高さがわずか6センチのケースから、ゴロゴロと転がり出てくるのは、
渠江薄片(qu2 jiang1 bo2 pian4)
中国の地名に渠江(きょこう)がつくのは、四川省の渠江(長江の支流)と、
湖南省安化県にある渠江鎮があります。
安化と言えば、安化黒茶を思い出す人が多いのではないでしょうか。
今日のお茶は、安化県渠江鎮の黒茶です。
歴史の記録では、「渠江薄片」のことが、確かに残されているようです。
古銭の形をした「渠江薄片」は、
唐の時代から献上茶として、
宮廷に長く愛でられていたとも言われています。
明の開国皇帝 朱元璋(zhu1 yuan2 zhang1)が「団茶廃止令」を出した以降、
「渠江薄片」は生産中止になり、やがて市場から姿が消えました。
歴史の謎に包まれることが多く、作り方も残されていないそうです。
参考資料によっては、「渠江薄片」が献上茶としての歴史は、
唐から始まり、明の後の清の時代に続くとの記述もあり、
その矛盾に気が付きながらも、
自分の底力のなさに痛感します。
「復刻版」の渠江薄片を作りだしたのは、2006-2007年あたり。
写真の「復刻版」が、手元に届いたのは、三年前の2011年です。
表面では「渠江薄片」の文字、裏面では「黒茶之祖」とあります。
直径4センチ、高さがわずか0.5センチ。
薄い紙に包まれて醇和の香りをします。
手で折って半分だけ蓋碗で淹れてみました。
折った時は、ちょっと硬かったけれど、
軽く洗茶した後、
もう一度お湯で注ぎあてますと、
硬かった片茶が
ほぐれ。。。
やがて茶湯が赤栗色に滲み出す。
癖もえぐみもない、
飲みやすい醇香な味わいです。
二煎ほどストレートで淹れた後、
私流で金木犀を加えてみます。
もしお茶そのものは、単純に「男」と「女」と喩えられることができれば、
ストレートで淹れた渠江薄片は、間違いなく男でした。
金木犀を加えますと、たちまち優しいレディーに変身します。
悠久な歴史のなか、自分はいかにもちっぽけであろうか、
改めて思い知らされています。