こたつに入りテレビでもゆっくり見たいのだが、そうはさせてくれないのが年の暮れだ。せわしない。きのうは部屋の片付けを一年ぶりに行う。机の上には登山用の2万5千分の1の地図が山積みになっている。典型的なO型だけに片付けは苦手だ、なんていってられない。次にブドウを剪定し小枝は菜園に持っていく。きょうは正月料理の材料仕入れ。コマツナ、シュンギク、キョウナ、ホウレンソウ、カブ、ダイコン、ニンジン、下仁田ネギ、九条太ネギ、サトイモ、タアサイ、ブロッコリーなどを収穫する。
一方で越年する苗たち。ソラマメ、エンドウ、タマネギ、下仁田ネギそれに春キャベツ。私の気持ちを来年につないでくれる。
わが陋屋の正月飾りをすませた。
門扉にささやかな松飾り
玄関扉
玄関
昨晩の尾籠な話にお付き合いを。正面の窓ガラスの前に都心のまばゆい夜景が広がっている。そのきらびやかさといったらない。見事な光の世界だ。ここは世界初の6ツ星ホテルに認定された「マンダリンオリエンタル東京」
の38階のトイレ。小便器に向かうとこの世界が突然眼下に広がる。そこに身を置いて用を足すのだから落ち着かない。戸惑うといったほうがいい。出るものも
出ないのではと心配になる。ここか、とすぐに納得した。ここのトイレはホテル開業時に話題になった。大きな一枚ガラスの前にこしらえた小便器に向かうと、
夜景を見下ろしながらの格好になる。一瞬たじろぐ。まるでビルの窓からしているような錯覚になる。そんな感覚も一瞬だ。すぐに爽快になる。あれっ、これは
登山のときに尾根から山並みを見ながらのそれに似ていないか。「トイレを見学に行ってきたのかい」なんて茶化されそうだが、この都内トップクラスのホテ
ル、たしかに山ヤと百姓をやっている私には縁のない所だ。「おばちゃん、お銚子いっぽん」なんて言いながら酔ってくだを巻いている世界からたまには抜け出
して身を置くのもいい。宗旨変えしたのかいなんていわれそうだ。
満点の出来のキャベツ
塵ひとつなくぴかぴかに磨かれた空間から、いきなり泥だらけの世界に入ることにする。いきなり異次元空間に飛ぶので気持ちを切り替えるのが大変だ。私には華やかな人工的空間よりやはり自然のほうがよほどほっとできる。
た
まにはキャベツを取り上げないといけない。なにしろ今年は上出来なのだから。よく出来た。満点に近い出来だ。定植してから収穫までずっと防虫ネットをかぶ
せてきたおかげである。白菜とちがって虫食いもなく見た目がいい。まさにキャベツらしいキャベルの形に仕上がった。キャベツは嫌いというわけでもないのだ
が、進んで食べようとはしないそんな私でも、キャベツの取りたては、これならというほど美味しいことがわかる。
いまキャベツは霜にあたり、表の葉が茶色に変色してきたが、一枚むけがばあざやかな緑の葉が現れる。キャベツが寒さにあたると味がどうなるのか。でもキャベツは秋冬ものより春キャベツが一番うまいと思う。その苗も順調に育っている。
ウオーキングしていたら、カラスの群れ。ほかの季節にはこんな光景は見られない。カラスにどこまで近づけるか。そっと足を忍ばせて近づいていく。見張り番が合図をするのか。一斉に飛び立つ。カラスが計る人間との距離。いったい何メートルなのだろう。
正月用の白菜のお香香(おこうこ)を漬けるため、今月初旬に続いて2回目の収穫をした。1回目に漬けたおこうこは冬の食卓には欠かせない好物だけにすぐに食べてしまった。正月用だけにこんどは少し多めに漬けてもらおう。
白菜は私の不注意でヨトウムシの総攻撃をくらって満身創痍の状態。いまも後遺症から立ち直れない。たしかに見た目が悪いのだが、漬けるには問題ないようなのでほっとしている。
晩酌の後、白菜のお香香を七味を落した醤油につけ、それをご飯に巻いて口に入れる。これがたまらない。お節料理に飽きた口にもいい。口の中がさっぱりとしてはし休めにはこの上ない。
これも漬物。たくあんの浅漬けを作るため1週間前にダイコンを畑に干した。「へ」の字にしなうまでもう少し時間がかかるようだ。畑から家に持ち帰り、こんどは
ブドウ棚に干してある。早く口に入れたいのだが、正月には間に合わない。たくあんは初挑戦だけにまずは試しに漬けてみる。うまいとなったら、次回から多く
漬ける。菜園にはまだまだダイコンが余っているのだから、漬物に回せるのならそれに越したことはない。ブドウ棚でのダイコン干し。わが家の歳末ののどかな
風景である。
今年もいよいよ押し詰まり、振り返るとあっという間の一年であった。年とともに時の過ぎる速さが増してき た。私の趣味は山登りと野良仕事に限られつつある。いずれも四季を追い、四季に追われる。それだけに季節の移ろいには敏感で、四季のそれぞれを愉しむ。こ のところ毎年のように「早いもんだなあ」と同じ呟きだ。テントをかついだ夏山登山、暑い中のスイカ取りなどきのうのことのようだ。
「サトイモがなくなったので取ってきて」とかみさん。
サトイモは11月下旬にすべて掘り出して保存のため埋め戻した。正
月用にたっぷりある。もったいないからどんどん食べてほしい。土の中から取り出す。まったく変化はない。サトイモは暮れから正月の惣菜によく使う。今回は
にっころがし。泥芋がこんな色白に変身。歯触り良し、味良し。そして器量良し。もちろん熱燗の酒に相性がいいのはいうまでもない。
扇状に葉を広げ、見た目も立派な下仁田ネギ
氷雨が降り続くなか、山の仲間が昨日から奥秩父の雁坂峠にテント山行。山では昨夜から今朝までしんしんと雪が降り、テントに積もったことだろう。私のほうは軟弱で先週にすき焼きパーティーの忘年山行を楽しんだ。
この忘年山行のパーティーに下仁田ネギと九条太ネギを提供した。下仁田ネギはまだ少し早いかなと心配したのだが、これが思いのほかうまかった。もう十分食べられる味になっていた。余計な心配だった。寒いうちに食べなければならない下仁田ネギ。ブロッコリー同様にこれも多く作りすぎたから、これからどんどん食べていかなければならない。
一方で、1年先の来年12月に収穫する下仁田ネギの種はすでにまいている。下仁田ネギは種をまいてから口に入るまで少なくとも1年はかかる。
12月上旬に種をまいた。保温のためビニールでトンネル掛けしてある。きょうはそのビニールはずして中をのぞくと芽が出てきていた。一安心なのだが問題は発芽率。発芽率があまりに悪いて少ないといまいちど種をまかなければならない。きょうの見た感じではまだ分からない。
1年先の来年12月に収穫する下仁田ネギの芽が出てきた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カブのスパゲティ
ミスマッチかなと思ったのだが、これが意外や意外、
カブの甘みと香りがとてもいい。なかなかの一品だった
ジャンボブロッコリー。通常の2倍くらいの大きさだ
い くら食べても次から次と収穫できてしまう。毎晩のようにブロッコリーだ。不思議とこれが飽きない。茹でたものにただマヨネーズかドレッシングをかけるだけ のものだ。このような収穫が来春まで続く。こうなったのも作りすぎたからである。自業自得なのだからやむをえないのだが、家庭菜園で、よくもまあここまで 作るのかと思うくらい 作っている。ほかの野菜とのバランスというものを考えない。うまいとなったら多く作る。秋にはアオムシの総攻撃に遭った。葉が無残にも茶色く変色し、ア オ ムシ退治の毎日だった。でも取れたてを来春までいつでも楽しめるんだからありがたいと思わなくては。
この花を見て、ある歌が胸の中に浮かんできた。1962年に吉永小百合とマヒナスターズでヒットした歌「寒い朝」。こんなことをいうと年がばれるのだが、その昔は紅顔の美少年もいまや半死の白頭翁になったのだから、この歌そのものが懐かしい。
♪北風吹きぬく 寒い朝も 心ひとつで暖かくなる 清らかに咲いた 可憐な花を みどりの髪に かざして今日も・・・♪
デジカメの液晶画面に映る白侘助。さらに美しく撮るためにその画面に見入ってしまってなかなかシャッターを切ることができない。日差しがかすかに花弁にさしてきた。いかにもはかなげである。いまだ、と。
これから新年を迎えると次々と侘助が咲いてくる。春のさきがけとなって。このブログでも侘助をなんども取り上げている。
数奇屋侘助 太郎冠者
はざ掛け。様になっている
どんな「たくあん」ができるのか楽しみだ
この冬もダイコンがうまくできた。食べきれない。近所にわけてもまだまだある。このまま畑に放置すると寒さにあたって腐ってしまう。今月下旬にでもす べて抜いて土の中に埋めて保存する。
ダイコン畑を見るたびに「たくあん」ができないものかと思うのだが、わが菜園のダイコンはすべて青首である。たくあん用のダイコンは白首だけと思い込んで いた。ところが、今月上旬の新聞で三浦海岸の青首ダイコンの天日干しが紹介されていた。「五日間干した後、十日間漬け込んで浅漬けのタクアンを作る」のだ という。そうか、青首でもたくあんはできるんだと教えられた。さっそくに浅漬けたくあんを作ろうと、はざ掛けにして天日干しにしている。初挑戦だけに試行 錯誤だ。浅漬けにするものは「へ」の字にしなうぐらいまで干すのがいいのだという。
ダイコンは冬の常備菜としては一番だろう。なにとあわせても自己主張しないので目立たないのだが、これほど重宝する野菜もなのではないか。
私の好きなダイコンのベスト5。
1、おみおつけ。七味をおとす。
2、おでん。これに豆腐にコンニャク。
3、おろし。シラスをのせて醤油をかける。福井のおろしそばもうまい。
4、いぶりがっこ。こればかりは買うしかない。
5、切り干しの煮物。単身赴任のときよく作った。
山 上は大勢の登山者だった。ほとんどがグループで、やはり忘年山行が多いようで大賑わいである。空は晴れ渡り、そのうえ風がない。山上での宴会にはうってつ けの天気になった。茶店を営んでいる老夫婦が「今日は山がよく見える。江ノ島を大型船が行き来しているのが見えた」というほどだ。だから周囲の山並みの景 観は容易に想像できるだろう。
これだけの舞台装置での宴会だ。満足しないわけがない。満腹になった。下山できるのだろうかと心配するほどだった。 たいがい単独行の私の山の食卓はいつも質素で粗末なものだけに、きょうみたいな豪華な“食卓”は初めての経験だった。きっと天女も山の神も、タカもカラス も、うらやましくながめていただろう。舞い降りて来ればよかったのに。
〔コース&タイム〕我孫子6:32=6:45新松戸6:49=7: 44西国分寺7:51=8:14高尾8: 20=8:33藤野8:45ー9:15陣馬山登山口ー(栃谷尾根コース)ー11:25陣馬山(宴会)13:45ー14:45陣馬高原下15:40(バス) =16:15高尾駅16:29(特快)=17:25神田17:28=17:33上野17:46=18:19我孫子
下仁田ネギ、九条太ネギ、キョウナ。
14人分だから大変な量になった。
藤野駅から陣馬山登山口を目指す。
バスを利用しないで歩いた。道すがら柿の木が目立つ。
山里の風景が広がる。農家の軒先には吊るし柿。
思わずこの家の庭先にまで入って行ってしまった。
なんとものどかなかんじがとてもいい。
柿の次は柚子だ。登っていくにつれて柚子の木が多い。
このあたりは柚子の里という。
いつもは単独行の私だが、この日は14人のグループ。
こんな山行は久しぶりのことだ。
みんなと歩くのが最初はなんか照れくさかった。
各自のザックは陣馬行には不釣合いなほど大きめだ。
食材や調理器具をたっぷりと詰め込んでいる。
天気は快晴。今日は展望が期待できるぞ。
ところが山頂手前あたりから雲が広がってきた。
ちょっと心配したが、すぐに雲は消えていった。
真っ白な南アルプスの悪沢岳も赤石岳も見える。
山頂にはぞくぞくとハイカーが集まる。
輪になって愉しんでいる。若い女性グループもいる。
よく来たねと、うれしくてついカメラを向けてしまった。
火力がすごい。
そして鍋も3個用意した。
各自が持ち寄った酒、それに各種の箸休め。
いやあ、すごいのなんのって。
なんといわれようがなんばいもおかわりである。
いくらたべても食材はなくならない。
「もうこれ以上 は食べられないよ」とギブアップ。
よう食べたものである。満腹で放心状態だ。
食べ物は人を幸福にする。
その原理を証明するような喜びの顔である。
そろそろお開きだ。
2時間半ほどの宴会はあっという間に終わった。
食い意地がはっているわけでもないのによく食 べました。
このメンバー、山上の宴会にはよほど慣れている。
片付けも見事だ。私の出番など少しもない。
眺めよりも食い気を満足させて、お決まりの場所 で記念撮影。
殿様ネギらしい風格を感じませんか
日に日にたくましくなるホウレンソウ
旬を迎えている冬野菜。今回はハクサイ、九条太ネギに続いてホウレンソウを取り上げる。大地が芽吹き始める来春まで冬の食卓には欠かせない。特に飲んべえ の私には酒の肴に付きものだ。ホウレンソウの食べ方はいたって簡単だ。まずはおひたし。茹でてかつお節をかけて、そこに醤油を落とすだけのもの。このシンプルゆえに毎晩食 べても飽きがこない。これがベストワンだ。次にベーコンとのバター炒めだろうか。鍋にも使う。常夜鍋である。豚肉とホウレンソウだけの鍋でポン酢で食べる。これ らがホウレンソウを使うおかずのわが家のベストスリーかな。だいたいこんなものである。
寒さにあたるとホウレンソウは目に見えてたくましくなる。存在感が強くなり顔付きまで変わってくる。緑色が濃くなり、葉肉が厚くなる。そして甘みが増す。濃醇な酒の熱燗に負けない強さだ。いいこと尽くめだ。さらに立っていた葉がしだいに地面に平行になり、しまいには地 面にぴったりと張り付く。これは寒さから身を守るためだ。今年は種まきの時期をずらして数回に分けて作ってきた。やればできる。これで来春まで食べ続けることができそうだ。
12月11日に入手したアルプ148号
1970年6月発行
目 次
「バックナンバーがなかなかそろわなくてね」
「愉しんでやってくださいよ」
にこっとして答えてくれた。
こ のオヤジさんのひと言にはっとさせられた。まさにそうなのだ。バックナンバーを探すのは大変だといいながら、それでいてこの古本屋に行くことを楽しみにし ている、そんな自分がいることに気付かせてくれた。残りはあと7冊になった。見つけるのも愉しみ、見つけられないのも楽しみ。足を運ぶだけでも心がはず む。
せっかくこの「アルプ」が創刊号から200号まで手元にあるのだから、なにかホームページで展開できないかと考えて、創刊号から読み始めているのだがホームページでの展開までには至っていない。た だ、読んでいるだけでも、私にとってこれまで見えていなかった新しい山の世界、山の楽しみが重層的に厚味を持って広がってきている。そのことだけはいえ る。まだまだ山を愉しみ尽くしていないことを教えてくれる。先人たちの山での歩みがうらやましく思える。
帰りの電車の中ですぐにアルプを開く。このときが楽しみでもある。目次を見ると串田孫一、上田哲農、辻まこと、泉靖一の名前が見える。真っ先に辻まことの 「山賊の話」。すでに著作集や全集で読んではいるが、これが初出かとついつい読んでしまう。辻まことの世界の心地よさ。少しずつ心が開いていく。
前回も書いたが、昼に神田神保町に行ったとき立ち寄る食べ物屋。夜の酒飲みとは別。■そば屋〔松翁〕猿楽町2-1-7(少し奥まっている)■ビアホール 〔ランチョン〕神田神保町1-6(老舗。昼からビールが飲める。買った本を見ながら)■讃岐うどん〔丸香〕神田小川町3-16-1(最近はもっぱらここ)
ボケたものである。上記の148号はすでに前回入手していることがわかった。残りはてっきり8冊とばかり思い込んでいたのがいけなかった。前回の記事を確認すればいいことなのに。残りは58、60、87、111、136、172号の6冊になる。
The Very Best of Otis Redding Vol.1(1993)
百姓日記のブログの今日は番外になった。