恐る恐る踏み入れたバリエーションルート
道なき道に悪戦苦闘 、はたして歩けるか
(大ブナ尾根の緩やかな道はこのあたりだけ。すっかり葉を落とした)
「その1」と「その2」から続く
惣岳山の頂からは目の前に富士山がそびえている。しかし木々が邪魔してよく見えない。すでに正午を過ぎて逆光だからよけいに見えにくい。「これじゃしょうがない」とつぶやきながら立ち上がり、御前山直下の富士が見えるところへ移動した。ベンチは二つあった。富士がよく見える。ベンチの上から、または目の前の石の上に立つと前の木が邪魔にならないで富士を撮ることができる。この時間だから2週前の雁ケ腹摺山からのような凛とした富士を撮ることはできない。すっかっりスカイラインも鈍くなっている。それでもまあまあの富士を眺められ、撮ることができた。それなりに満足した。
(12:47 午後の逆光にしてはよく撮れた)
(12:49)
(12:51)
ベンチから腰を上げるとき足元にカエデの種を見つけた。「トンボ」だ。ヤマモミジだろうか。拾った。来春にこのタネをポットにまこう。発芽するだろうかと来春にちらっと思いをはせながら、しかし観賞に耐える姿になるには20年ぐらかかるだろうから、それまでオレは生きてるのかな。それでも種をまこう。
(カエデの種。トンボだ)
そこから御前山まですぐだ。頂上からの眺望がよくないことは知っている。雲取山からの石尾根を眺めただけですぐに下山を開始した。
さて下山はどの道をとろうか。予定だと湯久保尾根を下る。しかし待てよ、湯久保尾根はずっと昔に歩いた。今日登るはずだった大ブナ尾根を下りにとって久しぶりに奥多摩湖を見下ろしながら歩くのも悪くない。下山は奥多摩湖まで2時間だ。いまからだと奥多摩湖の3時35分のバスに間に合うかもしれない。大ブナ尾根で下ることにした。登りも下りもあっさりと予定変更である。一人歩きだから綿密な予定を立てる私がきょうはどうしたことか。
この尾根を降りるのには神経を使った。まいった。急な下りはいいのだが、岩混じりの道でその上に落ち葉が降り積もり前日の雨で濡れている。そうなると滑る。私は滑ることに恐怖心を持っている。どうしても腰を引いてしまう。ますます滑りやすくなる。時間が気になるが、ここは気をつけて慎重に降りることにした。それにしても集中力と緊張感を強いられる下りだった。
(13:40 大ブナ尾根。いい雰囲気ですね)
(13:55 右手に登ってきたシダクラ尾根が見える)
(14:30 湖面は西日を反射してまぶしいばかりだ)
(15:20 ヘリが木材を運ぶのをダムから眺める)
湖が見下ろせるところまで来るとヘリコプターがせわしなく往復している。なんのためかわからなかったが、ダムサイトまで降りてきてみるとヘリで材木を運んでいた。伐採地からダム下のところまでピストンで飛んでいるようだ。いまは材木をヘリでおろしているのか。感心しながらヘリの往復をダムの上から見ていた。しかし急がねばならない。10分前にバス停に着いた。どうにか間に合った。
予定は未定にして決定にあらず。自分のボケから予定が狂い出したのだが、こんな一日になるとは思ってもみなかった。よもやシダクラ尾根を登ることになるとは。この予定変更が充実した山歩きになったのだからわからないものである。
(了)