スーパーに食用菊が並ぶこの季節に、
つい手を伸ばしました。
中国の食文化では、菊花茶はありますけれど、
料理の食材として使うのは、日本独自かもしれません。
東北青森を訪れた時、菊の花びらをふんだんに使った菊鍋の美しさに感動し、
南部方言と思われる「おぐらみ」という言葉に、心が響きます。
中国古典文学の世界では、
菊を称賛し詠む歌が非常に多いです。
妖艶すぎず
華やかすぎず
淡泊な香りを放ちつづ、品格が漂う
中国の古典にある菊のイメージ。
台湾茶人李曙韻氏の言葉の数々に、しっくりくるものが多いのです。
李氏が台湾活動の拠点もこの「人澹如菊(ren2 dan4 ru2 ju2)」と名づけています。
茶人のあるべき姿を物語っている気がいたします。
言葉の出処は、唐の詩人司空図『詩品二十四則』の「典雅」から。
その言葉の前半と合わせますと、こうなります。
落花無言 人澹如菊
luo4 hua1 wu2 yan2 ren2 dan4 ru2 ju2
昔の文人は、
咲き終わる花の命を
惜しむような感性の持ち主が多いかもしれません。
そのような時代に生きた司空図氏は、
落花に嘆くように悲しんだりしないように
一輪の菊のように淡々と生きよ
と詠いました。
食用菊を調理する前に、
一つ好きな言葉を思い出しました。