仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

テンションがものを言う。Ⅲ

2009年01月07日 15時19分06秒 | Weblog
 マーはもちろん、マサルにも、そこにはいないヴォーカルの声や、ベースのフレーズ、キーボードの重奏な和音が聞こえていた。外から見ているハルには、そのプレイヤーの影さえ見えた。曲はエンディングに向かい、さらにグルーブを増した。そして、エンディングのフィルインに入ったときだった。
 マーの音が変わった。鎖を解かれた猛獣のような激しく、攻撃的な音が今までの楽曲を破壊するかのように打ち出されたのだ。テンポ感も、キープも、グルーブも、すべてがその破壊的な音の中に飲み込まれようとしていた。
 エンディングを待つはずのマサルのギターが唸った。それは調教師のムチのように、荒々しくうねるマーの音の中に入り込んでいった。二人の音は激しい殴り合いのように聞こえたかと思うと、抱き合う戦友のように重なり合い、そしてまた、激しくぶつかるのだった。リズムも、音程も、テンポも、音楽的な取り決めがすべて無視されたかのようにそれは激しいうねりとなって響きあった。
 ハルは、震えた。ハルの耳にはマサルの音が、恐怖に震える女性の絶叫のように聞こえたかと思うと、今度は、その女性を狙う猛獣の唸り声に聞こえていた。マーの音は、落雷の破裂音、火山の噴火に、地響きののように聞こえた。
 それはハルの肌を刺激した。恐怖に似た感情とは裏腹に、ハルはその刺激をじかに感じたくなった。身体がその音の渦の中で、自然に動いていた。ハルは、ブラウスのボタンをはずし、スカートのホックをはずした。そのタイミングで、調教師のムチが鳴った。
 「エロチック」。もし、フレーズそのものにそう表現をしていいものがあるなら、まさに「エロチック」な旋律がマサルのギターから流れてきた。マーのドラムもその音に溶け込んでいった。今までのすべての感情がそこに行き着いたかのようなリフレインが続いた。その旋律が、既に、ブラをはずし、パンティーを下ろし始めたハルの肌から身体の中へ流れ込んでいった。