の背中をずっと、見守る。時々立ち止まり、カメラをその都度とりだして、風景を写している。
相変わらず、姿勢は良い。

姿勢は良いが、苦しいですー、僕はどうしたら良いのでしょうー!の哀愁が、背中に漂っている。
再び、車を止めて、声をかける。
『オーエスワンのゼリー、とりますか?』
「ありがとうございます!頂きます!」
本当に、声は軽快だ!
きっと、彼のお母様が、挨拶だけは、きちんとしなさい!と、躾をして、育てたんだろう。
それと、人様が下さる物は、断ってはいけません!とも、言い聞かせていたのかも?しれない。
彼はゼリーも一気に口に流し込む。
再び、歩き出す。
私も 這うような速度でついて行く。
『虹の見える橋は、まだですか?』
と聞いてくる。
「あと、1時間以上は、かかるかな?」 おばさんは、適当に応える。
虹の谷に、到着した。
再び、写真を、撮っている。
『早い人は、ゴールしているんでしょうね』と、ぽつりと呟く。
「大丈夫よ。自分のペースで、ゆっくり行こう」
おばさんは、優しく声をかける。こんなに優しい声が、自分のどこに隠れていたのか、おばさんは、考えた。
考えながら、私は多重人格なのかも知れないと、自分を納得させた。
「ピーナッツ、食べる?」
『はいっ、頂きます』
私の車のダッシュボードの中には、大量のピーナッツの小袋が、入っている。正確に白状すれば、
在宅の訪問先の池田町の山の上の利用者様が、おやつに食べなさいと、行く度に持たせてくれるピーナッツだ。
池田町の山の上の利用者の手から、放たれたピーナッツを、今、沖縄県の若者が、それを食べて、空腹を満たしている。なんか、楽しい~!
アリナミンのパウチのゼリーも、渡した。一気に口に運ばれた。
「この、掘っている石ね、これね、日浦の義時さんって言う、面白いオッちゃんが昔いてね、
全部一人で掘ったんだよー。凄いでしょう!」
私は、しもの人の前では、キチンと標準語が使える。エライッ!わたしっ!
彼は何枚も写真を、撮っていた。
なんか、義時爺が、喜んでくれている気配がした。
再び、彼は初日のゴールを目指し、歩き始めた。
菅生から、C子ちゃんと一緒に一台で彼の背中を、ゆっくり追いかけた。
しばらくすると、途中でリタイヤされた方が、車で駆けつけてきてくれた。
ここからは、私達で見守りますから、大丈夫ですとのことで、
私達は、短いドライブを楽しんで、1日目の帰路に着いた。
         後半に続く